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HAI技術は世界を変えるか!『ドラえもんを本気でつくる』(大澤正彦)

完ぺきな性能を持つロボットは人になじみにくく、「ロボットいじめ」は一つの研究テーマにさえなっているらしい。人の役に立つためにも、親しみを持ってもらいたい。

だから、あえて「弱く」する。フラジャイルな設計。

それはたとえばゴミを検知するとモゾモゾするゴミ箱ロボット。自分ではゴミを取れないから人の補完によって成立する。

かわいくて、役に立つ。その究極こそがドラえもんであり、著者が子供の頃から抱いていた夢。本書はドラえもんに憧れた若き研究者による人とロボットの未来論。

夢語りだけではなく、最新の技術の紹介やその可能性にふれていて、これからの未来に期待が膨らむような心躍る一冊です。

のび太あってのドラえもん

ディープラーニング技術は、人と関わらないほど性能が上がる。著者の研究はこの逆で、人との関わりを深めるAIの技術がテーマ。

これは、HAI(ヒューマン・エージェント・インタラクション)と呼ばれる領域で、日本が最先端をいっているのだとか。

人とロボットを一体のシステムとして考える。それはつまり単体ではなく「のび太あってのドラえもん」となります。

そもそも人とロボットの共存を描くドラえもんそのものが日本っぽい。人との関わり合いを前提するので、心理学も認知科学といった学問も関わってきます。

HAIのコア技術は、他者モデルの想定。もう一つのキーコンセプトは、意図スタンス

それらが持つ意味をざっくり表すならば、人がロボットに対して、道具ではなく、仲間としてふるまえるかどうか。

他者モデルが想定できると、
・感情がわかる
・失敗を許せる
・はじめて見る相手でも行動を予測できる

重要なのは、これらはロボットの性能の限界による妥協ではないんです。

役に立つために、ぼくたちが受け入れられるようなロボットを目指す。その手段として、親しみを持って仲間として扱えるエッセンスをロボットに織り込みます。

そのエッセンスは、前述したあえてモゾモゾするゴミ箱ロボットのようなフラジャイル・脆さであるとか、「ドラ!」しか発しないミニドラのようなあえて非言語としたコミュニケーションの設計。

「弱さ」を人が補完して一体性が醸成できる在り方がおもしろい。

思えばポケモンのピカチュウは声優・大谷育江さんの演技の巧さから、あえて人の言葉を発せずに感情表現が十分できていますし、鬼滅の刃の禰豆子のうなり声でぼくたちは感情を理解しようとします。

現在、AIスピーカーといえばやっぱりGoogleかAmazonといったGAFA的な企業のものが優れいている印象があります。

ドラえもん、ミニドラ的なエージェントの登場にぜひ期待したい。

というわけで以上です!


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