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シャイニング S・キング著/文春文庫
2020年、未知のウイルスが世界中の人々を不安に陥れました。まだウイルスの全容が知れない中、学校や幼稚園は休校になり、街角からは人の姿が消え、私たちの「ステイホーム」が始まりました。そんなころ、見直されたのが読書でした。読んだことのないジャンルに挑戦、家族と一緒に読書など、普段と違う時間が作れるかも。そのお手伝いとして、京都新聞社の記者がそれぞれ思いを込めた一冊を紙面で紹介しました。あの頃の空気感も含め、note読者の皆さんにも紹介します。
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巣ごもりホラーの金字塔
雪に閉ざされた山頂のホテル。冬季休業期間中の管理人として雇われた男と妻、そして息子に圧倒的な恐怖が襲いかかる。家族そろっての自由な外出をまだまだ我慢している時だからこそ、一読をお勧めしたい「巣ごもりホラー」の金字塔だ。
巨匠スタンリー・キューブリックによる映画も傑作だが、その衝撃的かつ繊細な映像美に対し、原作では雪のようにしんしんと恐怖が積もっていく。初めて読んだのは30年も前だろうか。ページをめくれないほど恐ろしいはずなのに、ぐんぐんと先を読み進めたい。そんな読書体験は、これっきりだ。
#家族の絆を考える
今回を機に、再読してみた。改めて気づかされるのは作品に通底する、家族の絆の素晴らしさだ。破滅に突き進んだ物語は、最後に救いをもたらす。愛する家族との絆があれば、厳しい冬はやがて終わり、暖かな春が訪れるはずだ。
佐藤知幸