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うみがめの、くびかざり。

花観(はなみ/ハナ)のお父さんは海が大好きな波乗り人で、
いつも黒い顔をしています。

「子供の頃はほとんど毎日、雨の時も冬の寒い時も海に入っていたんだ。だから 海の気持ちが分かるんだよ」
といつも自慢げに話します。

そして海に行くお父さんのお供はいつもおっきいお兄ちゃん、
ちっちゃいお兄ちゃん とハナ、お母さんで行きます。

お父さんが海に入っているときは、
お兄ちゃんたちと砂浜で遊びます。
その日もそうして遊んでいました。

すると黒い大きなお皿のようなものが砂に埋まっていたので、
おままごとのお皿に使ったり、
ビューンとなげたりして遊んでいると、
お父さんが海から上がってきました。
そして、はなみのお皿を見て言いました。

「あれ?、このお皿、何だか知ってる?」
よくわからないので「知らない」といいました。

するとお父さんが「うみがめさんの甲羅だよ」と言いました。
「うみがめのこうら?」
そしていろいろ教えてくれました。

砂浜にある…捨ててあるプラスチックの白い袋、
お母さんとお買い物にいくとおばさんがくれる…
あの袋の事を教えてくれました。

海亀さんは、くらげを食べるのが大好きで、
そのくらげと海に捨てた白い袋…を間違えて、食べてしまうのだそうです。

そしてお腹が痛くなって死んでしまい、
砂浜に流れてきた…のだそうです。

…あの子亀も…食べちゃった?のかな…。

お父さんが言いました。
「この子亀にもお父さんやお母さん、大きいお兄ちゃん、
小さいお兄ちゃんも居たかも知れないね。
なのに自分たち、ハナもそうだよ、
人間が便利になる為に他の生き物が死んでしまう。
これは同じ地球に居る仲間達をいじめているのと同じなんだ。
大切な事だよ。
気をつけなくちゃいけないね。この事を忘れないために、
いいものを作ってあげる。」

みんなで海から家に戻り、お父さんは仕事場へ行きました。

しばらくして…キラキラ光る首飾りをくれました。

黒い皮のひもの先に、金色のリングと黒いくびかざり。
よくみるとピカピカの黒い中に、黄色の模様がありました。

ハナはお日様にかざしてみました…キラキラして宝石みたい!

「これは、あの子亀の甲羅で作った首飾りだよ。
それを首から下げていれば小亀の気持ちを思い出して、
捨ててはいけない物や、
物を捨てる時は決められた場所にちゃんと集めて捨てていれば、
こんなに悲しい事にはならないよね?。
あと、もう一つの方法は、レジ袋は使わないで、
家にある手提げ袋を持ってお買い物に行けば、
あの白い袋を使わないで済むよね!」

「ハナは、どうしたらいいと思う?」

ハナはそれを付けてみました。すこしヒンヤリとしました。

海の中で育った子亀の思い出を少しだけ感じた…と思いました。
子亀といっしょに居るみたいです。

すっかり気に入ったハナは、その首飾りを付けたまま寝ました…。
まだすこしヒンヤリします。
子亀の気持ちになって寝てみました。

…。

…海の夢を見ました。
ハナの知っている、いつも行く海です。
夢の中で子亀の気持ちがだんだん分かってきました。

好きな場所。

好きな食べもの。

海のなかま。

いじわるなサメ。

サンゴの森や、

まだ一回しか見た事が無い
「にじくじら」や「にじいるか」も見えました。

その中でハナが一番気に入ったのは子亀のお気に入りの場所でした。
そこは深い深い海の中で、
上も下も右も左も落ち着いた深い青色の世界でした。

そこにはあの騒々しいおしゃべりなイソギンチャクも、
けんかの好きなエビ達もいません。

流れもほとんど無く少し冷たくて、すごく落ち着ける場所でした。

ハナの好きな押し入れの隅っこと同じだと思いました。
ひんやりとしたお布団や、
お日様の匂い、
怖くないくらいに少し暗い所も一緒だと思いました。

そんな中、
もう一度見てみたいものは何と言っても「虹クジラ」と「虹イルカ」です。


…子亀はある日、お母さんといっしょにおっきいお兄ちゃんを
海のプールに迎えに行く途中で、虹を見ました。

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地上の虹と海の虹は繋がっていることを地上の生きもの達は知りません。
本当は上と下が繋がっていてまん丸です。

子亀は何度か虹の真ん中をくぐった事がありました。
でもその日の虹は、いつもの虹とは少し違っていました。

よく見ると虹の真ん中には白い大きなクジラがいました。

そして虹と海がくっつく所の水面では、
白いイルカ達が七色の虹の滑り台に登ろうとジャンプしていました。

イルカ達は、盛んににお喋りしています。
「あそこの海はクサイ油で一杯だってさ!」

「こっちの海は美味しいイワシが沢山いて、
泳ぐだけでお腹一杯になるってさ!」

「まさか?」

「ほんと!」

とか言っています。

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虹はみんなの声を聞くための、大きな海のアンテナ!
イルカたちは声を聞くために虹の滑り台に登ろうとしていたんです。

