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「どこでも前向きに働ける仕組み」を作りたい。地方進出を決めた角田尭史(すみだたかし)さんが実現したい世界


場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをする。そんなライフスタイルを、ともに実践することを目的としたコミュニティ、LivingAnywhere Commons

LivingAnywhere Commonsは2019年9月、「Commonsチャレンジ!」と題して静岡県下田市へのお試し移住を募集しました。

3ヶ月間下田へ移住してもらい、その間の家賃はなんとゼロ円。
釣りをするも良し、街中を散策するも良し。下田にはリモートで仕事をしながら、自然やアクティビティを満喫できる環境が整っています。

この企画に応募し、移住者として選ばれたのが角田尭史(すみだたかし)さん。

角田さんは、北海道大学大学院修了後に土木関係の仕事に就き、その後メディア運営会社へ転職。現在はスタートアップ企業㈱FromToの役員およびフリーランス編集者として幅広く活動しています。

今回はそんな角田さんに、下田での移住について色々とお話をうかがいました。

お試し移住に申し込んだきっかけは「東京に生きる自分への違和感」

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ーー下田市へのお試し移住に申し込んだ経緯を教えていただけますか

僕は、大学院を出てから東京で約3年半働いていました。
東京はとても好きな街ではあるんですけれど、一方で「バリバリのビジネスマンとして振舞わなければ」というプレッシャーも感じていたんですね。

そんなときに友人に誘われて下田を訪れた際、そこで出会った人たちに感化されたんです。なんというか…「人らしい付き合いができるところだな」って思ったんですよ。

ーー「人らしい付き合い」とは具体的にどういうことでしょうか

思い返せば、東京にいたときは無意識のうちに、人と何を話すにしても「メリット」を考えていました。相手にとってのメリットや自分にとってのメリット、それが常に求められているように感じていたんです。

でも、下田での人付き合いで感じたのは「助け合い」でした。ここでは日々の生活を通じて、いつもお互いに協力しながら物事を進めます。
住んでいる場所でも、机を運ぶ、シールを貼るという小さなことから、一緒にイベントを企画・運営するなど大きなことまで、「助け合い」の毎日なんです。

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▲メインフロアのガラスへシール貼り。みんなで協力して1つの作業を進める

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▲LivingAnywhere Commonsには、自分たちの空間を自分たちでより良くしていく風土がある

「みんなで何かを作っていくんだ」という感覚が、僕にとってはとてもうれしかったんですよ。

それで下田市でお試し移住を募集していると聞き、迷わず申し込みました。

お試し移住でやりたいことは「ライター・編集者向けのスクール」

ーーお試し移住の期間にやりたいと思っていることはありますか

ライター・編集者向けのスクールをやりたいと思っています。

僕は自分が経験ゼロからスタートしたこともあってか、ライターや編集者って、決して勉強しないとできないものではないと思っているんです。ライターとしての素養は、日常の暮らしの中で十分に育めるはず。

それなのに、特に編集者の敷居はとても高く、どこかに勤める必要があったり、そもそもそのステップが踏めなかったりします。だから僕はそこを変えていきたいと思う。

また、地方ならではのスクールにしたいとも考えています。下田であれば、食や観光資源とミックスさせるなど、日常の中に必ずヒントがあるので、下田だけでなくそれぞれの地域で特色を生かした講座を展開したいです。僕が立ち上げるスクールでは、未経験の人でも経験を踏まえながらしっかりと卒業までいけるようにしたいですね。

副業としてライターの仕事を経験。書くことが周囲から高く評価されることに気づく

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▲角田さんは自然溢れる下田の風景を通じてカメラの腕を磨いている

ーー角田さんは、もともと書くことを仕事にしたいと考えていたのでしょうか

いえ、2017年まではそんなことはまったく考えていませんでした。僕が書くことを始めたきっかけは、土木の仕事で病んでいるときに、今の会社の代表から「ライターやってみる?」と誘われたことです。

最初に書いた記事は、とあるイベントの案内文。記事を書いていると、まるで自分の作品を作っているようで面白かったんです。自分が書いたものが世の中に広まっていくのを想像すると「スゲーな」と思いましたね。本業が終わると、帰宅するのを待てずにスマホでバッーと記事を書く。とにかく記事を書くのが待ち遠しかったのを覚えています。

その一方で、本業ではみんなしんどそうに働いている。その姿を見ていられなくなったので「なんとかしたい」と、書くことを仕事にしてメッセージを届け、そういう状況を変えてきたいと思うようになりました。それでメディア会社へ転職することにしたんです。

ーー最初は副業的にライターの仕事をしていたわけですね。メディア会社への転職を決めるまでには、どのくらいライターの経験を積んだのでしょうか

ライターとして記事を書いたのは3本ですね。

ーー3本!?

