なぜ人はアートを買うのか?

「教養としての◯◯」という切り口の本が増えています。(個人としては好みです)。

最近、知り合いの編集者が「教養としてのヤクザ」という本を出しまして、好評を博しているようです。よいことです。ものは言い様でございまして、まあその切り口や角度が企画の正体なのですね。

教養×◯◯で最近よく目にするワードは何か。本屋でぶらいついておりますと、ビジネスパーソン向けのアート関連の多いのかなと。VUCAと呼ばれる先の見えない時代、答えのないなかで勝負していくためには感性が必要です。それを鍛えるのにはアートなんです!そんなふうに。

アートの“効用”といいますと、岡本太郎や小林秀雄に怒られそうですが(観てただ感じとけ!のように)、個人としては3つの要素があるという認識です。

・アートにふれることで、心が動く絶対量が増え、人生が豊かになる

・大局観が身に付く。ロジックとは別世界のアートにみてふれることは、考えること、解釈を要します。みる力と選ぶ力がビジネスに応用できるだろうという考え。

・そして教養。パーティの立ち話がどれだけできるかという意味では、たしかに会話の幅が広がるのでしょう。結果として、ふだん会えないような人とつながることもある。一つの趣味になればいい。

松浦弥太郎さんは、なかでも設立者が自らのセンスをぶちこんでいる、私立美術館を観ることをオススメしています。たいして行けておりませんが、たしかにそれぞれまったく色はちがいます。個性が出ています。

ちなみに白金台にある松岡美術館、一般的にはそんな知名度ないと思いますが、コレクションという意味でとっても興味深い。ジャコメッティもあればエジプトのミイラもある、そんな雑多なかんじが、ザ・私立美術館でよいんです。

というかんじでアート鑑賞のよさは肌感覚でわかる。ただ、アートを「買う」ことは理解できていなかった。

「なるほど!」と思わせてくれたのがストライプインターナショナル代表の石川さんの著書。『学びなおす力 新時代を勝ち抜く「理論」と「アート」』オススメです。

(中略)私たちは、止まって深く思考するアーティストやアートと触れ合うことで、彼らから創造性を感じとり、学びに変えることができます。私たちビジネスパーソンは、アートと触れ合うことで、考える時間をアーティストやアートから買っているのです。

コレクターとしての私の基本的なポリシーは、現在活動している作家の作品を集めること。その理由は、アーティストと人生を、共に歩もうと考えているからです。

「考える時間を買っている」というのがとってもおもしろいと思いました。たとえばアート×ホテルの高円寺のBunaホテルは、アートの時間占有の価値を謳っているし、アートと時間は考えたいテーマです。

そういえば楠木建さんの新刊が出まして、アートでないところでも近いことを述べられていたのが印象深く、こちらも紹介します。Amazonにも掲載あります。

僕が何よりも好きなのは「考える」という行為なのだ。何かを知りたくて本を読んでいるわけでは必ずしもない。読書が無類に好きなのも、それが考えるための日常的手段としてもっとも効率的で効果的だからだ。読めば考えることがある。

つまるところ「考える」目的のために、効率的な手段として「読書」しているわけですね。この手段は「読書」でも「映画」でもいい。石川さんにとっては「アート」だった。

いやそうなんです、映画をみて、感じたことをぼーっと頭の中でぐるぐる回す帰路が楽しいし、読書して考えが溢れて途中でパタンと本を閉じる夜もワクワクする。心を動かすニュアンスが近いと思っていますが、それも「考える」一つ。

アートで考える時間を買う、勉強になりました。

というわけで以上です!

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