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カルチャー|「SHOGUN 将軍」に描かれるキリスト教布教活動の一側面

こんにちは。長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンターです。
キリシタン史にかかわる映像作品、文学作品などについて、過去のものから現代まで、ランダムにご紹介していきます。

ディズニープラスで配信されたドラマ『SHOGUN 将軍』はご視聴になりましたか? ジェームズ・クラベルの小説「SHOGUN」をドラマ化したもので、ディズニー傘下のFXプロダクションによって製作された作品です。真田広之が主演・プロデューサーを務めたハリウッド戦国作品として、国内外を問わず大きな話題を呼んでいますね。

2024年2月27日に配信が開始され、4月23日にシーズン最終回を迎えたばかりです(全10話)。

原作のストーリーのとおり、このドラマは「史実を踏まえたフィクション」です。しかしながら、当時の日本がヨーロッパの列強(ポルトガル、スペイン、オランダ)にとってどのような存在だったのかが示されており、歴史を理解するうえでとても参考になると思います。


 イエズス会は、その設立以前(1540年設立)にポルトガル王からアフリカでの布教活動を依頼されており、ポルトガルがイエズス会の支援国となります。イエズス会はポルトガル商人の東アジア交易の拠点だったマカオに布教の拠点を据えます。支援国の交易拠点であるマカオを中心に、中国や日本などとの国交を成立させ、同時に布教事業をおこなうという図式になっているんですね。

 一方、スペイン系托鉢修道会のドミニコ会とフランシスコ会はスペイン王国に支援を受けており、その拠点をフィリピンのマニラにおきました。マニラはもともと中国貿易の拠点としてスペイン人によって整備された町でした。
 中国にスペイン領ラテン・アメリカからもたらされる銀を持ち込み、中国からは絹を購入してヨーロッパで販売するという貿易が、1571年には成立していたといいます。
 フィリピンにはスペイン人の進出とともにアウグスチノ会、フランシスコ会、ドミニコ会、イエズス会などが来島しており、そこから中国への入国を試みていました。

 ポルトガル・マカオを拠点とするイエズス会と、フィリピン・マニラを経て中国で布教事業を進めるドミニコ会、フランシスコ会などの間に対立があったともされますが、どちらもカトリックです。
 ポルトガルとスペインは、支配領域に関する取り決めをしており、カトリック教会はその仕組みに深くかかわっていましたが、当時の日本人はそのような情報は持っていませんでした。

 『SHOGUN 将軍』では、難破したオランダ船のイギリス人船乗りジョン・ブラックソーンがその支配領域のことを領主・吉井虎永に説明するシーンがあります。プロテスタントの商人ブラックソーンは、イエズス会(カトリック)がマカオやマニラでやっている行為を暴いて、自国の優位を得ようとします。

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 ハリウッドがつくった戦国ドラマ、『SHOGUN 将軍』はビジュアルが豪華にこだわりぬかれています。そういった「豪華さ」を、俳優陣(にかかる費用)ばかりでなくセットや衣装、船やその他の背景に盛り込んであって、とても見ごたえがあります。緊張感を持たせた映像づくりがしてあり、さすがハリウッド! です。こういった作品を日本がつくれなかったことは残念ですね。

 歴史や地域の価値を伝えるつもりが、見かけの派手さなどの軽薄な部分に流れていってしまわないように、気がけたいものです。

 ドラマ『SHOGUN 将軍』はシーズン2実現とのニュースも報じられましたね。原作のストーリーは終了してしまっているけれど、どうなるのか。今からたのしみです。



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