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後世に残すべき編集論!『編集 -悪い本ほどすぐできる 良い本ほどむずかしい-』(豊田きいち)を読んで

松岡正剛、都築響一、菅付雅信、佐々木紀彦、草彅洋平。これまで「編集」について読んだり聞いてきたけれど、ど真ん中で直球の編集・方法論でした。

本書は小学館で「少年サンデー」「女性セブン」を立ち上げ、取締役まで務めた豊田きいち氏のインタビューをまとめた一冊。

編集者とは、生き方

小学館の退職から20年以上経っても編集者的な習慣は染み付いている。戦後日本でいまの出版をカタチづくった氏にとって、編集者という職業は生き方・アイデンティティそのもの。

本書の構成ふくめて、どこかモームの『サミングアップ』を彷彿させました。

能に当てはめれば著作者が「シテ」であり、編集者はあくまでも、主役の「裏方」であり「シテツレ」。決して表に出ないように努めながら、著者者の足りない部分や、悪い部分をすべて黙って補おう、直そう、という気持ちで著作者の顔を立てなければいけない。
味が分かる人は、絵が分かる。言葉も分かる。絵や言葉が分かる人は、ツヤがある。ツヤがある人は、お客さんに好感を持ってもらえる。好感を持ってもらえる人が、いい編集者である。つまり、いい編集者は、食いしん坊ということである。

言葉に責任を持つ

自分は「よしあし」よりも「好きキライ」、Facebookでいえば「Good」よりも「Like」で語るスタンスです。

ファンベース的な思考も染み付いてどことなく「Like」にフォーカスしています。

氏は、こちらが快哉を叫びたいほど「よしあし」むしろ「あし」を言い切ります。

立川談志のような「認める」「評価する」といった言葉を使うには、それ相応の基準・軸がなければなりません。

この責任感、厳しさは作家・舟橋聖一の影響だと氏は語っています。

自分の言動に責任を持ち、傷ついてこそ、ホンモノの言動である。傷つかないような言動はニセモノだ」ということである。非常に重要なことである。ボクは、いまでも、舟橋さんの教えを遵守している。

「こういう考え方あるんだなあ」という学びは他にもたくさんあって、カタカナは漢字をくずした成り立ちゆえに表意的な要素があるよねだとか、印象に残っています。

あとがきの編集ノートによれば、氏の口述という名の講演が終ってから約1ヶ月後、編集部が本稿に目を通してもらおうとしていた矢先、他界されました。

本文よりも長い脚注を見たかったし、本文中の文章術・文体の解説が挿入されているからして、てっきりご本人の校正が入っているかと思うほど。

相当の気合いで本書をまとめあげたのではないかと推察します。後世に残すべき貴重な一冊といえるのではないでしょうか。

というわけで以上です!



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