『教員だった僕がフィンランドで見つけた、「今」を生きるために大切な5つのこと』
「みなさん、〝今〟を生きていますか?」
中学校教員だった著者の德留宏紀さんは、日本を飛び出してフィンランドの高校で1年間、先生としてさまざまな出会いと体験をしてきました。
本書は、その旅のなかで德留さんが見つけた〝今〟を生きるために大切なことを、「チャレンジ・学び・リスペクト・関係を築く・自分軸」の5つのキーワードを軸にお伝えします。
「未来のことは誰にもわからない。だからこそ今を大事にしないと」
フィンランドで德留さんが出会った人々が口にしていたこの言葉。
あなたは「どうありたいか」「どう生きたいか」――?
そんな気づきを得られる本書への旅の一端をご紹介します。
はじめに
私は、2022年3月まで大阪府南部、泉佐野市立新池中学校で8年間教員として勤めていました。朝6時に家を出発し、夜10時に帰宅するという毎日で、土日も部活動があり、本当に休みなく働いていました。
そんななか、さらなる学びと刺激を求めて退職し、2023年1月に日本を飛び出して海を渡りました。向かった先はフィンランド。1年間、現地の公立高校であるヘルシンキ国際高校(Helsingin kielilukio)に勤務する傍ら、フィンランド人のご家庭で、ホームステイをして過ごしてきました。
私とフィンランドの初めての出会いは、2019年夏、「世界の教育を見てみたい!」という思いのもと、1週間の教育視察でフィンランドを訪れたときのことです。その滞在最終日、視察ツアーを共に過ごした仲間とバルト海を眺めながら、ビール片手に語り合いました。大きな刺激をもらった1週間を振り返り、「この先の人生、チャレンジに溢れるものにしていきたい。いつかまた、フィンランドに戻ってきて、ここで生活をしたい。もっともっと世界を舞台に活躍したい!」と、誓ったのでした。
この誓いから3年半後、私は再びフィンランドへ向かいました。このとき、夢をもったからこそ、その夢が叶ったのだと確信しています。
フィンランドでの暮らしのなかで、フィンランド人の友人たちがこぞって口にしていた言葉に、「未来のことは誰にもわからない。だからこそ今を大事にしないと」というものがあります。これは、1年のほとんどの時間を寒い冬のなかで過ごすフィンランドだからこそのマインドであり、常々自分と向き合い、哲学的に物事を捉えている証なのかもしれません。
日本から遠く離れたフィンランドの地で学んだことは、本当にたくさんあり、これからの私の人生においても大切にしていきたいものばかりでした。未来は誰にもわからないからこそ、明るい未来を信じ、今を全力で生きていくほかないのです。
さて、あなたは、この本にどんなことを期待されていますか?
タイトルを見て、「教員である自分もチャレンジする勇気がほしい」はたまた、「〝今〟を生きるためのヒントがほしい」「フィンランドでの生活を知りたい」「とにかくフィンランドが好き」などなど、いろんな思いをお持ちなのではないかと思います。
大きな希望と覚悟を胸に過ごしたフィンランドでの1年間は、私にとって本当にかけがえのない大切な時間となりました。素敵なご縁に心を躍らせ、周りの方々の優しさに包まれた日々は一生の宝物です。
本書では、この365日の旅を、自分のありのままの言葉で綴っていきます。つまり、「フィンランドの教育ってすごいでしょ」という紹介本でもなければ、「これさえやれば、明日からあなたは劇的に変わります!」という方法論を述べるものでもありません。フィンランドの教育現場だけにとどまらず、日常生活や人とのかかわりのなかで見つけた〝今〟を生きるために大切なことを、5つのキーワードを軸に、血の通ったエピソードを交えながらお伝えしていきます。
教員だった僕が書いた本ではありますが、教育現場だけでなく、何かにチャレンジしたい人、今の人生をもっともっと豊かにしたいと思っている人、フィンランドに限らず海外で生活してみたい人、そんな方々に向けても、言葉を紡いでいます。
さあ、準備はいいですか?
パスポートは必要ありません。この本を読み終えたときに、あなたの心が一歩前に進んでいることを願っています。
では、あなたにとって大切な気づきを得る旅に一緒に出かけましょう!
あなたは、ここ数年を振り返って何か「チャレンジした!」と思えるようなことはありますか?
