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#22 世界樹に希望を託して / Hopeful Yggdrasil



I. 着想: ガッツリとファンタジーなものを作ろうと

今回の曲に関してはかなり具体的なイメージがある.が,以前にも話したように,このnoteで「解説」と称してつらつら書き綴っていることはあくまで私の「想定解」であって,決してそれをリスナーないし読者諸君に押し付ける意図があって公開しているものではない.

我々が生きる世界線とは全く違う世界線.科学が常識で魔術が迷信である我々とは異なり,高度な理論体系を持つ魔術を使い,逆に科学を妄想ないし都市伝説等の類と一蹴する,そんな種族である.

世界の中心には彼らの天体の隅々まで根を張り,細いながらも堅牢で青々とした葉が生えた枝を四方八方に伸ばす巨木があり,その巨木の存在こそがその天体の魔力を制御する弁のような役割を担っている.当然ながら人々が神よりも深く深く信仰する対象である.

しかしある日を境にその巨木の葉は朽ちて殆ど落ちてしまい,地に眠る魔力は暴走を始め,魔物の凶暴化,異常気象,魔力中毒による健康被害,生態系の崩壊など,多方面に様々な悪影響を及ぼし始めた.諸悪の根源たる魔王を倒すために王の勅命で組織された討伐部隊はその務めを見事果たし,無事に世界樹の修復を成し遂げた.

母国に帰った彼らは,再び青々とした葉をつけた世界樹を目にすると共に,民衆たちの万雷の拍手を受けるのだ.凱旋を祝する列は街道の遥か彼方まで続いていて,彼らははにかみながら凱旋パレードを挙行するのである.

……とまあ自分でもよくこんなつらつらと設定が出てきたなと思うほどなのだが,要はパレードなのである.したがってマーチ風味である.こういうひたすら元気な2拍子っぽい曲は弾くのが本当に楽しい.今まで自分で作った中で一番弾いてて楽しいのはヘラクレスだったのだが,今回は完全にこれが塗り替えられることとなった.

後述するように,若干バグパイプみを欲しいところがあるので開始のキーは変ロ長調に設定した.


II. 解説

冒頭[A].ここがバグパイプイメージ.打音は目安で,弾く場合は好きにやってもらって構わない.左手はずっと完全五度なのだが,完全5度の響きは若干クセがあるため,奇数小節目の内声に入れている3度の音はしっかり鳴らさないと少々据わりが悪い.一応シャッフル記号はここから書いてあるのだが,ここは八分音符をハネさせなくてもいいかなとは思う.

[B].3連符に気を取られてテンポが前のめりにならぬよう留意されたい.ここからはしっかりシャッフルを大事に.三連符が多いが故に,八分音符がしっかり跳ねていないとかなり違和感が出る.29小節目で展開形のB♭/Dを使うのがポイントで,変化を付けて味わいにアクセントをつけるだけでなく,直前の小節からノーマルB♭が連続することを避けられるので,一石二鳥のコードである.

[C]の前半に関しては特に言うことはない.後半が問題で,楽譜上は小さめで書いてあるこいつらは音を小さく/弱くしろということではなく,軽くやってくれという意図である.

前半で旋律の骨格は示してあるのでこの装飾を何も考えずにやってもさして問題になるわけではないのだが,メリハリがなくなってしまうため注意したい.あくまで飾りなので抜いてもいいし,自分のセンスで独自の飾りを入れても良いだろう.

[D]はマーチ風が少し変わって一旦停止.どうしても左手が重いフレーズなので右手の八分音符も重たくなりがちなのだが,ここがベチャっては台無しである.ここの57小節目でノンダイアトニックのVI♭(この場合はG♭)を経由してからV(F)に行くのだが,別にこのVl♭がIV(E♭)でも音楽的には問題ないわけで,わざわざこのコードを引っ張り出してきたのは,Fの前にFsus4を入れて[E]への動機付けを強める意図がある.どういうわけかは知らないし私の気のせいかもしれないが,IV > Vsus4 > VよりもVI♭ > (VII♭) > Vsus4 > Vの方がしっくりくるのだ.

[E]からマーチ再び.金管イメージなので旋律はシンプルに.このモチーフの再登場時に色々遊ぶので取り敢えずここでは素朴な味付けで.73小節目から一時的に3/4拍子に立ち寄るが,テンポが崩れないように注意されたい.79小節の「ファーファファーソファミ♭レドシ♭」は完全にスコットランド行進曲のアレである.完全にバグパイプ.

[F]はまた[B]と同じなのだが,尺が半分になっているのと,最後の2小節の左手が異なる.音域が上に行くので思わず弱くしたくなるところだが,ここでは強弱を変えない.

[G]は[C]の前半と後半のキメラのような感じで,後半のような合いの手は入りつつも主旋律の音域やコーラスがない点は前半なのである.

