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『kotoba』新しい古典を探せ!特集で読みたくなった本5選!

二十一世紀に出された本で、これから50年、100年のちまで、読み継がれるものがあるのだろうか?

永井朗氏が指摘するように、出版不況が叫ばれているけど新刊本の出版数はビジネス構造の要因もあってむしろ増えている。

価値観の多様化し、情報過多となったいま、過去20年間に出版された本たちは、古典となりうるのか?

kotoba編集部の問いとテーマはありそうでなかったような印象です。

識者たちにまっすぐにマイクを向け「あなたにとって古典の定義は何か?」を含めて投げかけ、新しい古典となりうる本たちを引き出しています。

たとえば佐藤優氏でいえば現代の消費速度なら10年読み継がれればその可能性があるとして、条件となるキーワードに「思想の先見性」を挙げています。つまり、時代を先取りしているか。

未来への眼差しは鹿島茂氏も言及していて、社会科学の場合はさらに「科学的な合理性に基づいて」未来を予測しているかが必要になってくる。

実際、氏はジャレド・ダイアモンドの『文明崩壊』を挙げています。経済ならトマ・ピケティといったところでしょうか。

錚々たるメンバーが紹介した「新しい古典」の数々は表紙の写真にまとまっています。選者と本は本書を読んでいただくとして、全体を一読して読みたくなった本5冊を備忘録としてかんたんに残します。

1 服従(ミシェル・ウエルベック)

2022年、フランスはイスラム政権になる!?資本主義の危機に対して国が取る選択肢「ファシズムか、共産主義か」。この問いは歴史をふりかえっても不変なのかも。舞台設定がほど近い未来なのもいい。

2 満足の文化(J.K. ガルブレイス)

1992年初版で厳密にいうと二十世紀なのだけど、晩年のガルブレイスがいまのアメリカの保守化と不寛容についてだいぶ前に警鐘を鳴らしていた。いまと照らし合わせながら読んでみたい。

3 虐殺器官(伊藤計劃)

小島秀夫が『創作する遺伝子』においても伊藤計劃を熱く語っていたことを思い出しました。肉体的精神的な痛みが除去された人間とその先の境目を描くポストヒューマンSF。デビュー作、なおさら読まねば。

4 葉桜の季節に君を想うということ(歌野晶午)

とにかくラストが凄まじいというミステリー小説。初めて存じ上げたのですが、著者はデビュー前、島田荘司のエッセイから居場所を突き止め、いきなり押しかけて小説の書き方の教えを請うたといいます。これだけで俄然、興味がわきました。

5 黒い匣 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命――元財相バルファキスが語る「ギリシャの春」鎮圧の深層(ヤニス・バルファキス )

バルファキスといえば『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』。市場原理を明らかにし、未来への投げかけを読者にしつつ、未来提言としてテクノロジーの民主化を強く説く。で、本書はEUの権力と緊縮政策に抗うその様を冒険小説のように描いたといいます。

今回、初めてkotobaを手にとってみて、こんな骨太だとは。中面の広告は無に等しいし、特集以外の連載やインタビューなど読み応えがあっておもしろい!

というわけで以上です!


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