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SIerを一括りにしない重要性について

現職SIer/SESの方の転職支援をすることもありますが、その際、「転職理由は○○です。だからSIerから離れたいです。」という主張をよくうけます。

しかしよくよく考えると、転職理由の○○とSIer離れる間の因果関係が成立していない場合も多いです。所謂坊主憎けりゃ袈裟まで憎い状態で、現職に不満でも、すべてのSIerに不満を抱くのはちょっと論理飛躍がすぎると感じられます。

本記事では、SIerにもいくつかタイプがあることを記載し、SIerといっても色々あることを皆さんに知ってほしいというものです。

※いつも通りの注ですが、あくまで傾向としての記載であり、各企業ジャンルの中にも様々なタイプがあるので、ご注意ください。

SIer(受託企業)

SIer(受託企業)は、顧客から案件を請け、システム開発し顧客にそれを提供します。
※少しずれますが、SES形態の企業も本記事ではここに含めます。

有名なのは、NTTデータ、富士通、日立製作所、日本電気、TIS等です。

SIerでよく言われる特徴/転職理由は、
・レガシー開発ばかり(ウォーターフォール/言語も.netやCOBOL、よくてJava)
・マネジメントのキャリアしかない(スペシャリストの道がない)
・商流が深いので上流工程ができない
といったものです。

上記は一定度合い事実です。
・昔から導入しているシステムの保守(レガシー環境になりがち)
・大規模開発/多重下請け構造の特色があるため、マネジメントが重要になる
・多重下請け構造の2~3次請け以下になれば、上流工程はしにくくなる
といった要素があるためです。

DXにおける新たなSIer像

しかし、DXにおいてSIerも変革を求められています。

国のDXレポート2では、SIerは価値創造型に変革し、以下4つの立ち位置にシフトすべきと述べられています。

①ユーザー企業の変革を共に推進するパートナー

ユーザーから言われたものを作るだけのSIerから、顧客伴走型へシフトする意味です。

SIerは多種多様な顧客/PJに携わっているため、そこで得たナレッジを軸に、新たなビジネスモデルを顧客と共に考え、システムに落とし込んでいきます。

文字通りDXパートナーとして、レガシー刷新や新規ビジネス創出を顧客とともに行います。

②DXに必要な技術・ノウハウの提供主体

日本企業はまだまだ内製化が進んでおらず、各企業内に技術の知見がたまっていません。

そのため、SIerが最先端のデジタル技術等を習得し、特定ドメインに深い経験・ノウハウ・技術を有するスぺシャリストとして、技術・外部リソースの組み合わせの提案を行い、デジタル化の方向性をデザインする立場になる必要があります。

③協調領域を担う 共通プラットフォーム提供主体

DX化が実現するためには、各業界毎にプラットフォームを構築していくことが重要です。

なぜなら、システム刷新には莫大なコストと時間がかかるため、個社が別々にシステム開発するのではなく、業界毎に共通プラットフォームを構築することで、早期かつ安価にシステム刷新につなげることができるためです。

こうしたプラットフォーム提供のためには、高い技術力や業界知見が必要なため、SIerはその実現に重要な役目を担います。

④新ビジネス・サービスの提供主体

上記③に少し似ているものの、業界にとらわれる必要もなく、SIerがベンダー企業という枠を超え、デジタル技術を活用して新しいビジネス・サービスを提供します。

昨今ではWeb系ベンチャー(SaaS系)の台頭が謳われていますが、SIerは売り切りのモデルではなく、そうしたSaaS等のサービス提供主体としての立ち位置が期待されます。

新たなSIerと従来SIer(ステレオタイプSIer)の違い

上記新たなSIer像が実現できていると、一番最初に伝えたSIer像(ステレオタイプのSIer)とは以下の点で大きく異なります。

①企画からの参画

ユーザー企業の変革を共に推進するためには、言われたものをQCDを意識して開発するだけでは不十分です。

顧客ビジネス/業界知見/技術知見をもとに、「なにを作るべきか」から顧客と一緒に伴走することが必要なので、企画から参画することが可能です。

また、そうした伴走型支援を行うため、開発手法もアジャイル型(常に顧客と共に作ったシステムがあっているかどうかをすり合わせながら開発していく)が多くなります。

②スペシャリストの重要性

DXでは内製化も増えていき、SIerに求められる要素としては、DXに必要な難易度の高い技術/ノウハウをスペシャリストとして提供してほしい、というものになります。

そうすると、レガシー技術開発のマネジメントをやる人の重要性は相対的に弱まり、むしろ難しい技術を理解しているスペシャリストが各SIerの中で重要になっていきます。

③自社サービスの推進

SIerもWeb系ベンダーのように、新しいサービス提供者になる必要があります。

そこで、今まで顧客に合わせてスクラッチで開発していたPJ以外にも、自社でSaaSサービスを作りこみ、それを顧客に提供することが必要です。

つまり特定の顧客にのみのシステム開発ではなく、汎用的なシステム開発を行い、それをPDCAを回しながら改善していくエンジニアも必要になります。


新たなSIer例:ROUTE06

かなりベンチャー企業ですが、ROUTE06社は小売業界等を軸に、各種大手企業にデジタルプラットフォーム開発支援を行ったり、各種サービスの初期開発からアジャイルで伴走支援するなど、新たなタイプの受託系です。

CEOの遠藤氏もnoteで旧来SIerからの脱却の重要性をとなえており、その思いをもとに設立された企業です。

こちらにも記載してますが、技術環境も、KotlinやTypeScript、AWS等所謂モダンと言われている環境を採用しており、自社サービスであるPlainも開発しています。

まとめ

ステレオタイプ的SIerと新たなタイプのSIerについて記載しました。

SIerに在籍している方で、当初あげた
・レガシー開発
・上流ができない
・マネジメントしかできない
等の理由で転職を考えている方は、是非一度以下のように考えてください。

「SIer全部が悪いのではなく、そもそも自分のいるSIerはステレオタイプ的SIerなのでは?新たなタイプのSIerにいけば自分の思いは叶えられるのでは?」

なお注意点として、大手SIerの中にも、新たなSIerに移行しようとしている企業/部署もあります。大手SIerでも部署によって/人によって業務内容はかなり異なることもあるので、「新たなタイプのSIer=最近できたSIer」ではないことに注意してください。

部署によって異なるとなると、かなり細かい情報収集が必要なので、企業とのカジュアル面談や転職エージェントに確認(エージェントによってこの辺り詳しいかどうかは大きな差がありますが)してください。

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