私は、この5年間で本当にたくさんのことにチャレンジしてきたと実感しています。そのなかでも、教員を辞めてフィンランドへ飛び立ったことは最も大きなチャレンジです。
私にとってのチャレンジとは、どんな未来が待っているのかわからないことや、いまだかつて経験したことのないことに対して、不安や希望を抱きながらも、楽しみながら行動していくことです。さらにはチャレンジしているときは、自分自身が謙虚でいられるのではないかとも考えています。
1章では、「チャレンジ」をキーワードにお話ししています。
昨今日本では、キャリアブレイクや学び直し(アンラーン)の重要性が語られたり、社会人になってからも学び続けられる制度を整えている企業がでてきたりと、さまざまなアプローチで人々の学びに対する感度が高まりつつあるのではないかと感じています。
フィンランドでは、教育にほとんどお金がかからないということを背景に、いつでも学び直しができる制度が整っていたり、自分の学習の理解度をベースとして卒業のタイミングを選択できたりするなど、生涯を通じた個人の学びにフォーカスされています。また、図書館やコワーキングスペースが充実していて、人々の生活のすぐ近くに学びの場所が提供されているのも大きな特徴といえます。
そもそも私たちは生まれたときから今まで、さまざまなことを体験し、そこから多くを学んできたことは誰もが納得できると思います。それは、日常生活のなかでの学び、学校生活のなかでの学び、人間関係のなかでの学びと、本当に多岐にわたっているものです。
2章では、「学び」について幅広くとらえ、さまざまな角度からお話ししています。
3章では、「リスペクト」についてお話ししています。「リスペクト」は、日本語で「尊敬」「尊重」「敬意」などと訳されますが、あなたは「リスペクト」と聞いてどのような言葉をイメージしますか? 私自身、文脈に応じてどの意味も表すことが可能であると捉えているので、大くくりに「リスペクト」という言葉を使っているというのが正直なところです。
3章で登場するそれぞれのエピソードにおいて、「尊重」のニュアンスもあれば、「敬意」のニュアンスもあります。あなたがこの後読み進めるそれぞれのエピソードを通して、「リスペクト」の意味を感じていってもらえればうれしいです。
日本で教員をしていた頃から、この「リスペクト」とは深い関係がありました。最後に担任をしたクラスで、唯一生徒の前で掲げたクラスの大前提こそが、「リスペクト」だったのです。好き・嫌い、性格が合う・合わないは置いておいて、ただただクラスの仲間一人ひとりの存在を認め合い、丁寧な関わりをしようという「尊重」に近いものとして共有していました。
フィンランドを語るうえでも、「リスペクト」というキーワードは欠かせません。ぜひあなたの日常生活と照らし合わせながら読み進めてもらえればと思います。
もし、あなたが「明日から言葉も知らない、知り合いもいない国で生活していく」ことになったら、どんな感情を抱きますか? 誰かと仲良くなれる自信がないし、やっていけるか不安という方や、まあなんとかなるでしょと楽観的に捉えられる方、さまざまだと思います。
私の場合は、どちらかというと後者で、「とにかく飛び込んで行っちゃえ」という感じでした。ただ、この異国の地で、同僚や生徒と良好な関係を築いていったストーリーは、フィンランドだからというより、日本での生活においても参考になるのではないかと思っています。
4章では、フィンランド生活のなかでご縁があった方々と、いかに関係性を築いていったかを中心にお話ししています。本当に素敵な方々に恵まれたことは、胸を張って語れます。そんな方々とのストーリーをもとに、人間関係づくりのヒントを得ていただければ嬉しいです。
あなたは今、胸を張って「自分の人生を生きている」と言うことができますか?
かつて中学校教員時代、生徒たちに「自分の人生を自分の意思で歩み進めてほしい」と伝えていたとおり、私自身が自分の意思で歩みを進めたのがフィンランドでのこの1年間でした。最後の章では、「自分軸」をキーワードにお話ししていきたいと思います。
ここで言う「自分軸」とは、自己中心的に自分だけがよければいいという考え方や、自分の力だけで今があるというような自分本位で他者への感謝を欠いた状態を意味するのではありません。他人のせいにしないことや、他人の人生を生きているかのような生き方をしない、いわば自分の人生の主人公は自分であり、自分で自分の人生のストーリーを描いていくということを指しています。
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木村泰子先生、税所さんをお招きしたオンラインイベント第2弾です。本書をベースに、今の教育に大切なことを深掘りしています。こちらもぜひご覧ください!
【本書の目次】
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