「システムインテグレーション」の世界に夜明けを
本日資金調達のプレスリリースを経て、ようやくスタートラインに立てたと身が引き締まる。クライアントや社員、株主など関係者の方々には改めてお礼申し上げると共に、今後ともよろしくお願いしますとお伝えしたい。
ROUTE06(ルートシックス)は、今年に入ってから信頼できる仲間たちと一緒に立ち上げた新しいプロフェッショナルファームだ。「リアルとデジタルが滑らかに繋がる社会をつくる」というミッションを掲げ、自らを次世代のシステムインテグレータである「デジタルトランスフォーマー」(DXer)と標榜し、業種・業界・規模を問わず、顧客のビジネス課題に対して、最善のデジタル・ソリューションの提供にこだわっている。具体的な内容はお伝えできないが、数日前までコーポレートサイトも存在しなかったのに、次から次へと面白い案件の相談が流れ込んで来ている。知的好奇心が大いに刺激され、かつ取り組み意義を強く感じられるものばかりだ。
昨年秋からデライト・ベンチャーズにEIRとして在籍しながら、これまでのキャリアを見つめ直し、最も自分がやりたいこと/最も社会に貢献できることは何か、考え抜いた先に行き着いたのが「システムインテグレーション業界のトランスフォーメーション」だった。実は数年前から「死ぬまでに必ずチャレンジしたい起業テーマ」の一つとして公言していたもので(その他は銀行など)、ようやくその準備が整ったという感覚である。それもあってか、自分でも少し暑苦しいくらいやる気に満ち溢れており、前回起業時以上に、大きく、強く、揺るがない覚悟がある。
大企業と「システム」
なぜそういう想いに至ったのか、少し長くなるが、これまでのキャリアと共に書き記しておきたい。私のキャリアは、リーマンショック直後、日本政策投資銀行(DBJ)のアセットファイナンスグループにて、不動産証券化の仕事からスタートした。その後、審査部で特殊担保評価や債権リストラクチャリングなどの業務を経て、ドリームインキュベータ(DI)に転職し、産業プロデュースや戦略コンサルティング、社内IT新規事業の企画立案などに従事してきた。その後はスタートアップの世界に飛び込んだのだが、キャリアの前半は伝統的な大企業畑を歩んできたと言える。
当時のDBJでは理系大学院卒はまだ少なく、新卒時代とある尊敬する上司から「VBAでデータベースを作れないか?」「部内ポータルサイト作れない?」など相談され、投資融資案件のクロージングやモニタリングの仕事をしつつ、単純なツールカスタマイズ等ではあるものの、社内SE的な業務もしていた。銀行の業務システムは格付・担保評価・金利計算などミッションクリティカルかつ重厚長大で、たった一つの入出力項目を増やすだけでも、半年から1年はかかり、何千万円(場合によっては何億円)のシステム投資が必要になる。また外部サーバーへの接続などは相応の社内調整が必要になりハードルが高いので、当時はどこの会社でも自分のような若手VBA/マクロ作業員が部内ツールを内製していることも珍しくなかった。審査部時代には、直接システムベンダーの方々とやり取りすることもあり、限りなく100%に近い水準のSLAを求められ、異なるベンダーのシステムと複数同時接続し、かつ金融庁検査や監査などで、客観合理的に説明可能な状態に整えることの難しさを、垣間見ることができたのは良い経験だったと思う。
DIに転職してからは、システムベンダーと関わる機会は少ないだろうなと思いきや、すぐにその機会は訪れる。当たり前だが、今時の大手企業の新規事業においてシステム構築・運用は必須で、その良し悪しが事業成否にも大きく影響する。ある新規事業プロジェクトでは、とにかく一歩でも検討状況を前に進めるために、パワポで何十枚も画面モック案を作成したこともある。大量リサーチや分析作業を同時に進めつつ、深夜にクライアントのコーポレートカラーを意識したポップなUIデザインを作っていたのは良い思い出。またビッグデータ分析を担当した際には、SIerさんから出力してもらったデータがそのまま使えず、先輩に助けられながら、ローカル環境で統計解析にチャレンジしてみたものの、結果を実務にフィードバックする仕組みとシステム構築のハードルが高くて、ボツになったこともある。事業主体としての経験ではなかったものの、システムのからむ仕事は本当に大変だなと何度も思い知らされた。
スタートアップと「プロダクト」
