見出し画像

新聞整理のオキテ②~見出しとは

 日々、みなさんのお手元に届く紙面。毎日、別の記事が各紙面を飾ることで、それぞれの面でニュースの格付け判断が行われ、紙面編集のルールに沿い、見出しの工夫や紙面のアレンジなどが施されて、その日一度きりの紙面が作られていきます。この欄では、紙面編集にまつわる約束事や禁じ手などを通じて、読者のみなさんに新聞紙面に親しんでもらいたいと思っています。

第1回はこちら


見出しとは何ぞや

 前回は、京都新聞1面の構成を題材に、紙面の基本的なデザインをご説明しました。分かりやすかったかどうか不安ではありますが、今回も引き続きお付き合いください。

 今回は、見出しについてご紹介したいと思います。見出しってなんでしょう。「新聞整理の研究」(日本新聞協会編)には「ニュースの価値を的確簡潔に判断し、読者に伝えるため」のものだとあります。また、京都新聞の社内向けテキスト「新聞整理の整理」には、「文字通り、読むものではなく見るもの」だとして、長々と読ませては見出しの意味がないといいます。

 筆者の若いころ、古株のデスクから叩き込まれたのは「主見出し8本、脇見出し10本」というフレーズでした。要は「一番伝えたいニュースは8文字で、2番手や補足などは10文字以内で言い切れ」ということです。つまり、われわれ整理記者は、世の中の森羅万象は計18文字で説明できねばならなかったのです。

ニュースを切り取る

 下の画像をご覧ください。京都新聞の整理記者向けテキスト「新聞整理の整理」に記載されている見出しの例となります。右端を除く3つの見出しは、右側の見出しの活字が最も大きく、左側に並んだ見出しがそれよりも少し小さく配されています。これが先ほどご説明した「主見出し」「脇見出し」となります。主見出しはすべて7~8文字、脇見出しが10文字で構成されていることがお分かりいただけると思います。

見出しあれこれ

 左から2番目の「自民総裁安部氏」は上の方にあるので「頭見出し」、右から2番目の「中京・近江屋」は下の方にあるので「尻見出し」と言います。なお、一番右の見出しは活字の大きな「高杉晋作氏死去」が主見出しとなり、主見出しを説明する内容をその前に配置しています。これは「肩見出し」といいます。

 前稿のレイアウト編でも「アタマ、肩、ハラ」という表現を用いましたが、見出しにおいても「頭、肩、尻」などといった表し方をします。同じ用語でもレイアウトの話なのか見出しの話なのかを理解できていないと、ごちゃごちゃになりそうですね。記者たちが「当たり前」と思っているルールも、ほかの人に説明するとなると難しいものです。

 余談ですが、右から2つ目の見出しについては「被害者が呼び捨て」とか「その後の捜査で、壬生浪士よりも容疑の濃厚な人物が京都見廻組にいることが分かった」など、突っ込みどころはあるのですが、「見出しの一例」ということでご勘弁ください。

「全部漢字平仮名皆無」はあかん

 さて、見出しはこのように「なるべく字数を削ってなるべく要素を盛り込む」というスキルが必要となるもので、例えば助詞などは極力、削るべきだと教わってきました。上記の「龍馬、切られ死亡」も「龍馬が切られ死亡」という意味ですが、「が」は無くても意味が通じてしまいますよね。ほかにも「内閣不信任案採決へ あす、与党側否決の方針」という見出しであれば「へ」はいりません。その後ろに「あす」とあるので、見出しそのものが未来形であることが自明だからです。

 同じように「日本の新聞なのだから、漢字だけになるのはあかん」という禁じ手があります。一文字でもよいからひらがなやカタカナを盛り込んだらセーフというルールです。なんなら、「10」みたいな数字でも許してくれるデスクもいたりします。この漢字ばかりの見出しを「戒名見出し」と呼びます。漢字のみで構成される戒名になぞらえているのですね。

とか色々と言ってますけど、それも今や昔

 今回は見出しの初歩といいますか、主見出しや脇見出し、見出しの字数あたりを説明してきました。が、他社の事情は分かりませんが、京都新聞においては見出しの字数などについてはここ数年で、大きく様変わりをしました。ニュースの核となるキーワードを、なるべく取りこぼさずに言い切る。そのためには多少、文字数が多くなってもかまわないという考え方です。

前回も使用した紙面の例

 上の図をご覧ください。前回の紙面構成でも活用した画像ですが、この「肩」の位置にある「旅先納税」の記事。一番大きな「主見出し」が、12文字プラスかぎかっこと「10文字」では言いきれていません。そうした字数制限をある程度無視をしてでも、伝えるべきことは伝えていこうというのが現在の考え方と捉えていただいて構わないと思います。

 あ、こんな記事を見つけましたので、最後にご紹介を。京都と神戸で近いはずなのに、新聞整理用語の差があるという実例です。

 さてさて、次回も見出し編を続けたいと思います。なるべくわかりやすい内容になればいいなと願いつつ。ではでは。


京都新聞note編集部