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カルチャー|帚木蓬生・信仰と医学 聖地ルルドをめぐる省察

こんにちは。長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンターです。
キリシタン史にかかわる映像作品、文学作品などについて、過去のものから現代まで、ランダムにご紹介していきます。

▽第1回目の記事

今回は、帚木蓬生氏の本より『信仰と医学 聖地ルルドをめぐる省察』をきっかけにして知ったことなどを書きます。



『信仰と医学 聖地ルルドをめぐる省察』帚木蓬生

この本は、精神科医でもある(現在その職からは退いています)著者の帚木蓬生氏が、フランスのルルドを訪問したうえで、その周辺の歴史を調べ概要を書きだし、さらに医学の観点から意見や考えを述べた構成になっています。

聖母出現の当事者、Bernadette Soubirousベルナデッタ・スビルーは1858年2月11日に第1回目の聖母出現を体験しました。その後、聖母出現は同年の7月16日までに18回を数えました。
ベルナデッタと聖母出現をめぐり様々な動きがあるなかで、ルルドの洞窟には次第に巡礼者が多数訪れるようになり、その数は増加するばかり。今日に至るまで、巡礼者の訪問が絶えず続いているのは世界的に知られているとおりです。

『信仰と医学 聖地ルルドをめぐる省察』には、ベルナデッタをめぐるエピソードが、時間の流れとともに詳しく綴られていて、たいへん興味深く読みました。

この本を読み終え、他にもベルナデッタについて書かれたものを読みました。そのうちの一つ、山梨県出身の志村辰弥神父の本、『ルルドの出来事』には聖母出現は19回、と書かれており、気になっていくつかの記録を並べて読んでみたりしました。

過去の記録にいくつかの相違はあるものの、このような奇跡的出来事においてはそのような点は重要ではないのかもしれません。

『信仰と医学 聖地ルルドをめぐる省察』の後半では、聖母出現後のルルドにおいて、医学研究所や国際医学評議会などが組織され、病院や宿泊といった巡礼者のための施設の成り立っていく経緯、治癒の症例や奇跡の治癒に関して綴られています。

ちなみに、帚木蓬生氏はルネ・ロランタンという司祭が聖母出現百周年事業のために書いた実録をもとにしており、志村辰弥神父はマトン神父の著作を参考にしているようでした。
気になった方は、ご自身でも色々な本を探して読んでみてください。

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さて、この出来事の当事者であるベルナデッタは、長崎のキリシタン史にも登場するある人物とのかかわりをもっています。
そのひとはパリ外国宣教会のフォルカード司教(Théodore Augustin FORCADE)です。

フォルカード司教とベルナデッタ

フォルカード司教は1864年に琉球と日本の教皇代理に任命され、長崎港に入ったものの上陸はかなわなかった人物です。1852年まで香港に滞在したのちフランスに戻り、パリ外国宣教会を退会しています。
1853年以降はグアドループ(Guadeloupe)司教、ヌヴェール司教(1861年)、エクス(Aix-en-Provence)大司教(1873年)などを務めています。

ベルナデッタとは、1863年にルルドの養育院で初めて会い、フォルカード司教はベルナデッタに聖母の出現についていくつか質問をします。ベルナデッタの返事に感心したフォルカード司教は、ヌヴェール修道女会(Sœurs de la charité de Nevers)への入会を勧め、よく考えておくようにとベルナデッタに告げました。
1866年に養育院を去りヌヴェールで修練期を過ごすベルナデッタが、持病により重篤な状態に陥ったとき、フォルカード司教は誓願を立てる許可を与えました。ベルナデッタは持ち直し、二度目の誓願式が1867年におこなわれました。

ベルナデッタとフォルカード司教のかかわりについて、筆者が出合うことのできたエピソードをご紹介しました。ちなみに、パリ外国宣教会のデータベース(Irfa)にはルルド関係の記事は載っていませんでした。後年、フォルカード司教がパリ外国宣教会を退会したことが関係しているのかもしれません。

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ベルナデッタは、ご出現の際に「(ベルナデッタを)この世では幸福を約束しないけれど、あの世では幸福であると約束する」と告げられています。
この世では、というそのお告げのとおり、多くの人びとに病の治癒などの奇跡が起こったのに対し、ベルナデッタ自身にはそれは起こりませんでした。
彼女は喘息の他にいくつかの持病をもっており、それをこじらせて35歳で亡くなりました。

『信仰と医学 聖地ルルドをめぐる省察』を読んだあと、聖母がベルナデッタに告げた「約束」は、果たされたのだろうか、といった思いが浮かんできました。

日本で最初のルルドの模型

五島列島の井持浦いもちうら教会には、1899年にペルー神父(Albert Charles Arsene PÉLU)によってつくられた、日本で最初のルルドの洞窟(模型)があります。
ルルドの模型は世界の各地にあると思いますが、ここのルルドには、祈る姿をしたベルナデッタの像がおかれていなかったと思います。個人的に、その点がとても気に入っています。

夏を迎え、五島列島は帰省やレジャーの目的地として人気な季節です。井持浦教会のある福江島に行く際には、ぜひ訪問してみてください。

カトリック教会では2月11日をルルドの聖母の記念日として祝います。この日は、日本の建国記念日ですね。


▽教会訪問事前連絡はこちら(※井持浦教会は事前連絡不要)


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