DIをやめてからは大企業畑を少し離れ、スタートアップの世界に飛び込んだ。smarby(スマービー)というママ向けのECプラットフォームを運営・開発する会社を創業した。起業の苦労体験を挙げればキリがないが、システムに関しても数え切れないぐらいの失敗を経験した。当時Ruby on Railsのフレームワークであるspreeをベースに、マルチテナント型EC基幹システムとWebサイト/Android/iOSをゼロから自社開発していたのだが、創業から何年かは社長であった自分の能力不足でかなり開発チームの足を引っ張っていたと思う。マーケットプレイス型ECの開発難易度は高いと認識していたものの、当初想像していたよりも10倍くらい大変だった。ユーザーが触れるWebやアプリだけでなく、マーチャンダイジング/マーケティング/物流/カスタマーサポートなどで広範な業務システムが必要になる。毎月何百という取引先から商品の納品がある一方で、商品マスタ・在庫のデータ連携に対応してもらえないことの方が圧倒的に多い。取引先によってはITが苦手で出店管理画面等へのデータ入力もしてもらえず、FAXで商品データが送られてくることもある。あらゆる部分でトラブルやエラーは頻発するなか、地味なオペレーションをどう効率的に設計し、何から自動化していくのか、死ぬ気で考え続ける日々。業務関連DBは数十〜数百個とあるなか、オペレーション変更に伴うシステム改修の影響範囲を把握するために、PdMはDB全体の理解は必須。フラッシュセール型から総合プラットフォーム型にピボットした際の業務とDBの再設計などは、コンサル時代のプロジェクトよりもずっと知的にタフな仕事だった。エンドユーザー感覚としては、データ入力項目の多さなどは、大企業時代に使っていた業務システムとあまり変わらない。失敗は多かったものの、優秀なメンバーのおかげで、内製システムによる様々な業務効率化を実現でき、結果としてスマービーは常時フルリモートでも問題なく業務運営できるなど、ECモールのなかではかなりDXの進んだ組織になれたと思う。
そこからご縁があってストライプインターナショナルのグループ会社になったのだが、親会社や他グループ会社に限らず、取引先などの大手企業のシステムを俯瞰してみたとき、自分ならUXをどう設計するか、サービス/業務のどの過程で何のデータをin/outし、どのように活用するのか、ボトルネックになるポイントは何か、リアルに想像できるようになっていた。「このシステムは下手したら見積費用の1/10以下で実現できるのでは」と思うこともあった。経営・実務を経験した人間がアーキテクチャの設計を行い、スタートアップやWeb系企業で一般的な「プロダクト開発」のアプローチで実装すれば、UXだけでなくコスト効率も大幅に改善できるシステムが世の中に沢山ある。そこに気づいたことが、今回のROUTE06創業の始まりでもある。
「システム納品」を「プロダクト開発」へ
ROUTE06で実現したいことはシンプルに、大規模エンタープライズシステムにおいて、要件定義からスケジュール管理などに最適化された「システム納品」を、UX/ビジネス/テクノロジー目線での継続改善に最適化された「プロダクト開発」へと変容させることである。大手企業の既存事業でも、新規事業でも、今はエンドユーザーのニーズの変化がはやく、要件定義からリリースまで1年以上かかるような開発アプローチは時代にそぐわない。かつ社内外のシステムとのデータ連携の機会も増え続けており、従来型「システム納品」のように、大量の開発項目をまとめてリリースするやり方では、エラーや事故が起きるリスクは高まる一方である。またWeb業界では人気職種であり、待遇・裁量・労働環境がどんどん改善していく「エンジニア」に比べて、SIer/システムベンダー業界の「SE」はよりミスが許されず、進捗管理やドキュメントワークが増える一方であり、徹夜仕事や怒号が飛び交うような開発現場もまだまだ少なくない。ROUTE06では、そのような現状を変えていきたい。スタートアップやWeb系企業の開発アプローチが必ずしも全て優れているわけではないが、DeNAやメルカリのような大手Web系企業が証明しているように、従来型「システム納品」でなくても、ミッションクリティカルな大規模システムを安全かつ高効率に開発・運営可能であり、売上高にしめるIT投資額も格段に低く抑えられる。ROUTE06では、そんなWeb系大手の「内製品質」のプロダクト開発サービスを、デザイナーやエンジニアが社内に一人もいない顧客に対しても提供していきたい。
最大障壁は「レガシーシステム」と「認識ギャップ」
