「選択→挑戦→結果」を繰り返す海外の小学校生活

子供は、マレーシアと日本、短期を合わせると6つの小学校に通った。
マレーシアでの小学校生活を「選択をせまられる機会が多かった」と話す。

特に高学年で小学校は、とにかくユニークだった。自由で選択の機会が特に多かった。

例えば、クラブ活動は、毎週3つまで選択できる。まったくやらないという選択肢もある。しかし昨年と同じものを繰り返すことは勧められない。毎回真剣に選ぶのである。

才能を披露する「タレント・コンテスト」

学校には毎年行われるタレント・コンテストというイベントがある。
マレーシアのインターでは非常に一般的なイベントだ。

その学校では、めいめい子供達は自分のやりたいことを舞台上で表現する。
歌や踊りを披露してもいいし、絵を描いても、手品を見せてもいい。料理を披露するのもアリだ。優勝すると数万円単位のお金がもらえる。

「アメリカン・ゴッド・タレント」の学校バージョンなのだ。

まずはこれにエントリーするかしないかを決定する
エントリーする場合、一人でやるか、友達とグループでやるか、何をするかも決める。

オーディションが2回、決勝が1回。外部の審査員の前で真剣勝負する。
決勝に残ると、今度は衣装や、当日の進行を自分で考えなくてはならない。

何をやるか。
どう見せるか?
どうやって登場するか?
衣装は何にするか?
メイクアップをするか?
音楽はどうするか?
照明はどうするか?

全部自分で決める。絵が得意な我が子は、舞台上で絵画を描くことにした。三ヶ月、毎日練習し、2回の予選を経て、衣装を選択し、舞台の配置を決め、本番を迎えた。ところが直前まで音楽の選択を忘れていた。

時間制限があるため、音楽を自分で選び、さらに編集し先生に渡す。夜中までパソコンで音楽の編集作業をしていた。絵の練習はそのぶんおろそかになった。

全て自分で決めて、実行する。
もちろん低学年は親が手伝うこともある。
私は良い学びの機会だと思い、ほぼ手を出さなかった。

決勝には全校生徒と父兄が集まり、審査員には有名ユーチューバーが呼ばれる。外部審査員を呼ぶのは、公平性のためだ。

緊張のため、うまく演技できない子もいる。
繰り返されるオーディションのプレッシャーに耐えられない子もいる。
自分がパフォーマーに向いているのかいないのかも、判断できる材料になるだろう。

子供は準備不足で苦戦した。自分は人前でのパフォーマーには向いていないと感じたそうだ。楽しめなかったらしい。
こうやって、自分で選択し、準備し、結果を引き受けるーーを訓練するのだ。

「選択の連続だった」小学校生活


「とにかく、学校では選択の連続だった」と子供は振り返る。

プリフェクトというクラス代表を決めるときもそうだった。
先生から「あなたは候補に選ばれた。受けるか? 受けないか? 決めてください」と言われる。Yesというと、見習い期間としてプリフェクトとしての仕事(朝の時間の出席取りや、読書の指導、学校の課題解決のためのミーティング)をする。そして最終的に「それであなたはやるか? やらないか?」と、また選択を迫られるのだ。

プリフェクトたちは学校のバザーで飲み物を売る。どういう飲み物を作るか、いくらで売るか、どうやって利益を出すか、これもミーティングで考えて実行する。子供たちはスプライトとオレンジジュースを混ぜた飲み物を、原価より少し高く売った。どれだけ売れたか、利益は出たか、その結果も自分たちで引き受ける。

絵のコンテスト、理数系のコンテスト、英語のスピーチ、なんども繰り返される「出ますか? 出ませんか?」という質問。すべてが選択の連続なのだ。算数オリンピックの予選は全員強制参加だったが、アジア決勝大会は二つあり、シンガポール大会にするか、香港大会にするか、もしくは全く出ないかを選択する。その間は学校を休まなくてはならない。全て自分の決断だ。息子はシンガポール大会を選び、インドやベトナムなど他国の選手に圧倒された。そして「僕は競争は楽しめない」と悟ったという。

なかには、こうしたアクティビティを「勉強に関係ないから無駄だ」という親もいるが、私はこれこそが勉強だと思う。自分でやるかやらないか決めて、挑戦して、結果を引き受けるーーその訓練をなんどもすると、自分で挑戦することが怖くなくなる。挑戦に慣れてくる上に、自分の適性がわかってくる。親が決めるのではなく、子供自身が決めるのである。

全ての学校がこんなことをしているわけではない。マレーシアでもかなりユニークな部類に入る学校だろう。そしてイベントの数と学費の高さはある程度比例する。学校によっては、ミュージカルを舞台装置からオーケストラ、衣装にいたるまで全て子供たちで用意するところもある。

子供たちが効率よく、いろいろな経験をできるように工夫されているのだ。これが、適性を探すことに繋がっていくのだと思う。


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