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独立開業は夢ではなく、生活するための手段だった。

今日は開業に至った経緯、というかタイトルの通り開業は私にとって当たり前のことだったことについて話してみようと思う。

勝手な想像だけど、お店をされているほとんどの方がお店を持つことを夢や目標にしてきたのではないでしょうか。
十代後半から二十歳を過ぎたくらいに夢を持って飲食業界の門を叩き、十分とは言えない程の給料で朝から晩まで馬車馬のように働く。お店によっては先輩に罵倒される毎日が待っていることも。飲食に限った話ではないと思うけど、飲食はわかりやすい縦社会なうえに必ずと言っていい程どこの現場にも絶対権力者がいるなかなか大変な業界である。今は時代的にそんなことはないのだろうけど、一昔前はこれが当たり前だった。それでも「夢」を叶えるために過酷な労働環境や理不尽な状況を整理整頓しながら修行、仕事を続けていき、三十を過ぎた頃に自分の城を構えるようになるのが一般的なのではないでしょうか。みんながみんなそうではないと思うけど、私の周りでお店をやっている人の昔話は決まってこうだ(笑)
余談になるがコーヒーは他の業種と違い、修行から開業までの期間が短いように感じる。コックやパティシエ、ブーランジェにバーテンダーの世界では当たり前のように10年近くの時間を修行に費やすがコーヒーは5年も経たないうちに開業をし、新しいお店もすぐにできる。誤解があるといけないが、その理由の一つに他の業種に比べると設備投資がそこまでかからないことや、技術習得までにそれほど時間がかからないことが考えられる。エスプレッソマシンや焙煎機は立派な値段がするが、内装費が低コストで済むことも関係しているのではないでしょうか。

話を戻す。
私は実家がスナックで「お店」というものが身近だったせいか、独立開業は夢ではなく必然だった。子供の頃はパティシエに憧れていたので、最初は菓子屋で修行して「お菓子屋」をやるつもりでいた。それがアトピー性皮膚炎を理由に早々に断念することになり、それからコックを経験した後にバリスタという職業に出会った。体調の都合でパティシエもコックも諦め、お先真っ暗の中に見つけた一筋の光、バリスタ。
バリスタの修行を2003年にスタートさせ、10年後の2013年に開業することを決めた。なぜ10年か、それはまた別の機会でお話ししようと思うけど、長い人生そんなに急いでも仕方ないと思っていたし、個人では作れないような立派なお店を作りたかった。十分な借入れをするために頭金をしっかりつくる必要があったため、10年という時間が必要だった。

渋谷区のフィレンツェ

私は血筋のせいか根っからの「客好き」で、生涯お客さまの前で仕事をしたいと考えていた。そのためにも雇われではなく、自分でお店をやる必要があった。そして何より、開業をしたいちばんの理由は『自分の給料は自分でつくる』『休みたい時に休む』この二つが大きかった。極端な話し、月に休みが一日しかなくても、休みたい時に休める一日は週休二日よりずっと価値がある。給料もシンプルに頑張ったら頑張った分だけ欲しいし、サボったらそれ相応の給料のほうがやり甲斐を感じられる。
あくまで私のこととして、もしも開業=夢であったら開業した時点で夢が叶ってしまい、その先の目標設定に苦労していたと思う。だから私は開業=生活手段と決めて、開業までの数十年は死ぬほど働いて、頭から湯気が出るまで勉強をした。その十年で犠牲にしてきた様々なものを今少しづつ回収をしているところだ。

台東区のトリノ

開業は自分のためにしたけど、お店は私のものではなくお客さまのものと考えている。「世のため人のため」とまではいかなくても、街に関わる人や遊びに来てくれた人の気持ちがちょっとだけ上がる仕事が出来たらいいなぁと思う。

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