マクロ動向を見据えると、そう遠くない未来に大きなソフトウェア革命が確実に訪れる。OMO(Online Merges with Offline)時代になれば、単純にこれまでEC化率10%程度だった世界が、全ての消費/ビジネス行動がデジタルに記述され、何百、何千倍、何万倍の情報量を処理するためのソフトウェアテクノロジーが必要になる。まさしくa16zの主張するSoftware is eating the worldの本格到来だ。そこでは当然「システム納品」ではなく、アジャイル型の「プロダクト開発」が主流になるが、トレンドに身を任せるだけでは、どうしても超えられない壁がある。それは「レガシーシステム」と「認識ギャップ」だ。
経済産業省のDXレポートを見たことがある方も少なくないと思うが、実際に基幹業務システムの老朽化は深刻な問題になっている。基幹業務システムからcsvデータ出力のために数十分間〜数時間も物理的に待機せざるをえなかったり、絶えず変化する業務フローにERP改修が間に合わず、わざわざ決算作業用に別DBが構築されたり。APIなどもほとんど存在せず、外部データ連携は数分間隔更新のFTPサーバーで、連携タイムラグやフォーマット変更でエラーが頻発したり。開発やカスタマイズも外注に外注を重ねているため、仕様やエラー調査だけでも数ヶ月かかることもよくある話。Web業界では驚かれるようなことがSIer/システムベンダーの業務システム対応では日常的にある。そのようなシステムに最新のSaaSなどをどうにか繋げてみたとしても、連携エラーや事故の発生リスクがより高まってしまう。せっかくの最新技術も生かせず、逆に業務負荷が増えたり、事業間・部門間連携を阻害してしまったり、より問題を複雑化させてしまうことも少なくない。それに対して、ROUTE06では、データプラットフォームの構築・集約を通して、ユーザー企業もベンダーも、敬遠するような泥臭くてリスクの高い基幹リプレイス案件にも全力で着手する。顧客の経営陣への費用効果の説明や、移行プランや業務マニュアル作成なども支援する。とにかくなんでもやる。このままでは確実にレガシーシステムは、子供や孫の代まで残り続ける負の遺産になる。経済産業省のDXレポートが主張するように、レガシーシステムによる年間12兆円の機会損失はリアルな現実だ。
もう一つの大きな課題は「認識ギャップ」だ。スタートアップやWeb系企業のシステムはセキュリティが不安で国産大手の方が安心だという誤解や、デザイナーやエンジニアは細かく工数管理すべき作業員と考える誤解などである。非Web系企業ではどちらも根が深い問題であり、だからこそ外国の大企業とは異なり、日本ではデザイナーやエンジニアを自社で採用して、システムを内製化できている大企業は極めて少ない。従来の「システム納品」主流のベンダーとユーザー企業は、Web系企業の世界とは断絶があり、認識のアップデートがあまり行われてこなかった。私自身もスタートアップやWeb企業の世界に来るまでは、いかにデザイナーやエンジニアが事業に非連続的な成長と安定性をもたらしてくれるのか、本当の意味で気づくことはできなかったと思う。だから、ROUTE06では、私自身が経験したその感動と可能性を顧客企業の担当者の方から経営陣まで、皆さんに体験していただきたいし、それだけの品質と信頼を提供できる最高のチームをつくっていきたいと考えている。
新しい「IT産業」をつくろう
「IT産業」の未来は明るいし、非IT産業もデジタル化の恩恵により、明るい未来に辿り着ける。デジタルはリアルを侵食する敵ではなく、リアル価値の増幅してくれる触媒のようなものだ。ただ、現状の延長線上ではそれは遠い未来になってしまうし、下手すると借金よりもたちの悪い技術的負債(レガシーシステム)を子供や孫の代まで残してしまうことになる。年間12兆円の経済機会損失はその利子のようなものだ。まだまだ夜明け前の状態。その状況を変えるために、今は「システムインテグレーション業界」と「Web業界」は壁を超えて、混ざり・溶け合い、新しい「IT産業」として再構築されるときだ。その先にあるのが本当のデジタルトランスフォーメーションであり、ROUTE06はその調和をつくるプレイヤーとして、全力でこの課題解決にコミットしていきたいと思う。
最後に
組織の規模や立場を問わず、孤独にレガシーシステム問題やDX課題に立ち向かい続けている方。
新規事業の相談相手やサービス/事業/経営目線での継続改善に向き合える開発パートナーを求めている方。
SIer/システムベンダーで顧客になかなか新しい提案ができず、一緒に組めるパートナーを探している方。
そして、私たちの想いに共感し弊社で働くことに興味を持っていただけた方
ぜひ弊社までご連絡ください。
日本経済が沈まないために、いつか誰かが必ず解決しなければいけないこの問題に、志高く、一緒にチャレンジしていきませんか。
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