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『炉辺の風おと』 梨木香歩

私が信頼を置いている(読者として一方的に、だが)梨木香歩さんの最近のエッセイ。毎日新聞の週次連載だったらしい。

八ヶ岳に購った(「あがなう」という言葉を初めて使った。とても綺麗な言葉だ)山小屋についてのエピソード、コロナ禍における世の中の状況や政治、そしてお父さんの看取り。

梨木さんといえば、植物と鳥。本エッセイでも、「キクイタダキ」が彼のお気に入りの「ヤエガワカンバ」の枝にエサを運ぶ、といった表現がところどころにある。この分野に知見を持つ人が読んだらさぞかし美しい景色を、梨木さんの意図を、解像度高く読み取れるのではないかといつも思う。私はこのカタカナたちから実物を想起できないので、上級者たちの世界を思う。

聡明で、自然と繋がり、地に足がついているように感じさせる文章。上っ面や、何かへの阿り(「おもねり」という漢字も初めて使った)とは程遠い実直なさまに、深い山や森で深呼吸をして、我に帰るような気持ちになる。

『炉辺の風おと』梨木香歩

#炉辺の風おと #梨木香歩 #エッセイ #本 #読書感想文

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