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『論語と算盤と私』(朝倉祐介)を読んで

朝倉 祐介著『論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について』を読みました。

「論語と算盤」に「私」をつないでタイトルにする、ここにセンスを感じます。コンサル→スタートアップ経営→ミクシィ代表→研究者と、多面的に企業をみてきた著者が語る、経営論となっています。

第2章の「集団・企業が陥る自己矛盾」がとくに心にひびきました。ゴーイング・コンサーン。

永続性を前提とした株式会社。企業は、ただ続いてさえいればいいいのか?ミッションやビジョンについて書かれた本はありますが、専門書でないものの、本書はめちゃくちゃわかりやすいです。そのあたりを。

ミッションの塩梅

「社会の発展に貢献する」。企業のコーポレートサイトを調べると、このような抽象的で曖昧な言葉をよく見かけます。本来は「その企業らしさ」がミッションからにじみ出るのが理想ではないか、こう思っていました。

著者は会社の価値観を言語化する意味について考え続けた上で、このように述べています。

ミッションに強烈な活力があるからこそ、事業に対する執着が強まり、かえって組織の発展にとって足かせとなってしまう

ミッションの表現とは、解釈の幅を持ちつつも、ある程度の具体性や方向感は指し示すバランス感のある文言がよい

それではどの企業の文言がよいのか。で、絶妙だと褒めているのがソフトバンクグループの「情報革命」。

たしかに事業領域を示すような具体性もあり、解釈によっては時代を牽引する組織論にも流用できそうです。事業と組織を両方カバーせねば。

さらに興味深かったのはミッションには二面性があるというお話。それは、存在理由と永続性です。

永続性は株式会社の仕組みとして前提であり、上場するとそのプレッシャーは強まります。

極端な例として政治家に置き換えて考えます。

「自分の理想を実現する」という「存在理由」が、いつのまにか「選挙に当選する」という「永続性」に呑み込まれる。

競うように挨拶まわりをするのも大事だけど、ホントにすれでいいの?うん、なんだかわかる気がします。

もっとも大事なのは言葉をつくるよりも、それを浸透させてアクションを実行すること。…ごもっともです。

参考になることが他にもたくさんありました。それでは最後に、大企業でなかなかイノベーションが生まれない理由について、ふんわりしていた思考を、朝倉さんに言語化していただいたようなかんじがしまして、そちらをクリップ。

すでに事業の基盤があるということは、組織にとっては活かすべき資源を保有しているという点で強みであるとともに、何かしらの守るべきもの、斟酌すべき事情があるということを意味します。

というわけで以上です!

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