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小説『めぐみ坂の春祭』(大森・蒲田)
同人誌即売会「眼鏡時空32」で大森清陵会が制作した、大森(池上・馬込)・蒲田が舞台の夢小説ライトノベルです!
Planet Blue
めぐみ坂の春祭
大森清陵会編著
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今年の春は、穏やかな陽気に包まれていた。教会では復活祭が祝われ、人々は心を清めるために集まっていた。
私の姉である聖と、彼女の助手であるウルスラは、教会の礼拝に参加していた。厳かな雰囲気の中、聖書の章や詩を読み、讃美歌を歌う。その後の説教では、復活の意味について考えを巡らせた。
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「春の訪れは、新たな希望と生命の始まりを象徴するものですね」
と、聖が微笑む。
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「確かに、聖書の中にもそのようなメッセージが沢山あります」
と、ウルスラが頷いた。
昼間には、二人はカフェで静かに聖書を読み、考えを巡らせた。聖書の文字は小さく、時には読みにくい事もあるが、ウルスラが用意した眼鏡を掛ける事で、聖の読書がスムーズになった。
「ウルスラ様。この眼鏡、本当に助かります。ありがとう御座います」
と、聖が感謝の意を込めて言った。
「どう致しまして。聖様が心地良く読書できるなら、それが何より嬉しいです」
と、ウルスラが微笑んだ。
二人の心は、春の陽光の中で穏やかに満たされていた。彼女達は、新たな季節と共に、心を清める旅を続けてゆくのだった。
東京 大森 池上町
この年の春、武蔵野荏原台地にある、長栄山の寺院に向かう私と仁。
長栄山では花祭が開催され、釈迦堂で盛大な法要が行われていた。仏像に水を掛け、神仏に祈りを捧げる仁の姿は、静かな中にも厳かな雰囲気を漂わせていた。
「この山は、本当に歴史を感じさせる場所だね」
私が言うと、仁は微笑みながら頷いた。
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「そうだね。古墳や氷河時代の地形が残っているというのも、
この場所の魅力の一つみたいだよ」
と、仁が返答した。
二人は歩きながら、長栄山の悠久の歴史に想いを馳せた。そして、人間の叡智を結集した経典が、この寺社で読誦されている事を思い出し、感慨深い気持ちになった。
長栄山の屋台出店では、私達の親友で眼鏡を掛けた顯が、笑顔でジャガバターを食べていた。会場には、明るい雰囲気が広がっていた。
「あっくん、美味しそうに食べているね」
仁が声を掛けると、顯はにっこりと笑った。
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「当然だよ、僕の好物なんだから」
顯が答えると、仁も微笑みながら頷いた。
そんな中、仁の視線が、屋台の片隅にある眼鏡店の看板に向けられた。
「経典をじっくり読むなら、眼鏡を買ったほうが良いかも知れないね」
彼女が呟くと、私は微笑みながら肯定の意を示した。
「そうだね、仁さん。眼鏡を掛けると、
お経の文字もはっきり見えるから、読むのが楽になるよ」
私が言うと、彼女は少し考えた後、決断したように頷いた。
「じゃあ、帰りに寄ってみようか」
彼女が言いながら、私達は歩き続けた。長栄山の美しい風景を満喫しながら、帰路を楽しみにしていた。
長栄山を後にして、私と天満は堤方村を通り、途中にある神社に立ち寄った。太陽神や古代の大王を祀る神社で、厳かな雰囲気が漂っていた。
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日差しは暖かく、春らしい陽気が心地良かった。私が神社に向かって歩いて行くと、薄着でミニスカートを穿いた天満が、私に近付いて来た。
「…天満さん、そんな格好で大丈夫なの?」
私が心配そうに尋ねると、彼女は軽く笑って答えた。
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「大丈夫ですよ、あたしの服装は問題無いです。それよりも、
あたし新学期になったからイメチェンしたいんですけど、
眼鏡を掛けたら似合うでしょうか?」
彼女が、真剣な表情で質問する。
天満の美しい顔立ちに、眼鏡が似合うかどうか考えるのは難しい。しかし、その質問を真剣に受け止め、彼女の希望に応えるべく私は考え込んだ。
「天満さん、君はどんな姿でも素敵だよ。
眼鏡を掛けても、きっと似合うと思うよ」
私が微笑みながら答えると、彼女も笑顔で頷いた。
「ありがとう御座います。今度の新学期は、皆を驚かせちゃいますね!
