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【色をめぐる旅】 -インディアンイエロー-

“インディアンイエロー”

インドのベンガル地方で古くから作られ、使われていた黄色い顔料の名前です。

この色はインドから約8,800Kmも離れた地である、フランドルの画家たちが愛用していたとされ、かのフェルメールもこれを用いたといわれています。

イメージです
『真珠の耳飾りの少女』(1665年頃)ヨハネス・フェルメール作
※イメージです。

色の製法

さて、古くから伝わるこの“黄色”はどのようにして作られてきたのか。

黄色の天然顔料には多い、“植物”を思い浮かべる人もいるかもしれません。もちろん、“鉱物”という考えもあります。

ですが、この色は…

“1頭の雌牛から作られた色”なのです。

雌牛イメージ

牛のどこから?と思われたことでしょう。

この色を作るためには、まず雌牛にマンゴーの葉を与えます。
そして、栄養失調となった牛たちが出した尿を集め、蒸発させ、顔料に精製するのです。

つまり、この柔らかな深みのある黄色は、“超濃い牛の尿”の色なのです!

何故、牛の尿から色を作ろうと思ったのか。誰がこの製法を考えたのか。使うことに抵抗はなかったのか。牛はどうなってしまうのか…。
思うことは多々あるものの、人類の考え出すことに驚きを覚えます。

現在では、動物愛護の観点から、この製法は行われておらず、本来の色に似せた合成顔料が用いられているようです。
そこまでしてこの色を作っていたのか、と思った身として、ホッとします。

まとめ

私たちの日常には、たくさんの色があります。
当たり前のように見ている色ですが、その色の背景について、ちょっと思いを巡らせてみるのも、楽しいかもしれません。

※「顔料」…染料と混同されがちですが、”絵の具”のように紙の表面に定着するもの。染料は“染物”のように水に溶け、紙に染み込むものです。


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