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『創作の極意と掟』(筒井康隆)を読んで

『創作の極意と掟』を読みました。

小説界の巨人、筒井康隆が初めて明かす文章論。文章表現に必須の「凄味」「色気」など31項目を徹底解説する、という内容。

どの項目についても豊富な事例とご本人の経験に基づくお話なので惹きつけられるし、何より説得力があります。

「薬物」はその説得力の高さに笑いました。31項目のなかで、ここでは「文体」にふれます。

まず、文体について筒井康隆のスタンスをクリップします。

小生の場合、作品によって文体を変えている。この話はこの文体で書くしかないと最初から決めて書き出すのだ。
次から次と新たなテーマや物語に挑むうち、さすがに熟練してきて三人称やいろんな文体でも書けるようになり、ついには「筒井康隆は作品ごとに文体を変えている」とまで言われるようになって大江健三郎までがそんなことを言い始めたのだったが、いくら何でもそれほどのことではなく、勿論、似たテーマや内容ならがらりと文体を変える必要はまったくない。

あくまで作品内容に奉仕するための手段としての文体であると筒井康隆は言います。

音楽における「〜ぽさ」とは

「〜らしさ」「〜ぽさ」。この言語化できないけれど、その人にしか感じ得ないオリジナリティに通ずるこの感覚は何なのか。

中学時代、着メロが流行っていた頃のお話です。16和音のメロディを聞き合い、曲当てクイズを友達同士でしていたときのこと。

知らないけれど、どことなくジャニーズっぽさを感じる。「あれこれってジャニーズ系?」すると、グループ名こそわからなかったけれど、正解したのを覚えている。

TOKIOかKAT-TUNだったかな。馬飼野さん作曲?忘れてしまいましたが。

文体を考える

サンキュータツオさんはかつてお笑いの漫才の文体に目をつけて「漫才文体論」という実験的なライブをされていて一度観にいったことがあります。

たとえばアンタッチャブルぽい漫才はこんなかんじ、というフリの後、漫才ロボットとなる若手ふたりが台本を演じます。うん、たしかにアンタッチャブルぽい。

サンキュータツオさんは文学からの流れで漫才に応用したわけですが、文学・音楽・漫才、あらゆる分野において「それっぽさ」の世界はあるんだなと。

いつの日か、レイモン・クノーの『文体練習』という本を知りました。日常のある一風景を切り取って、それをいろんな文体で表現するという試みです。フランスぽいなあ。

で、筒井康隆はある編集者から紹介を受けて『文体練習』を読んだそうです。ちなみに本書では、そのシチュエーションに合わせて、ハードボイルド調の文体で筒井康隆版を披露しています。

文体は引き続き自分のなかで興味のあるテーマだなあ。それだけ読めただけでもお得でした。あ、言うまでもなく、すべての項目がおもしろかっです。

というわけで以上です!

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