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食べきれない苦しさは、シェアしよう?

住野よる『麦本三歩の好きなもの』

図書館勤務20代女子、麦本三歩の何気ない日常を描いた連作短編集。
三歩の「好きなもの」にまつわる、基本的に平和で穏やかな日々のお話です。
(時には仕事で怒られたり、本人は必死にその日常を生きていると思いますが。)

●印象に残った一文

次は、二割をわたしにちょうだい。(短編「麦本三歩は君が好き」より)

三歩が友達と食事をしている場面。
何でも食べてもいいけど、二割を残す「八割ダイエット」をしているという友達に対し、三歩は「今度から最初に残す二割をちょうだい」と話す。
その後、物語は予想していなかった方向に進んでいきます。
物語の最後に、三歩が友達に送ったメールが、この一文。

いま目の前にいる人は、もしかしたら何か悩みを抱えているかもしれない。
その人が抱える本当の苦しみやつらさは、本人にしか分からない。
だから全てを理解しようとしたり、受け止めようとしたりすることは、正直難しいと思う。
具体的な解決策を出せればいいけれど、そうもいかない事もある。
ただ、その人のために出来ることとすれば、話を聞いたり、どこかへ一緒に気分転換に出かけたり。
そうしたら、二割くらいは、共有できるかもしれない。
二割を共有できる人が何人かいれば、更にもう少し楽になるかもしれない。
ひとりで食べきれない苦しみは、無理に食べずに、みんなで分け合って、完食。

変わり映えしないような何気ない日常であっても、嫌いなもののことじゃなく、好きなものの話をしていたい。
本書の最後の方でそんな話が出てきますが、わたしもそう思います。

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