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ケトル初の本特集!『ケトル VOL.55』「はじめての本」

聞くところによると雑誌の本特集はテッパンで売れ行きがよいのだとか。たしかにじっくり読みたくなりますよね。

「BRUTUS」や「POPEYE」は趣向を凝らしながら季節毎に出しているような印象ですが、このたびケトル、はじめての本特集です。

その名も「はじめての本」

「はじめて」を切り口にジャンル・作家・装丁・読み方・インタビューなど幅広いテーマが展開されます。

そしてなにより「読める」。最後の方の短めの連載まですべてに無駄がない。広告がほぼないっていうのもあるのでしょうが、細部へのこだわりと愛を感じました。

好みの企画をいくつかご紹介します。

まずはカチッと橋爪先生

巻頭対談の後に持ってくる一発目、橋爪大三郎の「目まぐるしく移り変わる社会を解き明かすための知識と本」です。初学者にわかりやすく指南してくれる橋爪先生。

皆にわかるように書いていない本なんて、大した本じゃありませんよ。

『はじめての構造主義』を出されているように、はじめての人へ向けた執筆活動も熱心な印象。その根っこにあるのは師匠の小室直樹の存在が影響しているように思えます。

ちなみに政治を知るための一冊で紹介している小室直樹『痛快!憲法学』は個人としてもゼッタイのオススメ本です。

はじめての作家

名前はなんとなく存じ上げているけれど、どんな作家なのかわからないし、もちろんどんな本を出しているかも知り得ない。そんな読者のためにうれしい企画があります。

今回は、二つ。

はじめての吉田健一

はじめての橋本治

吉田健一のキーワードとなる「余生」から変化の激しい時代を生きるヒントを得るだとか、専門家でないからこそ自分の目と思考をトレースして読者に伝える橋本治の考え方を学ぶべきだとか。

それぞれ「なぜいまこの作家なのか」の視点が入っているし、その上でまずはこの一冊という入り口も用意してくれるのがいい。この企画はずっと読めてしまいそう。

とくに読もうと思ったのは、吉田健一『わが人生処方』

はじめての小説

新しい世界を知ったのは『明け方の若者たち』のカツセマサヒコ×校閲者・池田明子氏の対話。カツセさんが初の小説を書き上げるにあたって、どのように校閲をしていたのかが語れます。

「ひげ」は生える箇所で漢字が変わるだとか、「おつかれさま」「お疲れさま」の使い分けを校閲きっかけで編集者とルール決めをした話だとか興味深い。

さらに校閲の朱入れをビジュアルで惜しみなく、見開きで公開してくれているのも、うれしいポイント。

そうだ、カツセさんってもともと印刷業界の企業務めされていたんですね。作中の「僕」にどれだけご自身を重ねているのかしら。

企画の可能性

「BRUTUS」にもあったけれど「買ったけれどまだ読めてない本」なんて紹介も意外に読めます。各業界のプロによるその世界の一冊紹介、デザイナーがうっとりする装丁からみる本などなど切り口はさまざま。

自分が担当だったらどんな本特集をしてみたいか?って考えながら読むのもおもしろいかもしれません。

というわけで以上です!


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