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『時間資本主義の時代 あなたの時間価値はどこまで高められるか?』を読んで

科学の発達していない時代、人は所属する村それぞれ独自の時間感覚を持って生きてきたといいます。村長が「お昼だよー」といえばその時点が昼、といったように。

やがて時間の客観化・外部化が進み、科学的アプローチでその謎を解き明かそうとしました。すると非情にも、時間の研究はわたしたちを自分自身に引き戻しました。by カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』。

結局、時間問題は自分に戻るのねん。そこで手にしたのが本書です。

著者が提唱する新しい時間資本主義は、時間価値に対する各人の判断をベースに行われます。

生活者の視点で考えますと、モノやサービスを選ぶ際、時間価値という要素が深く関わるようになってきています。

たとえばランチ時、お弁当を買いに行くとして、店とオフィスを往復する時間、食べる時間、ゴミを捨てる時間、それら時間価値の総和を最大化してくれる商品は何かを考える。無自覚だとしても一理あると思いませんか?

で、時間価値は大きく2つに分けて考えることができます。

時間の効率化=節約時間価値
その物やサービスを利用することによって時間が短縮でき、他の高次な目的のために使用可能や有意義な時間が生み出される

時間の快適化=創造時間価値
その物やサービスを利用することによって有意義な時間を過ごすことができる

時間価値の考え方の事例としてわかりやすかったのは、新幹線の料金内訳です。

・乗車券→これはベース料金
・特急券→節約時間価値
・グリーン券→創造時間価値

なるほど。この2つの時間価値をもうすこし著者の言葉を借りながら深掘りします。

節約時間価値

*GAFAはじめとするグローバル企業は、基本として節約時間価値に重きを置いています。Amazonでいえば物流ふくめて買い物の利便性を恐ろしく向上させています。

*時間の相対的な価値が上がるなか、休みをどう過ごすか。まとまった長期休みこそ、ぜったいに失敗したくない。だから「検索」します。そこで選ばれるのはテッパン型サービス。選択肢は増えたはずなのに、かえって一点集中してしまうジレンマ。

創造時間価値

*都内では、人の流入増による地価の上昇で広い部屋に住むことがなかなか難しくなっている、だから外部化が進む。荷物をトランクルームに預けるだけでなく、作業場ではコワーキングスペース、リビングとしてのカラオケルームの再定義。いろいろありますが、ベースは創造時間価値づくり。

*コト消費と呼ばれてきた交流、共有を介在させる「共時型」コンテンツは言うまでもなく、創造時間価値。ここに利他的欲求を満たせるようなデザインができると、なおいまっぽい。

*ビールは二杯目以降は満足度は下がる(限界効用の逓減方則)けれど、人との交流は時間の経過によってむしろ満足度は上がっていく。それは人の時間が有限だからという。くぅ、悔しいけれどそうだ。

*c to cのメルカリは節約的意味合いもあるが、人とのつながり、売買自体がエンターテイメント化しているとも考えられる。本書で初めてジモティーというサービスを知りました。

時間の効率化→快適化へ

前者の「時間の効率化」によって、まとまった時間をつくりだし、それを「時間の快適化」へ変換させる。これがひとまず理想のモデル。

しかし時間の効率化は、手段の目的化を招きやすい。絞り出した「すきま時間」はそれに特化したゲームなどに消えていく。著者はボードリヤールの「シミュラークル」も例に出してましたが、何が豊かなのかを考えさせますね。

ドラえもんの道具で魅力的でテッパンなのは「どこでもドア」であり「タイムマシン」。まさに「空間」と「時間」に関わっています。

というわけで以上です!



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