たぶん10年分の疲れが出た。
久しぶりに風邪をひき、3日ほど寝込んでいた。といっても症状としては喉が痛い程度で、熱も微熱の中で上がったり下がったりするぐらい。しかし、それでもコロナの疑いは無きにしも非ず、何よりダルいのでここ数日はずっと寝ていた。
職場で風邪が流行っているのでそれを貰ったのは間違いないが、それ以前に『ピーチボーイズ』の公演と、パンクシーの展示が終わって緊張の糸が切れたのかも知れない。ライブや公演も控えていて気を張る状況は続いているため、気を抜いた意識はなかったが、蓄積していた疲れが風邪の呼び水になったというところだろう。というか、ここ10年ぐらい、ずっと疲れているのである。
最近、頻尿が酷い。コロナ以後から、おしっこに行く回数が増えた。
以前は始まる前に行っておけば大丈夫だったのが、バイト中でも、演劇の練習中でも、舞台の本番中でも、絶対に途中で行きたくなる。それでも前は休憩まで我慢することも出来たのだが、最近だと間違いなく中座しないといけない。今回の風で症状が悪化していて、6時間の勤務中で5回ぐらいトイレに行ってたりする。この酷さが続けば泌尿器科にも行かないといけないと思っている。
原因は明白で交感神経と副交感神経のバランスが崩れて自律神経が参っちゃっているのだろう。要はストレスである。
ストレスの原因に慢性的な寝不足があると思う。
もう10年以上、5時半起きのバイトをやっている。朝型なのでその生活スタイルに問題はないのだが、問題なのは早起きすると分かっているのに早く寝ようとせずに何となくダラダラと起きていようとすることだ。
睡眠をしっかり取らないとダメな体質なのは自覚があったので、昔はちゃんと寝ていた。体力にものをいわせて、寝ないで色んなことをやってもの凄い結果を出す体力魔人が周りにいても、すごいけどそんなの無ー理。すやすや。と自分のペースで寝ていた。若い時の方が自分のペースを保てていた気がする。
ところが、学生も卒業し、いっぱしの役者として活動するようになると、うっすらとした不安からか、自分のマイペースの感じではなく体力魔人のような動きが出来ないと成功できないんじゃないか、という疑念がぼんやり浮かぶようになった。体質は変えられないものという理性は働いているし、そもそも体質が違うので、体力にかまけ寝ないで色んなことをやっつける、といったムーブは出来ないものの、予定が逼迫している時は睡眠は削るものだ、みたいな考えが脳内に台頭してくるようになってしまった。
したいこととしなくてはいけないことの葛藤もあった。
したいこととしなくてはいけないことでは優先順位は当然、後者の方が高い。しかし、しなくてはいけないことが増えていくと、それだけに時間が取られてしまってしたいことをやる時間が無くなってしまう。
元々はこういうことがしたいけど、これを達成するにはこういうことが出来ないといけないから、これをするためにはこれをしないといけないんだな、という考えの元にしなくてはいけないことは生まれるので、しなくてはいけないこともしたいことの一部ではあった。しかし、そうやってしたいことのためにしなくてはいけないことを増やしていくと、どんどん時間が足りなくなっていく。したいことの中にはしなくてはいけないこととは別に、本当にただしたいことも含まれているが、しなくてはいけないことを先にやらなくちゃいけないので、いつまで経ってもただしたいことをやることが出来ない。たまにしたいことを優先させると、しなくてはいけないことを放ったらかしにしている罪悪感が生まれる。といって、しなくてはいけないことを消化するばかりでも、どんどん消耗していく気持ちになる。そうすると、しなくてはいけないことをやる気が削げていくのだが、その時にしたいことをやるとそれはそれで罪悪感に襲われるので、しなくてはいけないこととしたいことのどちらにも手を付けられず、気だけが急いている宙ぶらりんな自分が生まれる。
