見出し画像

小学生が「鉄棒の達人」になる方法を元教師が解説!!8割の子どもがプロに変わる!!【前編】


「鉄棒が上手になりたい!!」「逆上がりだけじゃなくて、もっといろいろな技に挑戦したい!」

そのような方々に「鉄棒の達人」になれる方法をお伝えします。

筆者は元小学校教師です。ある年の3年生32人に鉄棒を教えた結果、半年間で次のように習得率が変化しました。

〈後方片膝掛け回転〉
1人(3.1%) → 28人(+84.4%)
〈後方両膝掛け回転〉
0人(0%) → 15人(+46.8%)
〈前方片膝掛け回転〉
0人(0%) → 14人(+40.6%)
〈前方両膝掛け回転〉
0人(0%) → 5人(+28.1%)
〈だるま前転〉 
0人(0%) → 19人(+59.3%)
〈だるま後転〉    
0人(0%) → 9人(+28.1%)
〈後方支持回転〉   
1人(3.1%) → 7人(+18.7%)
〈前方支持回転〉   
0人(0%) → 5人(+15.6%)
〈こうもり降り下り〉 
0人(0%) → 19人(+59.3%)
〈ホワイトこうもり〉 
0人(0%) → 13人(+40.6%)
〈こうもり大車輪〉  
0人(0%) → 4人(+12.5%)
〈こうもり振り上がり〉
0人(0%) → 3人(+9.3%)

子どもたちの映像を見せることができたら1番よいのですが、個人情報の関係で見せることができないのが残念です。ですので、ネット上にある動画を参照します。

この動画で行われている技が「こうもり大車輪×2」→「ホワイトこうもり(降りる技)」です。筆者の学級では、これ以上のコンボを決めている子どもが複数いました。

「こうもり振り上がり(こうもりから手を使わずに振り上がる技)」→「地獄回り×2(後方両膝掛け回転)」→「こうもり大車輪×3」→「ホワイトこうもり」といった具合にです。

しかも、子どもなので、この動画の動きの2倍速ぐらいの速さで回転していました。(このお方は、これはこれですごいのですが笑)

しかも、「逆上がりしかできない」レベルだった子どもが半年間で動画のようなレベルまで到達しています。また、学級全体でも連続回転が5回以上できる子どもたちが70%を超えていました。

この記事では、鉄棒の技とその系統の解説。加えて、膝掛け上がり、後方片膝掛け回転、こうもり、だるま回りといった基礎技から、地獄回り、こうもり振り降り、もうもり大車輪といった発展技までの教え方やコツを解説していきます。

鉄棒は思っている以上に、他の運動にも波及し、よい効果を生み出します。これを実践すれば、クラスのヒーロー、ヒロインになれること間違いなしです。


鉄棒の技一覧と系統

冒頭で説明した3年生。半年間鉄棒を教えたところ、「逆上がり」しかできなかった程度の女の子は、次のような技を会得しました。

①膝掛上がり
②後方片膝掛け回転
③前方片膝掛け回転
④天国回り
⑤地獄回り
⑥だるま前転
⑦だるま後転
⑧空中逆上がり
⑨空中前回り
⑩プロペラ
⑪こうもり振り降り
⑫ホワイトこうもり
⑬こうもり大車輪
⑭こうもり振り上がり

半年間で一気にこれだけの技を会得したのです。鉄棒のプロと呼べるレベルです。この子どもは、学年が上がったときに、「グライダー」「飛行機大回転」もできるようになっていました。

鉄棒にはざっと言えば50種類以上の技があります。技の一覧とその系統をまとめまたものが以下の図です。ボリュームがありすぎるため、上がり技と、一部の回転技を省略してあります。


鉄棒の技一覧(上がり技+一部省略)

鉄棒は大きく分けると「上がり技」と「下がり技」に分かれます。そして、下がり技は、「前に回る技」と「後ろに回る技」に分かれるのです。

大きな技のまとまりをあげれば、「だるま技」「空中前・後ろ回り技」「こうもり系統技」「膝掛回転技」「足裏回転技」「大車輪」といった具合でしょうか。

ここで注目したいのが「逆上がり」です。

逆上がりは、よく見ると単発の技であり、その後に発展技がつながっていかないことが分かります。鉄棒で最もよく練習する技であるはずなのに、発展性がないのです。

だからこそ、鉄棒の面白さを見いだせなかったり、難しさをより感じてしまうのだと思います。鉄棒の魅力を存分に味わえ、且つ、どんどん発展する技であるならば、鉄棒を大好きになるはずです。

