『両手にトカレフ』 ブレイディみかこ
「この人の気持ち、わかる」と思ったら急激に惹かれていく。それが違う国の、100年前の人のことでも。
主人公はイギリスに住む14歳のミアで、母と弟と暮らしている。母の男は何度も変わる。もらったスマートフォンがあるものの、通信費を払えないので使えない。身長が伸びたけれど制服を買い替えられないのでスカートの丈は短くなる。生活保護費は母親のドラッグに消え、ミヤは弟との暮らしを必死で守っている。
そんなミヤがたまたま出会ったのは、カネコフミコの自伝。フミコの母親も何度も男を変え子供を守ることができない。フミコは住処を変え、虐待を受け、食うやくわずで日々暮らしている。(その後のフミコについてはWikipediaで読んだだけだが、すごそうだ)
自分が他の子供がしていない苦労をしていて、苦しくて、救いを見つけては裏切られる。自分とは他の世界があることはわかっていても、子供には抜け出すすべがない。
書いていてやるせない気持ちになってしまう。この本の主人公のミヤは、あることから光を見出す。ミヤが夢中になる様子、伸びゆく気配が感じられるので意外と疾走感と共に読める。表紙にある、手を握る2人の少女に幸あれ、と心から思う。
『両手にトカレフ』 ブレイディみかこ
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