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『オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件』(中山淳雄)を読んで

中山 淳雄 著『オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件』を読みました。

エンターテイメントを語る、コンテンツ文化を語る。この手の本でもっともおもしろく、そして説得力があると感じました。とにかく素晴らしい。

噛みしめたいのですが、ちょっと時間がないので、響いた箇所をひとまずクリップいたします。

なぜ日本のオタク文化商品がグローバルで急激に受け入れられているのか。

そこには1960年代からの日本アニメ浸透の挑戦時代があり、80年代からの日本ゲームの世界的寡占状態があり、90年代に始まるアニメイベントの北米コミュニティの萌芽があり、2000年代のマンガ・アニメの海賊版浸透があり、ようやく芽吹いたように2010年代の動画配信を基軸に「市場化が始まった」結果である。

この全体の流れが章立てでていねいに説明されます。

面白いと思ったマンガも、次に面白いと思ったマンガに塗り替えられてしまう。そうなる前に、そのマンガをより理解できるアニメに誘導し、アーカイブで古い作品にもアクセスできる動画サブスクリプションに登録してもらい、

クリエイターの思いをつづった雑誌やファンが議論するSNSに参画し、定期的に行われるイベントで「自分が好きなこの作品は、ほかの皆にも愛されている」という確信をしてもらう。

体験をトータルでデザインするために、海外は買収によるパワーで成立させ、日本は他企業による委員会方式で関係資産を温めてきた。

結果、日本にはメディアミックスという手法が育った。それはアメリカと比べると、独自の文化形成だという。

日本型はそれに対して、いわば「文化コンソーシアム」を形成している。欧米メディア企業では、追求すべき利益が同一ではない企業同士が同じ方向を向いて連携し合うという事象は少ない。

だが日本はアニメ委員会を含め、資本関係にない企業群がともに歩調をあわせて連携をしていくといったことが習慣化している。グループとしてすべてを持っていなかったとしても、外部とのネットワーク力が強い企業・歴史が長く様々な互恵関係にある企業が、長期的に温存される事業環境になっている。

特定案件においてはコミュニティマネージャーと呼ばれるような仕掛けが必要。より具体的には、たとえばこんなかんじ。

同時代性を演出するための準備は入念さを事欠いてはいけない。イベントの数か月前からアプリゲームには同時間に始まるイベントを配備する。

サブメディアの役割を果たすSNSチャネルのフォロワーを一定規模まで増やしておくために、広告出稿しながらイベントの事前告知CMから関連アニメを無料配信して人々の気持ちを高めておかなければならない。
チケット販売枚数から想定されるグッズの売上計画を立て、多少の在庫リスクは見込みながら限定品企画をいくつも走らせておく必要がある。イベントに向けてレスラーやタレントのツイッターでは事前情報出しを歩調をあわせて進めていく必要がある。

こうして徹底された情報管理のもとに、「1万人の会場の興奮を10万人の同時視聴者・フォローユーザーにも熱量を伝え、それを事後的に聞き感じる100万人にその場にいるべきだったと悔しがらせる」。
一つのコンテンツの影響範囲を最大化させる仕掛けを、イベント・イベントごとに演出していく。マーケターの役割は、コミュニティマネジャーの機能へと変貌しつつあるのだ。

めちゃくちゃ勉強になります、というわけで以上です!

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