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記憶を辿る24

『 出家 』

Rに問われて以降、本物を追い求め彷徨い続ける日は続いていた。
当時、ジュリアナ系譜を感じるヤンキーではない高校生パーティで人気だったのがロックンロール。続いて2トーンレーベルのスペシャルズやマッドネスといったバンドが奏でるスカだった。
後に歌謡曲やヒップホップ、レゲエにハウスといった音楽もタイムテーブルに入り込んでくるのだが、私が行き始めた頃は、これらにパンクが加わった程度だった。
セックスピストルズやクラッシュ、ラモーンズなどといったパンクがパーティで流れだすと、男達は、フロアで「モッシュ」と呼ばれる殴り合うようなダンス? を始め、全てのものを蹴散らしていた。
間違った情報は錯綜を極め、モッシュ紛いが始まるとフロアから女性陣は一掃され、攻撃的な男子のみになる無秩序な状態を作り出す。

モッシュを利用して、他校の連中を蹴散らすことに邁進していた頃、パンクが好きなんだと感じたRが「オイパンって知ってる?」と聞いてきた。
ハードな音楽に詳しかったRの兄貴の影響もあって、パンクから派生したOiパンクの事を聞いてきたのだ。

何でもそのジャンルの人達はスキンズと呼ばれ、フーリガンの元祖とも呼ばれるイギリス労働者階級の悪名高き存在なのだという。いま思えば何故に”悪名高き”だけを抽出してしまったのか分からない。
これこそが若気の至りというものなのだろう。

本家である彼らのイデオロギーや信仰なども考えず、パンクとスキンズというワードだけに惹かれてしまった。即日で美松映劇横にあった階段で頭を剃り、私の求める本物への出家修行が始まると同時に、甘酸っぱい思い出で埋め尽くされるはずの高校生活という扉が音を立てて閉じた瞬間であった。

株式会社 山城
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