特に筆者がおススメするのが、「膝掛回転系統の技」「こうもり系統の技」です。この2つを中心に、その教え方とコツを解説していきます。

上達の柱① 効果的な練習スケジュールと下準備


上達の柱は全部で4本あるのですが、まずは、「どれぐらいの頻度で行うのか」というスケジュールと、必要な物を整えることが重要です。順番に説明していきます。

成果が出るスケジュールと練習頻度

結論からいえば、「1日5分程度を毎日のように行う」ことが大切です。正しい練習方法と補助をこのスケジューリングで行えば、圧倒的なスピードで成長していきます。

鉄棒は、やりすぎると体を痛めます。だからこそ、1日、3~5分程度に抑えるのです。(子どもが自主的にやりたいと言っているならば、やらせてもよいと思います。)大人が補助として付き添うのは、限定した時間にした方が、集中力とモチベーションが長期的に持続します。

また、勉強にも、睡眠が大切なように、運動にも睡眠が極めて大きな意味を持つと、筆者は考えています。睡眠を経て、人の記憶は整理されます。それは運動も同じです。

例えば、60kmの速度でボールを投げるピッチャーがいたとします。睡眠を取り、毎日60kmを投げることをこなしていくと、「球速60kmが当たり前」という境地になります。

そして、「次は70kmを目標にしよう」と決め、練習をしていきます。すると、毎日の練習で体や技術は進化しているので、球速70kmを投げることができるようになるのです。脳のイメージに身体が追いつきます。

やがて「70kmが当たり前」となり、80km、90km・・・と徐々に伸び続けていきます。このように、脳は人の記憶をアップデートしていき、脳のイメージに身体の動きが追いついてくるのです。

鉄棒にも、これと同じことがいえます。だからこそ、45分の練習を10日間よりも、5分の練習を90日間の方が、圧倒的な伸び率を誇ることになるのです。

筆者は、この毎日のように少しずつ行うことを、休み時間に行っていました。強制ではなく、やりたい人から集中的に行っていったのです。

必要な準備物

当然ながら、鉄棒は必要です。そして、可能であれば2~3種類の高さがある鉄棒がよいでしょう。一般的に子どもの胸あたりの高さがやりやすいと思われますが、逆にこうもり系統の技は、高い方がよかったりします。

加えて、補助パッドも必需品です。慣れない内は、身体を直接鉄棒に接触させると、こすれて皮がめくれたり、血まめになったりします。なので、クッションとなる補助パッドを使用するのです。

おススメは、「エバニュー鉄棒補助パッドLEKD363」です。赤・青・黄と色を選べ、厚みも丁度よく、長さも腰周辺を全て保護できる幅になっています。膝掛け系統の技、だるま系統の技、空中技、こうもり系統の技、全てをカバーできる優れものです。

そして、こうもり系統にチャレンジするのであれば、鉄棒下にクッションがあると、安心して取り組むことができます。鉄棒専用マットは購入可能ですが、かなり高額です。

ですので、筆者は、寝具のマットレスを購入し、代用していました。それでも充分、「安心感を生み出す」という支援の目的を果たすことができます。

上達の柱② スモールステップを正しく組み立てる


「運動能力が向上する体育の授業にはこれがある」と言われている2つの要素があります。その1つが、「スモールステップ」です。

「地獄回り」「こうもり大車輪」のような大技にいきなり挑戦するのではなく、まずできそうな簡単な技から取り組み、少しずつ、少しずつ自信をつけていくのです。

そのスモールステップを正しく組み立てる「目」が必要です。そのためには、鉄棒の全ての系統技を整理し、技同士のつながりを押さえておかなくてはいけません。

ここからは、筆者が教えてきたスモールステップを技ごとに紹介していきます。教え方のコツや補助の方法は後半にまとめて解説をしていくので、最後まで読んでいってくださいね。

後方片膝掛け回転・地獄回りまでのスモールステップ

筆者は「地獄回り」までを以下のようなスモールステップで組み立てていました。

①前回り
②豚の丸焼き
③足掛け回り
④ひざ掛け上がり
⑤後方片膝掛け回転
⑥後方片膝掛け回転5回連続
⑦後方両膝掛け回転(地獄回り)
⑧後方両膝掛け回転(地獄回り)5回連続

まずは、足を地面から離して回転する感覚を「前回り」で覚えます。そして、「豚の丸焼き」で、頭を逆さにする感覚を、「足掛け回り」で、膝を鉄棒にかける動きと安全な着地方法を会得させていきます。

そこまでが下準備。そこからは、地獄回りに直接的に関係する技にチャレンジしていくのです。

まずは、膝掛け上がり。この膝掛上がりで、片膝を掛けながらブランコのように遠心力を使ってこぐ感覚を身に付けさせるのです。鉄棒に乗った状態から後ろに倒れるのは、恐怖感を伴います。しかし、膝掛上がりができるようになってしまえば、上るルートの逆をたどればよいだけなので、恐怖感は圧倒的に少なくなります。

