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意味不明な現代アート/説明したがらない日本人

意味不明は当たり前?

「(現代アートは)わからないのが普通だと思うですよ。だって他人の頭の中なんかわかるわけがないです。人類すべてを好きになるのは無理なのと同じで、嫌いなものは嫌いだし、興味持てないこともいくらでもあるです。」

とある質問スレから拝借させていただきました、現代アートの解釈です(*1
結論からいうと、この解釈は半分正しく、しかし説明不足だと考えています。

確かに「現代アートがわからない」という話はよく耳にしますし、日本に限らず「私は芸術はよくわからない」と海外の友人にも言われることもあります。

しかしここで私が最初に定義しておきたい内容は「know」と「understand」の違いです。

「理解はできる」と「理解もできない」

一体何を表現しているのか(understand)を知るのはそう難しくないのです。確かに詳細に、作家の頭の中を解剖して全てを理解するのは大変でしょう。

全ての作品を自分の経験談と当てはまるまで咀嚼できる(know)まで持っていくのは難しく、ほどんどが合致しないのは普通です。

現代アートで私が伝えたいことは、理解はできる(understand)まで持っていくことを恐れてはいけないことです。鑑賞者は一体何を表現しているのかを広く解釈し、そして作者もそれを伝えるべきだと考えています。

日本人画家の多くは、この理解(understand)の領域に持って来させる説明すら放棄する傾向にあるため、鑑賞者は予測するしかありません。

このブログでは、なぜこれほど説明を嫌うのか、そもそも現代アートとは何かをお話していきたいと思います。

前半は無料で読めますし、前半だけでもあなたの知識となりますので、ぜひお楽しみください。

そもそも「美術」は外国語

日本人が作品の説明をしない理由の一つに「美術」が何かを明確にしておく必要があります。

これを曖昧にさせてしまったのは、学校教育における「図工・美術」の教育方法にあるわけですが。

結論からいうと、美術とは、明治以降に「fine art」日本語訳して、もともとあった自分たちの生活にねじ込んで発展した言葉です。
そもそも日本語が起源ではありません。
それに値する日本語には「工」がふさわしいかもしれませんが、明治維新で文化も政治もヨーロッパ方式に転換しようという国の思惑により踊らされた言葉の一つです。
今回お話する「現代アート」とは、もともと日本にあった文化伝統とは一線を画す「美術」の延長に発達してきたジャンルです。今回は日本工芸の内容は割愛しますが、その辺と混同させないで考えていただきたいです。

そもそもここが混同している画家は、現代アートを説明しません。というより、そもそも説明できないのではないかと考えています。

アーティストが咀嚼できていない背景を、鑑賞者は理解することは難しいのではないでしょうか。日本人は美術を、単純なビジュアル表現ぐらいにしか思っていないのではないか。そうさせていたのは日本の教育の「とりあえず絵を描いてみましょう」教育法にあると思っています。

そして写実的で説明の要らない明確さのある作品に良い点数をつけ、美術の本質を全く教育しない体制が完成されました。

それは「工芸」の分野では正しいかもしれません。しかし外国からやってきた「美術」という言葉を体現していません。


さらに不思議なことに、これは日本の美術大学においても、あまり説明されません。なぜでしょう。。
美術の分野はそのまま大学教授となって教育の分野で活躍してもらう方が循環するからという解釈もあるようですが、この現象は素晴らしい日本のアーティストが世界に通用するルールを知らないままであるとも言えます。

世界がみる現代アート(contemporary-art)の起源

さて、日本工芸との線引きが終わったところで世界がみる現代アートの起源についてまとめていきましょう。

世界的に見ても、アートの元になる考え方は西洋美術の歴史から繋がるものと考えられます。
これは芸術の分野に限らず、世界史的にもヨーロッパの歴史背景は強大で、現代の経済の中心となっているアメリカですら歴史は短いですから。第一次世界大戦でヨーロッパの戦争にアメリカが参戦したあたりから歴史に乗っかってきますが、それ以前はヨーロッパの奴隷土地です。

美術とアートの違い

西洋美術の歴史をさっくりとまとめておきます。

まず今から10万年ほど前、我々の祖先であるホモ・サピエンスが「虚構(嘘を信じる)」の概念を獲得し(サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福:ユヴァル・ノア・ハラリ著書:日本語版 河出書房新社)そこから文明を発展させます。虚構により現在自分たちが生きている世界ではない、死後の世界を想像することで、神の存在を信じるようになり、神のために非日常を演出する貢物や装飾が発達します。

「美術」は神のために捧げるものというのがもともとの起源ということになります。

それから王族・貴族が、権力の故事を表現する媒体、学問に長けていることを主張する媒体に変化します。
中世も半ばになると(14世紀)美術が単なる説明画としての役割だけでなく、人を感動させる『芸術』へと変化していきます。(中世時代/または初期ルネサンスと呼ばれます)
市民革命などにより美術の象徴であった、現在のルーブル美術館を市民の所有するものとなります。この頃は市民層が、自分たちが勝ち取った栄光を忘れまいとして美術を保管したり、戦争に勝った歌を国家に据えたりしています。

そこから「美術」は「アート」と「デザイン」に分裂していきます。
「現代アート」とは、西洋の「美術」の延長に生まれた「アート」から生まれることとなります。


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ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
これ以降の有料では以下のお話を記述しております。
・アートとは何か/絵を描くだけで「アート」と呼ぶには軽率
・現代アートが目指しているもの
・歴史では「宗教×芸術」。その先は?
・現代アートの顧客はどこなのか


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