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「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」第5話〜E様宅〜

本日のお客様はE様。

E様は猫がお好きで、野良猫を見るとついつい拾ってきちゃうそうです。

賃貸アパートにお住まいのE様ですが、動物大好きな大家さんの了承を得て、室内で多頭飼いしていらっしゃいました。

そのE様からのご依頼は、床掃除。
「猫たちが汚しちゃって……」とお困りのご様子。

私も犬猫が好きなので、喜んでお見積りに伺いました。

初めてE様宅へお伺いした時は、三毛猫・白猫・ハチワレの3匹の猫がいて、2DKのお部屋の内、1部屋が猫専用部屋になっていました。

猫部屋に入ると、床に点々とシミがあり。
オス猫のトイレのしつけがうまくいかず、あちこちでマーキングをするようになったそうです。

幸い床にはワックスが塗られていたので、剥離(ハクリ=ワックスをはがすこと)をすればキレイになりそう。

「お掃除でキレイになるなら、いくらでもお支払いします」とE様。

通常の床のお掃除メニューは、洗浄→乾燥→ワックスがけとなっていますが、追加料金をいただいて、剥離も行うことになりました。

ワックスをはがす剥離剤は、pH値の高いアルカリ性です。
作業中に猫ちゃんが触れると危ないので、お掃除に伺う日は別部屋でケージに入れて待っていただくようお願いしました。


ワックスの剥離(ハクリ)は時間との勝負。
床に剥離剤が染み込むと床板がそることがあります。

そうなるとフローリングの張り替えになるので、今回はパートさんではなくプロのお掃除仲間を連れて伺いました。

E様のお宅を訪問すると、3匹だったはずの猫が4匹に増えています。

「公園の茂みでミーミーないてるのを見つけちゃって……」

猫を入れる予定のケージは半畳サイズ。
先住猫が新入りの猫を受け入れていない様子で、近づくとシャーシャー言っています。

狭いところに入れるとケンカが起きそうなので、新入りの猫はお風呂場で待ってもらうことにしました。

お掃除道具をセッティングし、お部屋の奥から入り口に向かって床の剥離をスタート!

普段、店舗クリーニングが多めのお掃除仲間は、床の剥離にも慣れています。
コツを教えてもらいながら作業は順調に進み……
床の汚れを取った後ワックスを3度塗りしたので、シミだらけだった床はピッカピカに。

「こんなにキレイになるんですね!もう絶対に汚さないようにします」

ビフォーアフターの差が大きい現場は喜ばれます。
想像以上の仕上がりに、E様よりチップもいただいちゃいました。

(かわいい猫ちゃんたちとも戯れることができて楽しい現場だったなぁ)

その時は、そう思っていました。

その剥離作業から3ヶ月後……

「床が汚れてしまって…また剥離をお願いできませんか?」
E様よりお電話をいただきました。

土足で歩く店舗と違い、一般のご家庭では床ワックスは年に1度、剥離は数年に1度で十分キレイさを保つことができます。

そんなに頻繁に剥離は……と思いつつ、E様宅に現状を確認するためお伺いしました。

(あれ?猫が増えてる…!)

「E様、前回のクリーニングの時は4匹でしたよね?」

「先月、保護猫の譲渡会で目があった子を引き取って……今は6匹います」

頭をかきながら、猫部屋に案内するE様。

トイレのしつけがされていない子猫もいて、8畳の床は汚物まみれ。
カーテンも壁紙も破れかぶれで、まるでおばけ屋敷のようになっています。

(これは…カオス!!)

内心、帰りたくなるような状況でしたが、お掃除屋さんのプライドで思いとどまり、床の状態を確認。

前回、ワックスを3層塗った上の汚れだったので、剥離なしの洗浄+ワックスでいけると判断。

3日後、猫好きのパートさんと2人でクリーニングに伺い、カオスな床もなんとかキレイになりました。

お掃除の後、パートさんがトイレのしつけについてレクチャーし、その日の業務は終了。

猫部屋はスッキリしましたが、猫の汚れやニオイがついたブラシ類は、他の現場で使えずぜんぶ破棄となりました。

(結構、高くついちゃうなぁ)

汚れ的にも精神的にも、次回の依頼は断ろうと思ったのでした。


でも【2度あることは3度ある】ということわざの通り……
数ヶ月後。

「床が汚れてしまって……」
またまたE様よりお電話が。

直接お見積りにお伺いする気力が足りず、床の写真をメールに添付して送っていただきました。

E様が送ってくださった写真には、モザイクが必要なくらい床全体も猫たちもウ○チまみれになった様子が写っています。

(うわぁ……どうしよう)

ワックスの剥離となるとひとりでは厳しいので、お掃除仲間に床の写真を転送して相談。

「今後のこともあるから、洗浄後フローリングの上にPタイルかクッションフロアを貼った方がいい」
との提案がありました。

アパートの大家さんにも来ていただき状況をお伝えして、E様と大家さんでリフォーム費用を折半し、床も壁紙も猫仕様にチェンジすることになりました。

リフォームのお見積りはお掃除仲間にお任せしたのですが、ハウスクリーニングとは桁の違う金額に。
いろんな面で勉強になった現場でした。

そして……
歴史は繰り返すもの。

1年後、記憶が薄れたころにお電話があり……
「また床が……」とE様。

大変心苦しかったのですが、汚れている床や飼育崩壊の猫たちを見るのは切ないので……
「スタッフが猫アレルギーになったので、申し訳ありませんが伺うことはできません」
そういう理由でお断りさせていただきました。

日程が合わない理由以外で仕事をお断りしたのは、E様が初めて。
お掃除屋さんとして敗北感を感じた現場でした。

今は私も保護猫を飼っていますが、最初にしっかりトイレを覚えさせました。
E様の猫たちもどうかトイレを覚えて、快適に過ごせていますように……


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