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『寝ながら学べる構造主義』(内田樹)を読んで

3.11以降、人はカラオケでサザンの「TSUNAMI」を歌いにくくなった。

何かの本に書かれていてハッとした記憶があります。withコロナというワードも出始めている昨今ですが、やはり前と後で変化は起きている。

ただ、どこが変わった?と聞かれると意外にもそんな出てこない。いつの間にかそれが当たり前の世界になっているからです。

半世紀後に「いま」をマクロで振り返れば「21世紀はじめの日本社会に固有の奇習」ときっと映ります。

一ついえるのは、人は知らずのうちに「偏見の時代」を生きているということ。

私達はつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たしのものの味方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。

これが構造主義の考え方です。

※構造主義を生きていることに自覚的になったという意味では現在はポスト構造主義って呼ばれていると認識してます。

実存主義的な「私」がどう認識しているかという時代から、民族学的・言語学的な環境・外的要因にアプローチする流れへと変化していきます。

本書は構造主義の流れ・変遷をおおまかに追うために、おおきく3つの構成をとっています。

①前史
*マルクス
*ニーチェ
*フロイト

②祖
ソシュール

③四銃士
*フーコー
*バルト
*レヴィ=ストロース
*ラカン

一見、前史の偉人たちが構造主義とどのような関係があるのか不思議に思えます。彼らのどこに構造主義的なエッセンスがあったのか、ここがおもしろかったのでかんたんにふれます。

①前史
*マルクス
キーワード:「階級」
人間はどの階級に属するかによって、ものの見え方が変わってくる

*ニーチェ
キーワード:「道徳」
人間はある外的規範の「奴隷」に過ぎず、自分が何ものであるかを知らない

*フロイト
キーワード:「無意識」
人間が直接知ることのできない心的活動が人間の考えや行動を支配している

「私」の主体性といったものは完全でなく、じつは外部から規定(無意識の場合は内部ですが)されている。ここに共通性を見い出せそうです。

こうやってみるとニーチェの表現が強烈なわけですが、本書ではニーチェの思想の流れが短いページのなかでも、ていねいに要約されていますのでご覧ください。

本書は「まえがき」と「あとがき」、あたまとおしりを先に読んで良著とわかります。

まえがきには「入門書」の立ち位置・役割とその意義が。さらにあとがきでは「学生時代にこういう本がほしかった」という著者の内的動機が綴られています。

最後にその流れから、四銃士の「言いたいこと」をあえてかんたんに表現してくれていますので、ここをクリップして終えます。

*フーコー
私はバカが嫌いだ

*バルト
ことがづかいで人は決まる

*レヴィ=ストロース
みんな仲良くしようね

*ラカン
大人になれよ

↑ひと言まとめは、著者が学生時代をふりかえり、いまとなっては「言いたいことがわかったきた」という流れのものです。

入門書ではありますが、ラカンは言っていることがめっちゃむずかしいことが入門書だからこそ、ちゃんとわかります。

というわけで以上です!


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