…どうして虹イルカ…っていうか知ってる?
それは、虹のアンテナを使うために虹に向かってジャンプしていると、
どうしてもイルカの背びれに、
虹のカケラが付いてしまうのです。

それは赤だったり、黄色だったりします。

そして気持ち良く晴れた朝、
たまたま海の浅い所を泳いでいるとき、
朝のお日様の光に反射して虹色の線をすーっ…とひきます。

だから「虹イルカ」って言うんですって。

でも虹アンテナはどんなイルカでも使えるわけではありません。

子供イルカの時、
それも小さい時に虹アンテナのトンネルをくぐったイルカだけ、
大人になった時に虹の声が聞けます。

イルカ達は、色々な家族がいつも一緒にに泳いでいます。
そんな仲間の中に、虹をくぐったことのあるイルカが居れば、

兄弟や、友達、そして皆んな一緒に声が聞けるようになるのです。

海にはもちろん虹クジラもいます!

大きな、大きな、
そして白に薄いブルーのシマシマ模様の付いた「虹クジラ」は、
あんまり大きいので、
普通のクジラはまるでイルカのように見えます。
イルカはイワシのようにに見えます。

…さあ、虹クジラの腕の見せどころです。
息を吸う時は周りに注意をします。
どうしてかと言うと、
前に一度だけカモメを空気と一緒に吸い込み、
カモメ模様の虹を作った事があり、
カモメの声しか聞こえない事がありました。

カモメ達は大喜びしましたが、
クジラは自分がカモメになったような気持ちになりちょっと嫌でした。

一息吸い込み、「フーッ」と一気に噴き出します。

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虹クジラは、吹いた潮で虹のアンテナを作る名人なのです。
でもたまに、
ほんとにたまに、
潮を吹く方向を間違えて陸に上がってしまうことがあります。
それが皆が見る、陸の虹…なんだって。

だから虹クジラは世界一の物知り博士なのです。
自分の作るその大きなアンテナで何でもかんでも、
世界中のどんな声も聞こえるから。

だから楽しいことも悲しいことも、
どんな小さな出来事でも知っています。

もちろん小さな亀が、お腹が痛くなって死んでしまい、
亀のお母さんが悲しい毎日を過ごしていることや、
ハナの宝物、
その子亀のピカピカ首飾りをしていることも。

そして生きもの達が仲良くこの地球で生きていける方法を
ハナが知っていることも。

…。

…そして目が覚めました。いつもの朝です…。
でも少し気になることがありました。

それはいつもあのアンテナを使っている「虹クジラ」のことでした。
その日からハナは少し変わりました。

みんなの地球はみんなの物で、
自分勝手にに汚したりゴミを捨てたりしたら、
あのアンテナで海の生きものみんなに知られてしまうと思ったからです。

おしゃべりイルカが世界中に話すに違いありません。

イルカはカモメと友達です。

カモメはトンビと友達です。

トンビは山の狸と友達です。

どんどん伝わっていって
大きいお兄ちゃんの育てている金魚の二郎や、
隣のイジワル犬、チャーリーにまで知られてしまいます。
そしたら楽しい海にも、
涼しい山にも、
みんなで楽しく遊びに行けなくなってしまうし、
イジワル犬チャーリーがもっといじわるになったら嫌だと思ったからです。

ハナは子亀のお母さんに知って欲しいことがありました。
「ハナは首飾りを見て忘れずに頑張るから、
もう悲しい事はおきないから、悲しまないで」
という事を分かって欲しくて、

お兄ちゃんの金魚の二郎と、
イジワル犬チャーリーに話そうと考えました。

そして玄関に行き、
水槽にいる金魚の二郎に話しかけてみました。
二郎は餌が貰えるのかと思って近寄ってきました。
ちっちゃい声で「お喋りイルカに伝えて。ハナは頑張るって!」

イジワル犬チャーリーにはちょっと勇気が必要です。
思い切って隣の家の、モジャモジャ垣根まで行きました。
垣根のすきまから覗くと、もうそこにいます。

びっくり!

チャーリー犬もびっくりしてワンワン吠えだしました!

ハナは負けないように大きな声で
「お喋りイルカに伝えてー!
ハナは頑張るって!!」
チャーリー犬はまだ吠えています…。

少し悲しくなり、帰ろうとして垣根の隙間から振り向いてみたら、

チャーリー犬はもう吠えてなくて、ニコニコしてました!
少し安心しました。
あとはお喋りさんがお喋りさんにお喋り…してくれれば良いんです。

…でもいつもの甘えん坊のハナは変わりません。
お母さんは安心しました。

いつもの毎日が始まりました。


相変わらずチャーリー犬はイジワルでワンワン吠えていて、
お父さんは真っ黒で、
そしていつも通り海に行っています。


おしまい。






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かなり昔に書いたものが出てきたので、
UPしてみました。

最初のくだりは、実話です…笑
うみのくびかざりは、今もあります。


よかったら、
お子さんに読み聞かせ…てみてください。

なにか…伝わるかもしれません。


…伝わったら…いいなぁ。


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