[H]は[D]の変種で,やはり一旦ここで行進が止まる.若干ジャズっぽい感じで軽やかに.意外と[B]とか[F]以上にここでテンポが走りやすい.101小節目からは[D]と同じような展開かと思いきや,実はコードが異なっていて,[D]ではVl♭(G♭)から直接Fsus4に行ったが,[H]ではVll♭(B♭)を経由してからFsus4に行く.更にsus4の上昇のモチーフも1オク上だ.何れも前からの変化をつけるため.

[I]は宣言通り遊ぶ.まずは左手.頭拍を消して裏拍から入る.この裏拍の打音は結構派手にやっていい.続いて111小節目からベースラインが上昇し,113小節目で頂点に達したかと思えば再び打音ブリリィン.ここが楽しいんだ.

[K]は冒頭[A]のモチーフだが,バグパイプの[A]とは対照的に,こちらの[K]は金管楽器,更に言えばコルネットとかフリューゲルホルンのイメージである.トランペットだとちょっと鋭いかな.[L]は[B], [F]の変種で,間に挟まる八分音符が全部3連符に化けている.運指をしっかり考えないと死ぬ.こういう経過音の中で非和声音を拾うの何か楽しいよね.

[M]はまたもや3拍子なので[A]か……と思いきや[E], [I]の変種である.木管楽器という漠然としたイメージはあるが具体的にどれというところまでは考えていない.[N]からは半音上に転調してロ長調になる.やっていることは今までの復習で,[N] = [E],[O] = [I],[Q] ≒ [B] である.最後のところは先ほどと違って音域が上がると共に弱くする点に注意.最後の音は思いっきり弾こう.


III. 楽譜&音源配布

ここに書いてあるルールを守ってくれれば使途は問わない.

《楽譜ファイル (PDF)》

《高音質音源ファイル》
WAV形式のCD音質 (44.1kHz/16bit, 1411.2kbps)

《並音質音源ファイル》
MP3形式のストリーミング音質 (320kbps)


IV. あとがき: 2年

※惚気?

今の彼女と付き合い出してから今日で2年になった.正直2年も経ってないだろ嘘だろというのが正直な感想なのだが,確かに今の相手と付き合い始めたのは就活を始めた頃で,そして私は就活を終え社会人をやっているのだから,確かに2年は経っているわけである.

今日に関してはいつも通りプレゼントを贈り合ってちょっと高い焼肉を食べにいくぐらいで,いつも毎月やってるようなことと変わらないのだが,流石に「年」という大きい節目なので何かやろうと思い立ち,今月上旬,少し早めに二人でウエディングドレスを着て写真を撮ってきた.気が早いことこの上ないのだが,所謂フォトウェディングである.

家にクソデカコルクボードを設置してからというもの,二人で写真を撮るのに地味にハマっている二人なのだが,それが高じてこういうことになった.彼女の友達の写真部の子が色々お膳立てしてくれてくれた.

さて惚気はこの辺にしておいて.

私にとって「人付き合いが2年を超えた」という事実はかなり大きい出来事である.

2年を超えて定期的に連絡を取るくらいの繋がりがある人間と言えば彼女と彼女とお馴染みの佐川ぐらいで,他はかなりの確率で関係が消滅する可能性が高い.

私が割と気が強い感じな癖して実際は打たれ弱く,沸点が著しく低く,更には内向的というのが原因である.よくあるパターンは,

①私がうっかり余計なことを言って嫌われる
②相手が(些細ながら)我慢ならないことを言って私が嫌う
③勝手に私がヘラって少しでも気に食わないことがあるやつとの関係を切る
④進学,クラス替え,転校,就職などの生活環境の変化で離れた友達に自分から声をかけて関係を維持しようと出来ない
⑤関わるのに飽きてその関係を投げ出す

などである.特に①②⑤が多い.そして,関係が切れるのが,どこまで粘っても精々2年以内なのである.前の推しも会ってから2年経つ頃に①を理由に逃げられ,推しではないものの以前よく入り浸っていた界隈は②を原因に絶縁し,やはりそれがその界隈に根をおろしてから2年ぐらいの時期だった.

無論,今の彼女とは同棲までしているため簡単に関係を切るような真似が出来ないという面もあるのだろうが,そもそもこの関係に飽きを感じたためしもなく,普段我慢ならないようなこを言われても許せたり,逆に私の失言を大抵そのまま受け流したりと,奇跡的な相性の良さで成り立っているのだろうなと思う.稀有な人間であることは間違いないので大切にしていきたいところだ.

……あれ,やっぱり惚気?


V. クレジット

作曲・執筆: kyoka (@kyoka20011218)
浄書・動画編集・彼女: Noah
見出し画像: フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)


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