『新しい経営学』(三谷宏治)を読んで
経営学。
うーん、何でしょう。ざっくりこんな印象があります。
・マイケル・ポーターのような大家がいること。
・SWOT分析のような見える化、分析ツールがある(ふだん使わないけど)。
・戦略って言葉がよく出がち
・あとはMBAでしょうか。
仕事において大局観もしくは引きの目線とでもいいますか、そのあたりを一度考えようとすると、やっぱり経営の分野になってくる。ふだん使う筋肉ではないので、網羅的にとらえてくれる本があるとうれしいなあ。
そんな状態そんな読機(読む動機)で出合った本が『新しい経営学』です。
まず内容の前にお伝えしたいことがあるんです。この本の装丁や中身のデザインもろもろ、とっても素敵だ!本の栞ひとつとってもいい。
内容ももちろん初学者にはピッタリ。わかりやすさに迎合しているとか、ボールにバットを合わせにいってるとかそんな類いではなくて、“読者想い”が伝わってくる本です。ではここからすこしご紹介いたします。
ビジネスモデルとは「現実(ビジネス)」の「単純化」である
著者の三谷さんはまず経営学がなぜむずかしいかを解説してくれます。ビジネスモデルは4つの要素に分けることができる。
・ターゲット
・バリュー
・ケイパビリティ(価値の届け方等)
・収益モデル
ビジネスモデルって、そもそも儲ける仕組みそのものと考えていました。事業を機能横断的な視点でとらえて運営していくためにビジネスモデルがあるのだと。
で、それらを定めたり、設計したり、実現したり各種実行していくために経営学がある。こう考えるととってもわかりやすい。ちなみに経営学は6分野あり、
①経営戦略
②マーケティング
③アカウンティング
④ファイナンス
⑤人・組織
⑥オペレーション
と、いったかんじ。
そこでビジネスモデルの4要素とどう関係するかというと、手段と目的のそれそのもの。たとえば
経営戦略論とマーケティング論は、ターゲットとバリューを定めるためにある
ふむふむというかんじです。
あくまで経営学の6分野は手段というスタンスです。目的にあたるビジネスモデル4要素をベースに章立てされいますので、スッと入ってくる。構成もわかりやすい。
また古今東西、さまざまな事例を交えながら解説してくれるので、読み物としてもおもしろいんですね。
なかでもハッとしたしたところを、ちょこっとだけクリップします。
ドリルを買う人が欲しいものって、本当に穴そのもの?
マーケティングではよくこんなお話があります。客はドリルではなく、穴があいた状態を欲しているんですよと。ドリルではなくてもレーザーポインターでも何でもよかった。部分最適に陥り、手段が目的化することに対して問いかけのような使い方をされています。
ただ三谷さんはもうすこし踏み込みます。「ものごとはそんな単純じゃない」。
アメリカではDIYの領域が盛んになっています。それはお父さんが「子どもといっしょにやれて自慢できる仕事」を欲しているからとも読みとれます。
で、そういったお父さんたちはドリルでなくて穴を求めるでしょうか?ここでハッとさせられました。父親たちのニーズは上手に穴をあけられるカッコいいドリルであり、個別ニーズの上位にあたるウォンツは子どもからの賞賛です。穴ではない。
バリューとはニーズの裏返しなんですね。何がバリュー=提供価値なのかを考えることは人を知ることでもありますね。
ロジカルってなんだ?
デザインシンキングなど発想・思考法の流れで論理思考についてふれています。論理的であること、ロジカルって大事。
そんなタイトルの本はたくさんあるし、ふりかえれば『ロジカル面接術』は学生時代読んでおいてよかったと思います。(調べて驚いたのが、年ごとにアップデートして出版してる)
伝えると伝わるはちがう。伝えたいことをフォーマットにおとしこんで言葉の順番を整理すること。こう考えるとたしかに役立っています。
とはいえ論理的であるということは突き詰めると、なかなかハード。ロジックツリーなどありますがピラミッド状につみあげて演繹法・帰納法・MECEであるかどうかなど気にして日常生活を送るのも窮屈です。
三谷さんは、ロジカルの基本を「一番「重み」のあるところに集中し、そこで「差」を生むことから考える」としています。これを重要思考(Focus Thinking)と名付けられています。
本書ではコスト効率の事例が紹介されていますが、社会人になって間もない頃を思い返すと、たしかにダイジでないところにフォーカスしていたこともあったなあと感じます。
たとえばこの領域は業務委託ではなくて社員がやるべきだ!そんな若手の些細なことですが。というか、ベテランこそ気をつけねばなりませんね。まちがった戦術とまでなると、後に修正もきかなくなるおそれもあります。
何が大事で、何がいま求められいて、何をすべきで、何をしないべきなのか。
知識と経験によるところも多いのでしょうが、いわゆる勘所のよし・あしというのは、「重み」を察知する方法なのかもしれません。その手法・方法はロジカルに大いに通ずる面があるんですね。
といったかんじでありまして、非常に参考になりますし、行動に変えさせてくれる本です。というわけでオススメです!
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