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『わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる』(Dain)を読んで

大黒摩季は「ワタシが好きな彼の好みの女性に変身していくプロセス」を歌いましたが、立川志らくは若手時代、師匠である立川談志に対してまさに「あなただけを見つめて」談志に近づくために、談志の「好き」を片っぱしから吸収していったといいます。

これは本についてもいえるわけで、どんな本を読むべきかがわからない場合は「人」から入ってみる。

影響を受けた、お気に入りの作家が好んでいる本があればそれはあなたにも合うかもしれない。

本は人から探そう!と始まります。

本書の一言で内容を表すならば本とどのように出会い、どうやって読むかがテーマ。10年以上書評ブログを主宰する著者Dain氏の読書観が語られます。

そこには著者がかつて本に救われた(つまり運命を変えるような「スゴ本」に出会った)原体験が根底にあり、いってみれば読書礼賛。

ブログ発だからこその「好き」を起点とし、それをギュッと一冊につめこむその姿勢には版元ふくめて好感を持ちました。

図書館は有効に使えるけれど学校の宿題などの作業やぼーっとしている人が多数で、じつは本を読む環境としては静か過ぎるよねであるとか、

マーキング読書法は再読のときに自分の思考がじゃまをするだとか、

モヤっとしていた部分を言語化してくれた感覚もあって「うん、そうそう」といいながら読んでました。

書評ブログを長く続けられていると読んだ数重視の「見書」派の方たちとの対峙があったのか「『読んでいない本について堂々と語る方法』そのものに隠された罠」のパートは、熱がほとばしっています。

そういえばamu主催で『WIRED』元編集長の若林恵さんとドミニク・チェンさんが未読の本を語り合うイベント「未ブリオバトル」は好奇心を刺激する企画だったなあ(BRUTUSの読書特集でも「なぜ読んでこなかった」を語る切り口がちょっと前にありました)。

さあお待ちかね、後半は著者の価値観をゆさぶってきた「スゴ本」紹介パート。20年前の自分に読ませたい珠玉の十二冊はさっそく数冊を購入しました。

特別付録「禁断の劇薬小説」小冊子までふくめて、シッポまで餡の詰まった一冊。

最後に、著者自身が引用した『それでも、読書をやめない理由』の文章に著者の「スゴ本」観について現れていた気がしましたので、そのまま引用します。

少なくとも、わたしが本を読むのは、話の底にひそむものを見つけ出すためであり、挑発され、混乱させられるためであり、それまでの価値観をゆさぶってもらうためだ。

単に知識の摂取ではなくて吸収したモノが脳内で化学反応を起こすようなもの。それはゆっくりじわじと効いてくる「遅効」。

というわけで以上です!


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