いつかティファニー

『いつかティファニーで朝食を』14巻 マキヒロチ

“涙袋”って言い得て妙だな、と14巻のそれぞれのストーリーごとに涙の水位が、頭蓋骨と顔の皮の間で上がっていくのがわかった。涙が溜まるのは、この“涙袋”ってところだ。というくらいに、それぞれの登場人物が自分の道を見つけていくのがわかって本当に嬉しかった。マンガサイト『アル』のレビューに書いているけれど、私はもう彼女たちが他人には思えない。

連載当初28歳だった主人公たちのお話は7年を経てついに連載完結。私は陰ながら、一緒に一喜一憂して、読んでいる方までえぐられるような気持ちになるリアルな出来事に出くわして奮闘する彼女たちを応援してきた。そんな主人公の麻里ちゃんの仕事と恋は?外国で暮らすことになったのりちゃんはその後どうするのか。麻里ちゃんよかったねーーー!と、そうくるか、という最後の選択もとってもリアルだった。(ネタバレしたくないので、詳細は書かない)先日、1卷を読み返していて、びっくりしたのはのりちゃんの変化。恋愛しかしてなくて、女から嫌われるタイプの彼女が、よくぞここまで。本当にいい女になった。表紙の麻里ちゃんも本当にいい顔してる。

7年の連載で、初期メンバーのうち家庭を持ち落ち着いた二人は一旦前線から退いて、麻里ちゃんとのりちゃんが残り、そこにきみちゃんとさちという新しいメンバーが加わる。どうしても「お話」になりやすいのは、決まっていない、迷っている、アップダウンの激しいような人たち。いわば「0を1にする」ステージ。今回の最終巻で、そんな彼女たちも自分の道を決める。今後彼女たちのトピックになる出来事は、どうやって結婚生活や仕事をブラッシュアップしていくか、といった「1を10、もしくは100」にしていくようなステージ。漫画として話にしていくなら、ちょっと切り口が変わっていくだろう。

「0→1」ステージって、先が見えなくて、安定が羨ましくてしんどいけれど、新しいことが手当たり次第できて変化のある時代。「1→10/100」の時代は地味で、でも着実に積み上がっていく時代。きっとここに到達すると「0→1」時代が懐かしくなるんだろう。新しもの好きで、決めたくなくていろんなことをやり散らかした、彼女たちより4歳年上の私もふと思う。そろそろ「1」から積み上げることもやりたいな、と。

麻里ちゃんたちと一緒に同じ時代を過ごせてよかった。会えなくなるかと思うと、本当に寂しい。いつか年を重ねた彼女たちと再会したい。まだ『いつかティファニーで朝食を』は実現していないし。マキヒロチ先生、ぜひお願いします。

★10/14に完結記念イベントに行ってきました。近日中にレポートをアップします!

302 『いつかティファニーで朝食を』14巻 マキヒロチ

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