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『戦略読書』(三谷宏治)から学ぶ「おもしろさの基準」

『戦略読書』を読みました。

本の読み方、三谷さんを形づくった本を知ることができ、たいへん知的好奇心をくすぐられました。

なかでも、“面白い情報”の要素を述べられているところ、ここは自分でも考えもてみようということでクリップ。

「私にとっての面白い情報とは、「反常識」「不合理や矛盾」、そして「数字」です。私はいつも、それらを無意識のうちに探しているのです。」(『戦略読書』(三谷 宏治 著)より)

いやたしかに、本を読む前にそして本を読みながら、無意識のうちに自分の欲しい情報を探しています。

本を読むスタンスをしいていうならば、読みさすさの指標として、既知の整理と未知の発見のバランスを考えていました。

三谷さんの『戦略読書』を読むなかで、自分にとっての“本を読む面白さ”について、もう少し踏み込んでみてもいいだろうと思った次第です。

すこし考えてみますと、「あわせ」と「反常識」そして「普遍性」このあたりが挙がります。

・あわせ

異なる分野や一見関係のないことでも、実は本質は同じではないかと“合わさる”こと、“重なる”ことが面白いと思います。

たとえばポール・ヴァレリーが詩人の凄さについて述べていることと、芸人のコロッケさんの自身のモノマネのスタンスは、芸術というくくりのなかでは本質的には同じことを言ってるぞ!ということに気づくであるとか。

やっぱり小林秀雄はベルクソンのここに影響を受けてるぞ!であるとか、些細なことが多いですが面白いです。

・反常識

通説や本来定説となっている姿とは異なる発見・考えやその矛盾への指摘・視点に対して、たしかに面白いと感じます。知的好奇心をくすぐる知識などがパッと思い付きます。

たとえば『サピエンス全史』の「人は小麦の奴隷である」だとか、『繁栄』の「人類の発展は分業がもたらしたもの」とか。チームラボ猪子さんが語った「旨みが人を人にたらしめた」話もワクワクします。

・普遍性

古典を読んでいるときに思うことがあります。いつになっても本質は変わらないんだ!という発見をすると面白く感じます。

たとえば先に挙げた『繁栄』において分業すること、つまり役割分担が人類の発展の肝であると。それは資本主義への言及でもあると思います。

大正時代、夏目漱石は講演「職業と道楽」のなかで、こんなことを述べています。

「専門的になるというのはほかの意味でもなんでもない、すなわち自分の力に余りあるところ、すなわち人よりも自分が一段と抽んでている点に向って人よりも仕事を一倍して、その一倍の報酬に自分に不足したところを人から自分に仕向けてもらって相互の平均を保ちつゝ生活を持続するということに帰着するわけであります。」(『夏目漱石、現代を語る 漱石社会評論集 (角川新書)』(夏目 漱石, 小森 陽一 著)より)

当時における現代の職業がどんどん専門的になっていくということ、そして人のための度合いが強くなれば、自己への見返りが大きくなる仕組みになっていることを夏目漱石は見抜いています。

夏目漱石が大正時代の日本をどうとらえていたのか、この視点を垣間見るだけでも興味深いわけです。そのなかで資本主義の構造の普遍性も見えてきます。

最後に、三谷さんは読んだ本が自分をつくると言います。読む本が偏れば、それに自分もおのずと寄っていく。

たった1年強の読書の偏りが、私を「つまらない人間」に変えてしまいました。 人間はこれほどまでに、接する情報に左右されるのだと思い知りました。

だからこそ、読書のポートフォリオが必要であると三谷は言います。戦略的に読書をすることで、人とはちがう自分ができる。

何をおもしろがるかという軸と、何を読むかというポートフォリオ的目線を持ち、読書を楽しめればと感じる次第です。

というわけで以上です!

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