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かつてロリコンだった俺たちへ

ロリコン――それは膾炙かいしゃされた定義でいえば小中学生くらいまでの女の子、もしくは容姿的に幼い女の子に性的興奮を覚える人間のことだ。

世間からは冷たい目を向けられ、病気だと蔑まれる存在。
男からすれば女は若けりゃ若いほどいい、というのが一般的ではあるものの、その“若さ”が一定の基準以下になると、倫理的な問題がつきつけられる。

倫理的ストッパーを突きつけられて尚、己の性癖に忠実であろうとするならば、成る程病とも呼ばれるだろう。

そんなロリコンも、完治……とはいかないまでもマシになることはある。
それは女児に対する犯罪的な熱量が失われるということだ。
犯罪を実行に移す熱量がなくなっても、世間からすれば気持ち悪いロリコンであることに変わりはないが、無害なロリコンに石を投げるほど日本社会は過激じゃない。

ぷにろり湯みてぇなぬるいロリコンを惰性で続けているうちは、誰も文句は言わないのだ。

だが、自身の“性癖”にすらガチになれない奴は、本当に“ロリコン”と言えるのか?

これはかつてロリコンだった俺が、ロリコンでなくなるまでの物語だ。

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俺が成熟したラインよりも未成熟なラインに興奮を覚える人間だと自覚したのは、中学2年頃。

当時オタクたちの間ではKeyが人気を博していて、それは奥羽のど田舎に住む俺たちのコミュニティでも同様だった。猫も杓子もヤンキーも、当然のようにCLANNADをやっていた。俺も他のオタクの例に漏れず、CLANNADはプレイしていた。ゲームをプレイして泣いたのはCLANNADが初だったかもしれない。ちなみに一番好きだったキャラは有紀寧だった。

そしてその流れで、当然のようにリトバスもプレイした。
そこで俺の人生は狂った。

プレイし終わったばかりの頃は、来ヶ谷さんとこまりんが好きだった。これは紛れもない真実だ。でも暫くして、「クドが一番可愛くないか……?」と思い始めた。
俺が己の息子をシャララエクスタシーさせるのは、今までは来ヶ谷さんとこまりんで5:5だった。それがいつの間にか、クドでエクスタシーする割合が増えていった。
俺は心底困惑した。こんな凹凸のない、子供みたいなボディ、なぜ俺は惹かれているんだ? 純粋な疑問だった。
当時の俺は触れれば弾けてしまいそうなほどギチギチに性欲が詰まったワンパクボーイ。当然グラマラスな肢体こそ正義。クドはその真逆だ。

しかも、当時はオタクコミュニティの中であっても“ロリコンは気持ち悪い”という共通認識があった。当然俺は自身の性癖を偽り、表面上はお姉さんキャラかコモンセンスなキャラが好きだと宣っていた。

ハルヒでは鶴屋さん。リトバスでは来ヶ谷さん。ひぐらしでは竜宮レナ。
それが俺の好きなキャラだと偽っていた。

だが、そんなある日。俺は人生を変える出会いをする。

中3になり、受験生になったことで俺は塾に通い始めた。そこで人生で最も長い間友人やることになる奴と出会う。

そいつのことは仮にKと呼ぼう。

Kとは実は中1の頃から同じ部活に入っていて、全く面識がないなんてことはなかった。今までも普通に話すことは何度かあった。だが、所属しているグループも違うし、クラスも一緒になったことないし、部活でもあまり一緒に練習することはなかった。

だから特段仲がいい、というわけでもなかったのだが、塾内に同じ中学の知り合いはKしかおらず、必然的に距離が縮まっていった。そうして話す機会が増えてくると、Kは俺とかなり趣味が合うな、というのがわかった。今までオタ話をしてきた奴らよりも、Kのほうが観てるアニメやら漫画やらゲームやらが合致している。

思いの外意気投合した俺たちは、塾の休憩時間や塾が終わってからの時間、ずっと取り留めのないことを話して過ごした。

そんな雑談の中で、勿論好きなアニメキャラは? みたいな話も出てくるわけで、俺は最初取り繕ってお姉さんキャラなんかを挙げてはいたが、Kは兎に角ロリっぽいキャラのみを挙げ続けていた。
俺は少し茶化して、「お前ロリコンなん?w」とニチャついて訊ねた。Kはそれに対し、「ああ、女児のことしか考えられねぇ」とめちゃくちゃ爽やかな笑顔で言ってみせた。