(ここからは、技のイメージが伝わりやすいようにYOUTUBE上の動画を張り付けていますが、教え方にフォーカスしたものでなく、あくまで技のイメージのために載せているということをご理解ください。)

さらに言えば、膝掛上がりは完全にできなくても構いません。顔が鉄棒の上に上がる程度までこぐことができるようになれば十分後方片膝掛け回転はできます。

感覚を養うことができてきたら、後方片膝掛け回転の練習スタート。できるようになるまでは、必ず補助をつけてやります。そうやって、毎日5分程度でよいので、少しずつやっていると、恐怖感が少なくなり、回れる角度がどんどん大きくなっていきます。

そして、ふとした瞬間にできる時があるのです。こうなると、恐怖感よりも「できた喜び」が大きくなり、子どもの成長が加速していきます。ここまでで大体2~3週間程度です。

やがて当たり前のように後方片膝掛け回転ができるようになると、連続行うことに補助付きでチャレンジします。連続の感覚を掴むまでは多少の時間がかかりますが、一旦連続感覚を会得すると、他の技の習得スピードがグッと上がるようになるのです。

後方片膝掛け回転が5回連続でできるようになればしめたもの。発展技の地獄回りへのチャレンジです。後方片膝掛け回転が5回連続でできた人で、地獄回りができなかった人はいません。人によっては、あっという間に地獄回りができるようになるでしょう。

ここまでくれば、あっという間に、クラスのヒーロー、ヒロインとなり、休み時間には他クラスの子どもが鉄棒を見に来るようになります。

こうもり振り降り・こうもり大車輪までのスモールステップ

次はこうもり系統の技です。これは見た目も最高にかっこよく、できたら病みつきなるほど繰り返す、子どもたちの大好きな技です。

こうもり系統の最高レベルである「こうもり振り上がり」までは以下のスモールステップで組み立てます。

①前回り
②豚の丸焼き
③足抜き回り
④こうもり
⑤こうもり振り
⑥こうもり振り降り
⑦ホワイトこうもり
⑧こうもり大車輪
⑨こうもり大車輪3回連続
⑩こうもり振り上がり

①前回り~③足抜き回りまでは、どの鉄棒技にも必要になる技であるので、膝掛け系統と同じように習得させます。④から、いよいよこうもり系統のスモールステップです。

まずは、「こうもり」。これは、逆さまになって、膝で鉄棒を「ロック」し、ぶら下がる技です。最初は両手を持ちながらぶら下がる、次に片手を離す、最後は両手を離すというステップを踏むとよいでしょう。

こうもりを習得したら、そのままの姿勢でブランコをします。膝で鉄棒をロックしながら、ふり幅を大きくしていくのです。これが、鉄棒を真下にして80度~100度の角度になると、こうもり振り降りが成功します。上達方法は次の章で伝えていきます。

「こうもり振り降り」は、こうもり振りが80度~100度の段階で、ロックしていた足を外すことによって完成します。ブランコがしっかりできていれば、かなり楽にできるはずです。この技ができると子どもは大喜びをして、何度もやりたがります。

そして、ここからが上級編です。ホワイトこうもり。別名、ウルトラこうもり振り降りとも言います。まずは、鉄棒におしりをつけた状態で座ります。そのまま後ろに下がり、膝を鉄棒にロック、両手を離し、勢いをつけて後ろに回ります。そこからは、こうもり振り降りと同じ動きで、最後にロックを外して着地、です。

この技は必ず補助がいります。大人がいるところで必ず練習しましょう。(補助の方法は次の章で解説します。)

そして、こうもり大車輪。これは6年生でもできる子どもは0%でしょう。体操教室という特殊な習い事をしていない限りは、習得は困難なはずです。しかし、然るべき手順で練習すれば、驚くほど短期間で習得できます。

ホワイトこうもりを会得している状態で、今度は、最後に膝のロックを外さずに一周回り切ります。これは、恐怖感があるので、いきなり一周はできません。ですので、必ず、途中で体を受け止めるための補助が必要です。そして、段々と回る角度が大きくなってきた時点で、ある日突然一周を回るようになります。

ここまで来たら、観客が集まり始めます。クラスのヒーロー・ヒロイン間違いなしです。

そして、最後は「こうもり振り上がり」。これは、こうもりの状態でブランコをし、その遠心力を使って最後は思い切り上に振り上がります。

こうもり大車輪が3~5回連続でできるほど、遠心力を存分にコントロールできているほどのレベルであるならば、無理なく、自然と達成できるでしょう。

長くなり過ぎるので、続きは後編でお伝えします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?