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『理解のある彼くん』を持つ全人類へ

ひとつお願いがある。

結婚前に、『理解のある彼くん』を連れてかかりつけの病院(精神科医)のところに行こう。

適応障害、不安障害、鬱、発達障害……何を患っているにしろ、病院にかかっている場合、そのことを彼氏に伝えている人は多いと思う。通院していることを理解していて付き合ってくれている彼が『理解のある彼くん』と呼称されるはずなので。
実はこの時点で『理解のある彼くん』はかなり稀有な存在なのだが、今回はそこを掘り下げはしない。

一方で、そんな彼と一緒に主治医の診察を受けたことのある人は少ないと思う。
二人の予定を合わせるのは難しいかもしれないし、自分の病状を彼の前でつまびらかにされるのは恐ろしい。

ただ、『理解のある彼くん』が今後一生の伴侶になるとき、そんなことは言ってられないくらい現実が迫ってくる。
まず、
・自分の病状が『理解のある彼くん』の想像していたものと違った
・『理解のある彼くん』の家族が、精神科にかかっている人間を親族に加えたくない

上記2点において、残念ながらお付き合いおよび結婚が無しになる可能性がある。
ふりだしに戻るのは極端な言い方をするが、最悪だと思う。


これを乗り越えて、では結婚しましょうというところに話が進んでハッピーエンド……かというと実はさらに難しく、
・同居および生活をどうするか
・結婚式をするかどうか
・子供を望む場合、現在服薬している薬をやめなければいけないか

ということを考えなければならない。
つまり、大金が必要になり、順序良く物事を進めなければならず、他人に気を使わなければならず、生活環境が変わり、薬が消える。

おめでたい結婚のはずなのに、実は、患者当事者の命をおびやかすほどキツイ選択肢が待っている。
そして、問題なのはこれらが患者にとってキツイ状況だということを『理解のある彼くん』が想像だにしていないということだ。
このギャップと無知が、絶対に二人の関係の前に立ちはだかってくる。

だから、早めに二人で主治医に会ってほしい。

専門家の口から「どういう病状か」を説明してもらって、彼に聞いてもらうことが第一前提だ。
そして、今後の生活において「二人で何に注意すればいいのか、どういうルールをつくればいいのか、強く症状が出てしまった時どうしてほしいのか」等を、自分と彼と主治医の三人で共有してほしい。
二人だけでこれをやってしまうと、言った言わないの消耗戦になってしまうところ、第三者が入ることで多少クッションになる。


精神科医をそんな風に使っていいのか、という疑問がある。
正直、精神科医によると思う。担当外だと思う医師が多いのではないだろうか。
ただ、お付き合い→結婚への過程で「変化」に適応できず病状が悪化することはままあることだと思うし、それに対応することは、精神科医の仕事だと思う。

患者が一人で通院する場合、増薬やカウンセリングを増やす、という手法を取る可能性もある。
それで納得できるならそれでいい。ただ、自分はその方法では彼と一生やっていくのは難しいと思った。「自分ひとり努力している」と勝手にパンクしてしまう未来が見えたからだ。


だから、『理解のある彼くん』を持つ全人類へお願いがある。
『理解のある彼くん』と人生をやっていくつもりがあるなら、相互理解と協力と感謝を惜しまないでほしい。
『理解のある彼くん』は、とても大変だと思うけれど、付き合ってあげてほしい。患者の通院に、人生に、一歩踏み込んでほしい。
踏み込んだ結果、やっぱり自分には重過ぎる、自分まで具合悪くなる、と判断した場合、その判断を下したことを、相手に伝えてほしい。
そこからはやはり話し合いが必要になる。


人生や対人関係はトライアンドエラーでやっていくしかない、というのは精神科にかかっている人間はある程度知っている、感じているものだが、いわゆる健康に生きていた人はそれを知らないし、ショートカットしたがる。
トライアンドエラーでやっていくしかない。
それを一緒にやっていってくれますか?という確認をしましょう
、という話だ。


ちなみに、精神科医は結婚生活アドバイザー(専門家)ではないので、夫婦二人で来てくださいね、と医師側から言ってくれるケースは稀だと思う。

だから自分から主治医に言ってみてほしい。
「次の診察に彼を連れてきてもいいですか?」と。

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