“ロリコンは恥ずかしいこと”だと、試すように訊ねた俺に、Kはなんの照れもなく答えてみせた。

かっけぇ……。

羨望と憧憬。それが当時の俺が抱いたものだ。
客観的に考えて、ロリコンであることは全く誇らしいことではないのだが、彼のストレートな物言いは俺の捻れた心根に突き刺さった。

Kに感化され、俺もホントは女児にしか興奮できねぇんだ……と本音を漏らした。

ハルヒではキョンの妹が一番好きだし、リトバスではクドが一番好きだし、ひぐらしではりかちゃまか羽入が好きだ。

そう俺が打ち明けると、Kは真面目な顔で「いや、ひぐらしでは沙都子一択だろ……」と顔を顰め、その時俺は生まれて初めて殴り合いの喧嘩をした。

歯が折れることはなかったが、唇が切れる痛みと血の味は今でも忘れられない。
俺、今ならお前に謝れるよ。ほんとは沙都子でもシコれるって。

殴り合って仲が深まるなんてフィクションの中だけだと思ってたが、実際に俺たちは拳で語り合い親友となった。

高校で別々に分かれても、俺たちの交友関係は続いた。

週末はよく銭湯に行って、野良の幼女が男湯に紛れてないか探した。どれだけ保護者に怪しまれないように視姦するか二人で話し合ったりもした。いいエモノを見つけた時、エレクトしたマイサンをタオルで隠すのに必死になった。

放課後は保育園近くのアパートに住んでる“ガチの奴”の部屋に屯して、女児達の声をBGMに賭け麻雀したりエロゲ実況した。

夏になれば市民プールに行き、監視員に怪しまれないよう視線を縫って女児の水着を観察した。俺は昔川で溺れかけたのがトラウマでプールも好きじゃなかったけど、Kと一緒なら楽しかった。

コミックLOの連載陣で侃々諤々の議論が出来たのもKだけだった。

俺が大学に入る頃、Kは一足先に社会人になって、自分の車も持つようになった。たまに地元に帰省した時は良い女児視姦スポットがないかって2人で旅行もどきもした。

そんなある日。銭湯で女児視姦した帰り道。
Kは「俺たち2人なら……女児レイプできるんじゃねぇか?」って本気で持ちかけてきた。
俺は「おいおいおいおい……一線越えるのはNGだろ」という想いと、「それもいいかな」という2つの想いで揺れていた。

当時の俺は、なんというか自分の人生にはなんの希望もないと、もう終わった人生だと諦観を覚えていた。自分の人生をめちゃくちゃにしたかった。

だからこいつとならろりともだちするのも悪くねぇな……と本気で思っていた。

だが結局、女児強姦計画は未遂で終わった。
女児強姦を持ちかけるなんてのは、常識的に考えればまともな精神状態ではない。Kは仕事のストレスで精神を病んでいた。
不穏な発言から暫く、Kとは音信不通になった。

俺も大学があるのでずっと地元に残ってるわけにもいかず、気付けば直接会うことも、連絡を取ることもなく時が過ぎた。

そして、久々にKから連絡が来たのは、1年以上経ってからだった。

彼の第一声は、「俺、今度結婚するんだ」というものだった。

俺が知らないうちに奴は転職し、転職先で出会った女性と結婚するというのだ。
ある程度落ち着いてから伝えたかったから……と暫く連絡を絶っていたらしい。
俺も自分が大変な時ほど親しい人に会いたくなくなるから、Kのことは責めづらかった。

俺は電話越しにおめでとうと簡素な祝福の言葉を送り、結婚式には呼んでくれよ! なんて言って電話を切った。

親友が結婚する。

喜ばしいことじゃねぇか。でも当時の俺にとっては、許しがたいことだった。

お前、女児にしか興奮出来ねぇんじゃねぇのかよ……なに当たり前の幸福を掴もうとしてんだよ……俺を置いて、正常になろうとすんなよ……!

俺はスマートフォンを床に叩きつけ、嗚咽を漏らして崩れ落ちた。

なぁ、ロリに対する熱情って……当たり前の幸福に劣るようなものだったのか?

だったらロリコンなんて存在そのものが――嘘じゃねぇか。

こうして俺はロリコンをやめた。
いや、正確にいえば、俺は今でもロリキャラは好きだ。COMIC LOは毎月購読してるし、今でも好きになるキャラの8割はロリ属性がある。
それでも、かつてのように女児に手を出して捕まってもいい――とは考えられなくなった。俺はもう“本物”じゃなかった。

俺にとって青春の終わりは、ロリコンの終わりでもあった。


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