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斜凛の小説(短編・中編集)

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短編・中編集をまとめています。
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2020年4月の記事一覧

「走馬灯」

「走馬灯」


 わたしはいんちき女です。友だちからはおバカさんで、愛嬌を含んだ明るい人だと思われているようです(三者面談で先生にも言われたんだから間違いない)。しかし実際のわたしは、親身になりながらも、周りを見下しているのです。だってクラスの人々を、自分のげびた本性の、隠れ蓑の道具、程にしか認識していません。
 率直にわたしは周りを馬鹿にしているのです。おかしいやら、馬鹿らしいやら、一言一行くだらなく思うの

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「空漠」

 ごめんなさい。どうか、聞いて欲しいのです。それはわたしの空漠な思いです。何をしても影のようにつきまとってくる虚無感が、どうにも居心地良いのです。これは一種の病だと自覚しています。大袈裟でしょうが、このままだと生きて新学期を迎える気すらしません。
 そう思い続けても、輝かしい春の訪れは、来ました。時の流れの強引さは残酷ですね。さしずめ、今頬を流れ行く涙の意味も忘れて、死というものもやはり不確定なま

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