見出し画像

『すこやかな服』 マール コウサカ

私よりも全然若いこの人の活躍には嫉妬が出てこなくて、ただ「いいなあ、素敵だなあ、こんな若者がいてくれてよかった」と感じる。そして彼の服を好きで、買って、にこにこ来ている人たちも、なんとなくかわいく思えて、そして何よりもセンスがいいんだろうな(ファッションセンスだけでなく)と思う。

「実店舗がなく、職人さんとうまく協力しながら、服を作っている人気のブランドがある」ということを知ったのは何がきっかけだったか。ブランド名は「foufou(フーフー)」、SNSを活用し服を自らの言葉で紹介し、各地で試着会をひらくという独自の方法を使ったデザイナーの名前はマール コウサカさんという男性だ。名前だけでなく、エレガントなヘアスタイルや丸眼鏡の容貌もユニークだったので頭に残り、それから彼のSNSnoteをフォローするようになった。彼らのビジネスを客観的に把握するのであれば東洋経済ONLINEの「アパレル苦境下で200%伸びたブランドの正体」という記事がわかりやすい。

4mの布地を使った重い服が発売されたり、カラーバリエーションが豊富というわけでもない、そしてセールも広告もしない「健康的な消費」を掲げたアパレルブランドがどのように立ち上がったのか、成長してきたのか、そして今後はどんなことを目論んでいるのかが書かれた本。

マールさんはもともと洋服好きで大学時代はカードの限度額いっぱいまで服を買うほどだったという。一転して装飾を排した無印良品で働くようになり、文化服装学院の夜間部に通い始める。そして昼間は生産管理の仕事をしながらアパレル業界を知っていく。

そうした彼による選択の積み重ね、プロセスがすんなり理解できるように書かれている。天才ばかりがいる文化服装学院で、自分はどうしたらいいいのか。天才には見えないものを見つけること、続けていれば必ず何かに繋がるから「頑張らなくても続けることができること」を見つけようとすること。そんな彼が服を売り始め、会社を興して「健康的な消費」と「ギュンカワ」を備える服をたくさん生み出していく。

彼は頭がきれるし、視野も広い。頭を使えば使った分だけ動けなくなってしまったり、たくさんのものが見えてしまうと足が止まったりする人もいるけれど、彼は行動が伴っているからストーリーはグングン進む。そして彼は論理的であるけれど、好きな服を着たときのトキメキを知っていて、そして服に携わる人たちが大好きなけっこう熱い人だ。だからこの本は上っ面だけの会社パンフレットやコンセプトブックでもないし、ビジネスモデルを分析したりSNSマーケティングのTipsを紹介するビジネスhow to本にはとどまらない。

この本『すこやかな服』の著者印税は全額、職人育成アトリエの運営にあてられるそう。彼の掲げる「健康的な消費のために」は服一枚だけではなくて、お客さんや、工場、職人さんたちとの関係といった幅広い要素と繋がっている。「すこやか」なものをみていると自分まで「すこやか」な気分になってくる。私も「すこやかな」輪に居たい。

188.『すこやかな服』 マール コウサカ

楽天

2020年読んだ本(更新中)
2020年読んだマンガ(更新中)
2019年読んだ本:77冊
2019年読んだマンガ:86冊
2018年読んだ本:77冊
2018年読んだマンガ:158冊

#foufou #すこやかな服 #マールコウサカ #アパレル #本 #読書感想文

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?