はい(笑)。期間的には3ヶ月くらいです。

ーーちょっと待ってください。たった3本、3ヶ月ライターをしただけで転職を決めたんですか?

そうなりますね。今考えたらヤバイですよね(笑)

それまで書くことが得意だなんて思ったことは無かったんですけど、書いたものがとても評判が良かったんです。みんなが褒めてくれた。

僕としては当たり前のように、自然にやっていたことが、周りからスゴイと評価される。能力を見抜いていただいたとも言えます。

だから僕はその3本でやれそうだと思ったんです。何よりも、当時やっていた仕事よりも「僕はこっち(書くこと)がしたいんだ」という状態になってしまっていたんですよね。


実現すべきは「どこでも前向きに働ける仕組み」。仕事で苦しんでいる人、悩んでいる人たちに勇気を与えたい

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▲下田の星空。都会では見ることのできない満天の星空がある

ーー今回立ち上げようとしているライター・編集者向けのスクールですが、わざわざ下田市でやろうと思ったのはなぜですか?

正直、場所は下田に限らずどこでもいいと思っていたんです。僕が1番実現したいのは「どこでも前向きに働ける仕組み」だからです。

「どこでも前向きに働ける仕組み」を作りたいと考えるに至ったのには、2つの理由があります。

1つ目が、3年ほど前に同窓会に行ったときの話です。

僕の地元は愛媛県なんですが、僕が東京で働いていることに対して同級生が「東京ってすごいね!」と言ってきたんですね。

でもそのとき僕が感じたのは、「東京がすごいのではなく、すごい人がすごいだけだよ」ということ。東京に住みながらも、暗い顔で職場に向かっている人はたくさんいます。多くの人が東京をすごいと思うのは、「東京がテレビの中の世界だから」なんですよ。

加えて、かつては明るく元気だったのに「仕事辞めたい!」「こんな仕事やってらんない!」とか、仕事に苦しんでいる同級生が少なからずいました。その一方で、愛媛でも前向きに働いている人がたくさんいることも知っていたので、「場所は関係ない」と思い始めていたところでした。

多くの人が「場所」に優劣を抱き、「仕事」に対して前向きになれていないと感じました。

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2つ目が、土木関係の会社で働いていたときの話です。

僕は地方に発電所を建てて、そこに住んでいる人たち電気を送るという、ある意味大きな仕事をしていました。でも、そこでの職場環境は最悪だったんです。みんな本当にしんどそうに仕事をしている。僕も心身を病み、結果的に仕事を辞めることになります。

そのとき思ったのは、「人が仕事で病んだり苦しんだりする、そういう社会ではあってはならない」ということ。でも僕はそうなってしまった。だから、少しでも僕みたいな人を減らしたい、そう決心しました。

僕の使命は「『場所』にとらわれることなく、『働く』ということに対してやりがいや魅力を持てる」ということを自ら実践し、その姿を伝えることだと思っています。

かつての僕と同じように苦しんでいる人たちに、勇気を与えたいんです。


角田さんへのインタビューを終えて

角田さんは偶然ライターの仕事に出会い、そこから新たな人生を広げることになりました。一見、それはとても運が良かったことのように思えます。

しかしながら多くの人は、そのような機会を得たとしてもすぐ行動に移すことはできないでしょう。

ここで1つ疑問が生じます。

なぜ角田さんは迷わず新しい道を選ぶことができたのでしょうか?

それは彼が置かれていた環境もありますが、何よりも彼が「書くこと、伝えること」を好きでいたから、それに尽きると思います。

好きなことは自分にとっては「当たり前」のことです。だからこそ、その能力に自分1人では気づきにくい。

彼は自分でも気づいていなかった「書く力、伝える力」を周りから見出され、その評価をそのまま真正面で受け止めました。

多くの人はそこで「いやいや私なんて大したことないですよ」そうやって1歩踏み出す機会を逃してしまいます。

角田さんの話から言えることは、然るべきタイミングで訪れる自分の「好き」を知る機会、それを自分でしっかりと受け止めること。それが何よりも重要だということです。

自分の「好き」をそのまま素直に受け止めること。

これからの働き方のヒントは自分の「好き」との向き合い方にありそう、そんなことを感じさせてくれるインタビューでした。

お試し移住を経て、下田への本移住を決めたという角田さん。下田を拠点にどのような取り組みを実現させるのか、これからがとても楽しみです。

角田さんに会いたいという方は、ぜひLivingAnywhere Commons伊豆下田を訪れてみましょう!

〈ライター・長濱 裕作〉


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