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再びSPACに脚光? 利下げの影響で活性化するNASDAQ IPO市場


 NASDAQのマーケット・インテリジェンス・デスクのディレクター、アライン・レナー氏を迎えての2024年のIPO市場動向が紹介されています。2024年は、2023年の水準を案件数と調達額で越えてIPO市場は回復傾向に。
 特にSPACやバイオテクノロジー分野が活発に動き始めています。また、アジア企業の米国市場に上場する動きも活発化しており、グローバル規模での新たな投資機会が広がりつつあります。

[主なトピックス]

  • 2024年、IPO153件で約300億ドルを調達。2025年には楽観論広がる。

  • SPAC(特別目的買収会社)のIPOが復活。NASDAQ上場の1/4を占める。

  • バイオテクノロジーIPOが19件。直近3件で700百万ドルを調達。

  • アジア太平洋地域の企業からの上場需要の高まり。申請数は100件超。

  • 政治的不確実性を避けるため、12月以降までIPOを待つ企業の存在





(1)インタビュー


[オリバー・レニック](Schwab Network)
 
NASDAQのマーケット・インテリジェンス・デスクのディレクターであるアライン・レナーさんをお迎えします。

[マデリン・ラドナー](ナスダック)
 お招きいただきありがとうございます。

[オリバー・レニック](Schwab Network)
 これまでお話ししてきたように、今年は全体的に忙しい年になっていますし、キャピタル・マーケットのアクティビティも戻ってきていますが、今回のFRBの50ベーシスポイントの利下げで更に勢いがつくのでしょうか? それとも大統領選挙を控えて、市場関係者はどのように見ているのでしょうか? 今の状況をもう少し詳しく説明していただけますか?

[マデリン・ラドナー](ナスダック)
 IPO市場は、徐々に再オープンが続いていますし、バンカーや投資家は2025年に向けてかなり楽観的な見方をしています。大統領選挙に関しては、例年通り10月に若干の上昇が見られるかもしれませんが、多くの企業は選挙のノイズや政治的な不確実性を避けるために、12月、つまり選挙後まで様子を見る傾向があります。ただ、今年はすでに全米の取引所で153件のIPOが行われ、約300億ドルの資金が調達されています。昨年は158件で約230億ドルの資金調達がありましたので、すでに昨年の同時期の水準をほぼ超えている状況です。

・IPO市場の緩やかな再開が続く
・2024年のNASDAQ上場企業の25%がSPAC上場

[オリバー・レニック](Schwab Network)
 ある意味ではすでに目標をある程度超えていると言えますね。取り戻さなきゃいけない時間があるとか、そういうことではありませんし、かなり忙しい状態が続いているのですね。

[マデリン・ラドナー](ナスダック)
 そうですね、SPAC IPOの需要が確実に戻ってきている点は注目に値します。今年、ナスダックの全体的な上場のうち、約4分の1がSPAC IPOに占められています。それにはいくつかの理由があると思います。まず、2021年のバックログが解消されて、これらの企業の多くが整理されたことが大きいです。また、過去に成功を収めたスポンサーたちが再び戻ってきて、これらの取引に関与しているのもポイントです。成功実績のあるスポンサーたちが、再びSPAC IPOに資金を提供しています。そして、SPACは企業が上場するための加速ルートであり、必ずしも従来型のIPOが唯一の方法ではないという点も事実として挙げられます。

[オリバー・レニック](Schwab Network)
 そうですね、SPACの復活はまさにその「50ベーシスポイント」の効果が現れている兆候かもしれませんね。市場に勢いが戻ってきていることを象徴しているように感じます。

[マデリン・ラドナー](ナスダック)
 パイプラインを再度見てみると、確かにいくつかの注目すべきテーマが浮かび上がってきます。SPACが2025年に向けて重要な要素のひとつとなるのは間違いありませんが、もうひとつはバイオテクノロジー分野の申請やIPOの増加です。今年すでに19件のバイオテクノロジーのIPOがあり、9月16日には一日で3件のIPOが行われ、合計で7億ドルの資金を調達しました。これらの3件は公募価格を大きく上回る取引をしているので、他のバイオテク企業にとっても励みになる可能性があります。さらに、これをきっかけに、待機しているテクノロジー企業の動きが活発化するかもしれません。
 もうひとつ注目すべきトレンドとして、米国外の企業、特にアジア太平洋地域からの米国上場への強い需要があります。実際、100件以上の申請がアジア太平洋地域に拠点を置く企業からのもので、これは非常に興味深いことです。米国の投資家が、これまであまり注目されていなかった地域の流動性やイノベーションに触れる機会を求めていることを示しています。

選挙の年には、ヘルスケアセクターの新規株式公開(IPO)活動に変動が見られる。

[オリバー・レニック](Schwab Network)
 確かに、米国市場に目が向きがちですが、中国やその他の国々にも大きな動きがありますね。アジア太平洋地域からの企業にも注目することで、全体の見方が広がると思います。国際市場からのバックログが徐々に積み上がっていたことは、あまり知られていなかったかもしれませんが、今それが表面化してきています。この地域の企業が米国市場に上場することによって、新しい勢いが生まれ、さらに多様な企業が参入してくるでしょう。これは、米国だけではなく、国際的な視点からも非常に興味深い展開ですね。

[マデリン・ラドナー](ナスダック)
 そうですね、中国だけでなく、シンガポールや日本も米国でのIPOにとって魅力的な国として浮上しています。ナスダックの副会長もCNBCでこれについて触れて、米国の投資家がこれらの地域のさまざまなセクターに関心を持っていると話していました。これから数年間、非常に興味深い展開が期待できそうですね。アジア太平洋地域からの企業が米国市場に参入することで、新しい投資機会がさらに広がるでしょうし、米国市場にも多様性が加わってくると思います。

[オリバー・レニック](Schwab Network)
 良い話ですね。さて、先ほどお送りしたチャートをもう一度見ていますが、大統領選挙に関するデータを具体的におさらいします。お話しされている通り、こちらの数字は感覚的なものではなく、しっかりと計算されたものです。選挙の前後では市場の動きが鈍化し、その後12月頃に通常の状態に戻るという傾向が選挙年に見られることが、データからも確認されています。

[マデリン・ラドナー](ナスダック)
 そうですね、PWCやDealogicの歴史的なデータによると、選挙年と非選挙年で年間のIPO件数は基本的に安定していますが、IPOのタイミングやセクターごとの違いが見られます。特に、選挙後の12月に若干の上昇が見られる可能性があります。例えば、ヘルスケア分野では、政治的な不確実性や薬価制度への影響を見極めるために、選挙後まで申請を待つ企業もあるかもしれません。そういったセクターは、政治の動きが落ち着くまで様子を見ている可能性が高いですね。

[オリバー・レニック](Schwab Network)
 おっしゃる通り、今すぐ市場に参入しようとしているのは、最も勢いのある分野ですね。バイオテクノロジーやテクノロジーの分野では特に活発な動きがあり、また中国政府の経済政策も、国際市場にとっては何らかの形で影響を与える可能性があります。さまざまな要因が絡み合って、非常にダイナミックな展開が期待できそうです。
 詳細に触れる機会をいただき、ありがとうございました。
 
 


(2)オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご視聴になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Schwab Networkより
(Original Published date : 2024/09/25 EST)

[出演]
  NASDAQ
    マデリン・ラドナー(Madeline Radner)

  Schwab Network
    オリバー・レニック(Oliver Renick)



以上です。



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だうじょん


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