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『読書をプロデュース』(角田陽一郎)を読んで

東大出身でTBSに入社、バラエティ班に配属。さんまさんや中居さんの番組が代表的かと思いますが、個人としては『オトナの!』がとくに好みでした。

『オトナの!』は知的好奇心を刺激するトーク番組としておもしろかったのと、ユニークなのは番組の成り立ち。ゼロからビジネスを生んで制作費を確保する独立採算番組。放送開始は2011年、はやいです。

最近では『オトナの!』をきっかけに、いとうせいこうが師と仰ぐ松岡正剛のYoutube番組も始めています。著者は、大衆に「知」のおもしろさを伝えようとしている方。そんな印象を持っています。

さて本書の基本スタンスは「読書礼賛」。いま本をまったく読まない人の「入口」を意識したつくりです。

若年層の方に本を読まない理由をヒアリングし、それらが本に対するネガティブな「感情」に紐づいていることを明かします。で、「もっと気楽でいこうよ」と著者はいいます。

著者が提唱する「バラエティ読み」のポイントは、

①ジャケ買いでいい
②途中でやめていい
③積読でいい
④感想文も書かなくていい
⑤速読しなくていい

とくに積読の肯定は共感します。

積読でいい!

小林秀雄は『学生との対話』において「古典とはその場その場の取引です」といいました。ふと肩が軽くなったのを思い出します。

本(古典)との出会い・向き合いは、そのときの「縁」

小林秀雄といえば、以前、ジャケ買いして積読状態にあった『小林秀雄とウィトゲンシュタイン』という本。最近パラパラとページをめくりましたら、購入当時よりも何が書いてあるかがわかってびっくり(まだ読了はしていません)。

あとは「いまそれにアンテナを張っているか」という「旬」もあると思います。在宅時間=余暇が増えたこともあって『暇と退屈の倫理学』は刺さりました。ここまで読まずにあっためておいてよかった!と思うほど。

世の中がこういう状況になったからこそカミュの『ペスト』がまた読まれるようになるし、個人としては『ドゥームズデイ・ブック』は旬だったからこそ、グッと入り込めました。

では何を読むべきか

受け手が「旬」を嗅ぎつけるべく、古今東西の本のなかから選んで買うのも楽しみの一つです。

とはいえ膨大な数のなかから選ぶのも大変。その意味で「いま」売っている本というのはまさに「旬」を体現しているともいえますね。当然ですが。

著者は、一つの選択肢として新書をオススメしています。本書の巻末には、新書で有名ないくつかの出版社の編集長との対談が収録されています。手始めの一冊もそれぞれ紹介されていて親切。

細野晴臣さんは映画『NO SMOKING』のなかで「その時代しかできない音楽を苦労して、楽しんでつくってきた」といっていました。もちろん本のなかにも「いま」しか出せない本があって、それを「いま」読めるのは「いま」しかない。

三谷宏治さんの『戦略読書』のように頭の中になんとなくポートフォリオをつくりつつ、古典も新作もアンテナに響いたものをまず読んでいけたらいいなあと。

というわけで以上です!


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