「マダム」と「おばはん」

先々月に行ったドイツでのこと。

空港のスタッフから、ボディチェックを受ける私に「マダ~ム」と呼びかけられた。
「マダム」=「自分」ということに気づくまで、10秒ほど経過。なぜなら、私は生まれて以来、一度たりとも「マダム」なんて呼ばれたことがなかったからだ。

日本で「マダム」と聞くと、なんだか高貴で上品な奥様のイメージがある。(ときに「バーのマダム」なんて使い方もあるけど)
でも欧米では、呼びかけに使われる一般的な言い方だ。

にもかかわらず「マダム」という単語は、私に全然合わず、なんかしっくりこない。しかも私の耳には「マ・ダ・ム」ではなく、「マ~ム」と「ダ」にアクセントがあり、そのあとに「~」の長音が続くように聞こえる。(言っている人は、こんな複雑な思いは微塵もないことだろう・・・)

ドイツで買い物した店でも、利用した駅でも、呼びかけは皆「マ~ム」。・・・どうも慣れない。ここは日本ではないのだし、別に気にしなければいい。だが私は職業柄、気になる言葉について考えずにはいられないのだ。

・・・そうだ。「マダ~ム」を、なじみある別の言葉にすればいいのでは?

じゃ・・・「おばはん」

これが個人的に一番、落ち着く。

関西で生まれ育った私にとって、「おばはん」は身近で便利な言葉だ。自分に対してでなく、他の女性にも使える。

例えば、「長時間歩いたし、疲れたわあ。体力なくなって、私もおばはんになったわ。」とか、「あそこにいるおばはんの服、きれいやわ。よう似合ったはる。(よく似合っている)」など、使い方自由。そして、「おばはん」自体には、否定的なニュアンスはあまりなく、より親しみが込められた言葉だ。(と、自分では思っている。)

関西人は、折に触れ、よく用いているのではないだろうか。あくまで、中年以上の女性を指し、「マダム」ほど呼びかけには使いにくいという差はあるが。

「マダム」「おばはん」

筋金入りの「おばはん」の私は、ドイツで「マダ~ム」と話しかけられ、即座に「マダム」になった。つまりドイツでは、私の見かけは「マダム」。でも心の中は、コテコテの「おばはん」なのだ。

これまで、私の中には「おばはん」しか存在していなかったのに、突然新しい「マダム」がやって来た。ちょっと複雑で慣れないけど、やっぱり「マダム」はかっこいい!

どうやら「マダム」は私の中で「おばはん」と、がっちり友好の手をつないだようだ。この「マダム」「おばはん」は、これから先、何をもたらしてくれるのだろう?ちょっとばかり、楽しみだったりする。







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