でも、その前に…今は、ここで世界平和を祈りたいです」
彼女が、嬉しそうに言う。
私達は神社で手を合わせ、世界平和を願った。天満の真剣な姿勢は、私に勇気を与えるものだった。
明治中期~昭和初期、長栄山の周辺(本門寺公園・めぐみ教会)には温泉旅館があり、めぐみ坂の料亭は田山花袋『東京近郊』や徳富蘆花『富士』にも描かれています。
大森 馬込町
馬込町の桜並木は、春の訪れを告げる華やかな場所だった。妹の七海と一緒に、私はその美しい景色を楽しむために訪れた。河川が流れ、桜の花が風に揺れる様子は、まさに春祭の雰囲気そのものだった。
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屋台では広島風お好み焼きや今川焼、クレープなどの美味しい食べ物が並び、沢山の人達が賑やかに行き交っていた。私達はまず、お好み焼きの屋台に向かい、熱々の鉄板で調理される様子を眺めながら、注文を待った。
「ななみん、何を食べようか考えてる?」
私が妹に尋ねると、七海は目を輝かせながら答えた。
「やっぱり今川焼が食べたいな、あの甘い味が堪らないんだよね!」
七海が、笑顔で答える。
私も微笑みながら頷き、屋台のほうに注文を告げた。少し待つと、熱々の今川焼が出来上がり、私達の手に渡された。ふわふわの生地に甘い餡がたっぷり詰まっていて、その香りが口の中に広がると、思わず笑顔が零れた。
「美味しいね、ななみん。春って、こんなに楽しいんだね」
私が言うと、七海もにっこりと笑って頷いた。
「そうだね! これからの季節、もっと色んな事が楽しめそうだよ。沢山のイベントが待ってるんだから、楽しみだね!」
七海が、ワクワクと話す。
私達は今川焼を楽しみながら、春の予定について話し合った。桜の花が優しく舞い散る中、新しい季節の始まりを心から楽しみながら、家族で過ごす幸せな時間を感じた。
東京 蒲田
蒲田の街は、今日も賑やかだった。春の陽気が街中に溢れ、人々が笑顔で歩き回る中、同人誌即売会の開催が待ち遠しい一日が始まった。
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私は七海と共に、会場へ向かった。テーマが「眼鏡」だという事で、多くの人が眼鏡を掛けたキャラクターの同人誌やコスプレで会場を賑わせる事だろう。七海は興奮気味に、手に持った猫耳メイドのコスプレ衣装を眺めていた。
「これ、可愛いでしょう? 眼鏡を掛けて、この衣装を着たら絶対、お兄ちゃんやお客さん達を悩殺しちゃうんだから♪」
七海が、笑顔で言う。
私は笑みを浮かべながら、七海の楽しそうな姿を見ていた。彼女はいつも元気で、どんな状況でも前向きな考え方を持っている。
「そうだね、ななみん。そのコスプレ、
きっと似合うよ。さっきから興奮してるね」
私が言うと、七海はにっこりと微笑んだ。
「うん! もう、今からワクワクしてきちゃう! お兄ちゃんも、きっと喜んでくれると思うなぁ」
七海が、ワクワクと語る。
会場に到着し、私達はブースの準備を始めた。七海は猫耳メイドの衣装を着て、眼鏡を掛け、コスプレの完成度を高めていった。私は彼女の姿を見て、彼女の努力と情熱に感心した。
「ななみん。そのコスプレ、凄く似合ってるよ!」
私が七海を褒めると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、お兄ちゃん。これできっと、沢山の人に喜んでもらえるはず!」
七海が、胸を張って言う。
そして、待ちに待ったイベントが始まった。多くの人がブースを訪れ、七海のコスプレに興味津々だった。彼女は笑顔で対応し、眼鏡を掛けた猫耳メイドとして会場を盛り上げた。
やがて、イベントは終わりを迎え、桜の花弁が舞い散る中、私達は会場を後にした。
「ななみん、今日は楽しかったね。次のイベントも、一緒に頑張ろう!」
私が七海に言うと、彼女はにっこりと頷いた。
「うん、お兄ちゃん。次も、絶対に盛り上げてみせるから!」
七海が、笑顔で言う。
蒲田のイベントが終わったが、私達の楽しい日々はこれからも続く。何かが終われば、何かが始まる。それが私達の、明るい未来だ。
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2024(令和六)年4月20日(土曜)
大森清陵会
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