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新聞整理のオキテ~はじめに

第1回 そもそも「整理」ってなんだ?


 日々、読者の皆さんのお手元に届く京都新聞の紙面。本紙では、編集局ニュース編集部という部署が紙面づくりを担っています。仕事内容を端的に説明するなら①ニュースの価値判断②読者にわかりやすい見出し③読みやすい紙面ーを念頭に、その日の紙面として編集するということでしょうか。

 こうした作業を新聞業界では「整理」と呼び、紙面を編集することは「組む」と言います(名称の意味は後述します)。さて、そうした「整理」作業の中で、実は1枚の紙面を「組む」過程には、さまざまなルールや禁じ手も存在します。新聞記者の仕事の中で、あまり脚光のあたらない「整理」。あえて光をあてることで、もしかしたら新聞の楽しみ方が増えるかもしれません。

 この欄では、そうした思いを胸に「新編 新聞整理の研究」(日本新聞協会編)と、京都新聞の整理記者指南書「新聞整理の整理」をテキストに、なるべく分かりやすく解説していきたいと思います。


「新編 新聞整理の研究」(日本新聞協会編)

何を「整理」しているの?

 そもそも「整理」って何なのでしょう。記者向けテキストには、1面や外信面、スポーツ面や社会面といった「面の特性にあった記事を各面に振り分け」、ニュースのポイントを押さえた「見出しで読者に誤解を与えることなく」、わかりやすい「レイアウトですぐに目当ての記事にたどり着けること」の一連の作業が「整理」と呼ぶとあります。

 よく言われるのが、整理部門は外勤部門の手を離れた原稿の「最初の読者」であり「紙面の最終責任者」であるということです。原稿を読み、ニュースの重要性を判断し、見出しの大きさでそのニュースの格付けを行います。また、面の編集者がひねりを利かせた見出しや、凝ったレイアウトで読者の関心を呼ぶこともあります。それらすべてを「整理」と称して良いかと思います。

 「整理」あるいは「整理部」「整理記者」といった名称は、全国紙・地方紙問わず全国の新聞社で一律に理解されている名称です。同じ仕事をしているのに「ニュース編集部」「編集センター」「メディア編集部」といったように、各社で異なる名前がついていたりするのですが、全国の新聞社が集まる会議では部署名を言わずに「〇〇新聞の整理の××です」と自己紹介をすれば、通じます。

 「整理」という名称が初めて出てくる最も古いものは1893(明治26)年に編集内勤部門の役割を明確にした際に表記されたのが最初であると、「朝日新聞社史 明治編」に記されているそうです。そして大正年間には、各社の編集部門が「整理」という名称で統一化されていったようです。

 以上が、新聞における「整理」という仕事の内容となります。それでは、次からは具体的な紙面の作り方の説明をしていこうと思います。

新聞編集の仕組みって?

 下の画像をご覧ください。2022年10月7日付けの京都新聞朝刊1面です。

2022年10月7日付の京都新聞1面(画像は加工しています)

 この日のラインナップとしては、数日前に弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対して日韓が非難したところ、北朝鮮が再び弾道ミサイルを発射したというニュースや、旅先で「ふるさと納税」をすると、その場で電子ギフトがもらえる取り組みを京都府北部の自治体が始めるというニュース、大谷翔平選手が米大リーグ初の投打での規定に到達したというものや、国の規定の無い「国葬」のあり方を超党派で議論すると首相が述べたことなどが並んでいます。

 この日の紙面編集を検討する会議では、この日に読者に伝えたい最も強いニュースは、北朝鮮のミサイル発射であろうという方向性となり、紙面編集がスタートしました。1面のトップの位置に、北朝鮮ミサイルの記事が配置されています。なお、朝刊の最終締め切りまでの間に、もっと大きなニュースや事件事故が発生した場合は当然、1面トップがそちらにさし変わることになります。

 2番手はトップ記事の横に置かれることが通例です。この日の紙面の場合ですと、京都府北部の「旅先納税」スタートがそれにあたります。「旅先納税」は全国初の試みでもあり、地元のニュースをしっかりと伝えるという地方紙の基本的使命に則っても、2番手にふさわしいと判断したようです。

 ちなみに「旅先納税」の記事はこちらになります.


アタマ、肩、ハラ

 ニュースの2番手記事は、そのまま「2番手」「トップ横」などと呼んだりもしますが、トップ記事は価値づけが一番高くなるので、人体に例えて「アタマ(頭)」と呼ばれるのに対して、2番手は「アタマ」の横にあるので「肩」と呼ばれたりもします。

 「アタマ」「肩」に対して、3番手にあたるニュースは紙面の真ん中あたり、つまり人体でいうと「おなか」位置に配置されることが多いです。ですので、この場所に置かれる記事は「ハラ」と呼ばれます。この日の紙面では、大谷翔平選手の記事ということになります。紙面の真ん中の目立つ位置ですので、1面を飾るにふさわしい写真映えする記事が配置されることが
多いのも特徴です。

 これまでの説明を、図で示すと下のようになります。

1面の作りを簡単に説明してみました


 ちなみに「国葬ルール」のニュースの位置については「腰」とか「足」などと呼んだりすることはありません。まぁ「4番手」でいいと思われます。

 以上が、新聞編集における基本原則ともいえるニュースの配置の説明となります。こうしたニュースの配置を適切な形で組み合わせていくことが、新聞編集の第一歩となります。そのため、「記事同士を組み合わせて紙面を編集する」という意味から、新聞編集作業を「組む」と呼ぶのです。

 いかがでしょうか。なるべく分かりやすい説明を心掛けたつもりですが、そうなっていなければ申し訳ありません。それでもこの稿が、皆さんに新聞を手に取ってもらえる一助ともなれば、日々の新聞編集に携わる我々の大きな喜びとなります。それでは、また次回。


京都新聞note編集部