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『バウルを探して<完全版>』 川内有緒

「バウルを探しにきた」と言うと、バングラデシュの人々は語り始める。そしてそれは次の展開へ、人へと繋がっていく。「バウル」とは何なのか。私は「バウル」を全く知らないままこの本を買った。川内さんの本が面白いのを知っているから。余計な情報を入れずに「バウル」を探し始めたい人はスクロールはやめてこのブラウザを閉じること。すぐに本屋に行くか、オンライン書店に注文を入れて。もう少しだけヒントが欲しいなら、先へどうぞ。

「バウル」はバングラデシュやインドの西ベンガルに暮らす吟遊詩人たち。独自の哲学を持ち、修行をする。吟遊詩人だから、どこに行けば会えるのかもわからない。偽物も、歌わないバウルがいるという噂もある。また、歌詞も謎めいている。例えば「知らない鳥」の歌詞はこうだ。

鳥籠の中、見知らぬ鳥はどうやって往き来する?
つかまえたら「心の枷」を その足にはめたのに。
八つの部屋は九つの扉で鎖され…(略)

当時の世相では言いづらいことを表現したり、また修行の内容として秘密になっていたりと、暗喩がちりばめられているという。

こうした謎に包まれた「バウル」を探すことにしたのが、パリの国連機関を辞めて帰国していた川内さんとカメラマンの中川彰さん、そして通訳のアラムさんだ。

どこに行けば会えるのか?「子供を作らない」というバウルの掟ではバウルは滅びてしまうのでは?バウルの仕組みは?バウルの歌詞、哲学が意味するものとは?を3人が、それぞれの人生を振り返りながら探っていく。3人と一緒にバングラデシュを旅をしていると、そしていつのまにか、自分の内側を探っているWonderな本。

この本を読んでいて、ある人が思い浮かぶ。私にインド哲学をかみ砕いて話してくれた人。コロナ前にネパールに行ったもののロックアウトで日本になかなか帰ってこれなかったあの人。絶対にこの本が好きだ。もし読んでいても、彼の元には旅人が多く訪れるから、必ず必要な人の手に渡るだろう。あの人に、この本を送ろう。そして今、私は届くかわからないが見知らぬ人に向けて誰に届くかもわからないこの文章を綴っている。気が付けば、私も「バウル」を語りだし、伝える人になっている。

177.『バウルを探して<完全版>』 川内有緒

3度目の発行というこの本への想いや背景はこちらを。

●川内さんの本
2019年Myベスト本『空をゆく巨人』

2020年読んだ本(更新中)
2020年読んだマンガ(更新中)
2019年読んだ本:77冊
2019年読んだマンガ:86冊
2018年読んだ本:77冊
2018年読んだマンガ:158冊

#バウルを探して #川内有緒 #バウル #バングラデシュ #読書   #読書感想文


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