そういう時はその状態から逃れたくて、何となく寝てしまうのである。体力回復=しなくてはいけないことなので、睡眠は行動の選択肢として取りやすいのである。思考しないで済むので気が楽にもなるし。こうして体力回復のためという建前で他のすることを脇に置いてとりあえず寝る、ということを繰り返してると、何をするかの葛藤が生まれた時に逃避のように睡眠に走るようになってしまう。もちろん建前とかではなく、疲れて寝るのは当然悪いことでも何でもないのだが、しなくてはいけないことを何も片付けてないという新たな罪悪感のせいで、睡眠=逃避という意識がついてしまい、いっぱい寝ることが何となく悪いことのように思えてきてしまう。そのせいで夜の寝るべき時間で寝ないで、何か一つでもしなくてはいけないことを消化しようと足掻いて寝る時間が遅くなり、翌日を寝不足で過ごすようになる。寝不足になると物事の判断が鈍くなるので、したいこととしなくてはいけないことの葛藤は強くなる。そうなると寝不足もあるので、逃避寝(とうひね)にまた走ってしまい、しないといけないことが残ってるからと変な時間に作業して、また寝不足になり…という悪循環に陥っていく。
ここ10年、そんなことを繰り返している気がする。
交換神経と副交感神経のバランスが崩れている、ということはめっちゃ意訳すると心も身体もどっちも疲れている、ということでもあると思う。
今回は風邪として肉体に症状が出たが、心も疲弊している自覚がある。
腹筋さんのパワーマイムWSでは半期に一度、成績表を個人に渡してくれて、項目別にそれぞれ評価してくれるのだが、この前もらった成績表には、もっと心を開いてくださいと書かれていた。
最終公演で出演者・スタッフから貰った寄せ書きに、個人的には全然普通に接しているつもりだったスタッフの方から、裏で会うとスッとするのは何故?いつか打ち解けたいと書いてあった。
自分としては心を開いているつもりなのに、心を開いていないと言われることが多々ある。思うに、心を開くドアが自分の場合、多すぎるのだと思う。人に心を開く時のドアのイメージ、他の人は1枚扉があってその中に心があるような感じなのだろうか。自分の場合、50枚ぐらい扉があって外側に近いところは簡単に開けられるが、中心に近づけば近づく程、開け方が難しくなっていって、自分でもオープンに必要な条件がわからない扉が幾つもあるように思える。しかも開けるのは難しいのに閉じるのは一瞬なので、疲れている時ほど扉が勝手に何枚もオートロックがかかってしまう。
風邪の症状が出る数日前、パワーマイムWSに参加したり、歌の練習を自分でやったりしていたが、アイデアが全然出てこなかったし、音が全然取ることが出来なかった。心が閉じていると表現の翼が全然生えてこないで地に堕ちるばかりだった。
今回の風邪で10年分の蓄積された疲れが出た気がする。
もう心も身体も疲れちゃっているのだ。
体力魔人になって無理を通して通りを蹴っ飛ばそうとしていたが、絶対に自分に合っているやり方ではない。如何せん、身近に体力魔人の成功者が多いので、それの真似をしようとしてしまっていたが、土台無理な話だったのだ。体力魔人のようにガハハと声がでかい訳でもなく、声はすごーく細くて小さいのに仕事はめっちゃ早くて丁寧なキノコの精霊のような大学の同級生がいたことを最近、よく思い出す。自分も彼の真似をしてひっそりと苔むした岩の精霊のように生きていきたい。
しなくてはいけないことも本来はしたいことだったので、認識を取り戻す必要がある。したいことだけしとけば良い、という心持ちでいれば心は回復するはずだ。
したいけど眠いから無ー理。すやすや。すっきりしてやる。というサイクルを作らないと身体も壊れてしまうだろう。しばらく睡眠時間8時間を意識して生活したいと思う。シンプルに付き合いが悪くなる可能性があります。
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