復職した話

9月の頭に復職して、なんだかんだで一ヶ月が経とうとしている。体力も思考力もまだまだだけど、ぼちぼち元気にやれているんじゃなかろうか。

8月は私も彼も休職していて、彼も私も9月頭から復職した。仕事やそのほかのやらなきゃいけないことを全部お休みして、二人そろって全力で「なにもしない」をできたのはとても大きかったと思う。

彼も私も、「休んで何もできてない」「本当に復職できるのか」という不安に押しつぶされる恐怖を奥底で抱えていたからこそ、それを打ち消すように積極的に「何もしない」をした。

朝は起きておはようと言って、おはようは必ず言って、ソファで並んでカフェオレを飲んで、調子が良かったら喫茶店に行き、調子が良くなくてグズグズする時は二人で子供みたいにグズグズした。グズグズしてるうちにどちらともなくふざけ出して、ゲラゲラ笑って外に出れる時もあれば、やっぱり疲れてお昼寝をすることもあった。

どちらも子供でどちらも親で、どちらも親でどちらも子供みたいな過ごし方をした。二人で愛情と承認と安心を欲して、与え、与えられ、笑いあって、少しずつ心を充電していった気がする。

子供のふりして、冗談に交えて、わがままや本音をカジュアルに伝え合えたのも、お互いのために大事だったと思う。新たに生み出されたこのコミュニケーションが、休職を終えた今にも生きている。


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「業務軽減を要する」という診断書をひっさげて復職した私は、9月いっぱいは対人業務を免除してもらうという形で係員たちに多大なるサポートをしてもらっていたものの、今の自分が何ができるのか、何ができないのか、自分でもわからずに、「すみませんすみません。もっとできるようになりますから。」と思いながら仕事をしていた。

とても恵まれていることに、係員たちはみんな快くサポートしてくれた。だけど、私の体調不良について自分の口からうまく説明できなくて。正体不明の私に、無理だけはさせないようにと、無闇に気を遣わせてしまっているなあと感じていた。

私は自分の仕事の範囲を「もっとできるはず」と高く見積もりすぎて、できていない不安ばかりが募った。係員に気を遣わせすぎていることにも申し訳なさばかりが大きくなった。そんな中、私の担当するお客さんが問題を起こして、ちょっとしたアクシデントに対して思った以上に働かない頭にパニックになった。


そんなこんなで自爆して、復職二週間目の火・水曜日と仕事を休んでしまった。このままではマズイと思って病院に飛び込んだ。

「復職は早すぎたか?」と心配していろいろ聞いてくれる主治医に洗いざらい話をした。

「ちょっと焦りすぎているかもなあ。君は落ち着いて考えればちゃんと考えることのできる子なんだから、できないんじゃない。落ち着いてやれば大丈夫だよ。」

「病気だから症状は出る。自分を責めるのではなくて、症状だと割り切って捉えることも大事だよ。君、他の人のことは『症状のせいだなあ』ってちゃんと客観的に判断できるじゃない。今はエネルギーが足りてないから、ある程度しょうがないという一種の諦めも大事。」

「自分のやれる範囲でやれることをやれば大丈夫。焦らず。これはできるな、ということに、ひとつずつ取り組めば大丈夫だよ。」

主治医のそんなお言葉と頓服をもらって、その日の診察は終わった。


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「焦らない」「ある程度しょうがない」「できることをやる」を合言葉にしたら、落ち着いて少しずつ仕事に取り組めるようになった。

それができるようになったら、自分ができること、ちょっと今は負荷が大きいことの区別がついてきて、自分の動ける範囲が客観的に見えてきた。そうなると、なんで今まであんなに無尽蔵に「やらねば」の範囲を自ら拡大しまくっていたのだろうと気づけた。


自分が少しだけ客観視できるようになった私は、それを係員にも共有することに決めた。結論としては、「適応障害と診断されています」と係員に告白した。

オープンにするのはやっぱり悩んだけど、サポートしてもらう以上はサポーターに自分の状態を的確に伝える必要があると思ったのがひとつ。そして、私が言語化できない部分でも周りに推測してもらうために、共有できる情報を増やそうという図々しい自衛のためでもあった。

私の職場は精神疾患も扱う対人援助職場なので、病名・症状・稼働能力の範囲・主治医の意見などを伝えるのが一番みんなに現状を的確に伝えられるという特殊性も、公言を後押しした。

ちょっと押し付けがましかったかなと未だに悩む時もあるけど、オープンにしたおかげで、周りも私が何ができて、何ができないのか、どういう症状がでるのかを理解してくれて、逆に任せてくれる仕事が増えたりもした。有難い。

そんなこんなで、なんとか一ヶ月を迎えられそうだ。今日診察でそのことを話したら「病気があるないに関わらず、今後君が生きていく上で、自分のできる範囲を自分の手で守っていくことは、とても大事なスキルだと思うよ。実践できてよかったね。」と言ってもらえた。


そういえば、復職してからとても大切な友人ができた。職場の先輩で、もともと仲はよかったけど、ひょんなことをきっかけにお互い自然体でいられる関係になった。その人から毎朝「電車乗ったけど帰りたい」とラインがくる。お互いに愚痴をこぼしながら、職場でお互いに働いている姿をみて頑張ろうと思う。職場ではすれ違っても話さないけど、よかったこともいやなことも、どうでもいいことも、ぽろっと連絡しちゃえる大切な存在だ。

彼は彼で、復職したらとても相性の良い上司が増えていたようで、かなり安定して楽しそうに働いている。人の存在って大きいよなあ。


とりあえず、ぼちぼち元気ですという記録。焦らず、できることをやる。そして、人に感謝しながら生きています。

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