「ありのまま」の読書遍歴を語る『れもん、よむもん!』(はるな檸檬)
コミックエッセイを意識して読んだのは初めてかもしれません。エッセイとして語る言葉は短く、わかりやすく。
そこにコマ割りの絵とセットで対応させながら表現するって、読者からみればスゴ技にしか思えません。
本書は、漫画家はるな檸檬の「ありのまま」の読書遍歴が語られます。
幼少期から高校生活までを自身の内面を明かしながら振り返る。読み手は自身の過去を思い出しながら、照らし合わせながら味わえる一冊です。
読書一家
著者の家族は読書一家。物心がつく頃から大きい本棚があり、息を吸うように家族みんな本を読んで過ごしてる。やがて著者も本を手に取り、その世界にのめりこんでいきます。
そういえば「もしも親が子どもに習得してほしいモノ・コトがあるのなら、己がそれを心から楽しんで背中で見せよ!」的なお話をかつて島田紳助さんがしていたなあ。
等身大
本書は雑誌「yom yom」の連載の書籍化。時系列に沿って話が進んでいきます。背伸びせずに等身大で語るその内容はスッと入っていきます。
自分に置き換えたとして小学校のときに何に夢中になったか対象は思い出せても、それがどんな内容だった言語化するのってむずかしくないですか?
著者は内容自体にあまり言及せず、どう感じたかにフォーカスします。たとえば小学生時代に読んだ高楼方子『ココの詩』。
本書から受けた衝撃を「なんともいえない読後感」として自分の言葉と絵でまっすぐに表しています。本当に「心にポッカリ穴があいた」描写は思わず笑いました。
読書友との出会い
高校生時代になるともうひとりの「はるちゃん」との出会いがあります。おしとやかで親切。不要な馴れ合いからは距離を置くような、自立していてカッコいい存在。
同じような価値観を持つ友人と本の感想を言いたい放題する楽しい日々。かけがえのない毎日の短い昼休み。
著者の家ではテレビの制約もあって話題についていけないこともあった。わたしたちは田舎で進学校の女子高校生。
何かに焦りながら大人に早くなりたい。そして「本当のことを知りたい」と、山田詠美や村上龍といった作家の作品に読み耽る。
自分自身はどちらかというと図書館にもあまり通わずに外で遊んでいたタイプだったけれど、グランドで遊ぶ子たちの声を窓越し聞きながら、ひとりの時間を大切に、本と過ごす人生に思いを馳せました。
解説まで、おいしい
全体に通底する読書愛と作家愛。等身大の言葉と絵で語られた本書はすぐれた読書案内でもあります。山田詠美をこなよく愛する著者は、ご本人が読んで喜んでくれた一報を受けるのも、なかなか信じられない。
こんな作家冥利なことないですよ!と、山田詠美は解説「れもん、よむもん!ほんとに読んだもん!!」でその喜びにふれます。本書はこの解説まで読んでの一冊ですね。
というわけで以上です!
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