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斜凛の小説(短編・中編集)

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短編・中編集をまとめています。
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「笑声」

「笑声」

 ……イヤホンの外から絶えず漏れてくる鈍く騒がしい笑声《しょうせい》。
 私は机でうつ伏せになりながら、その薄暗さの中でひとり目を開け、不安だ。
 彼女たちのお喋りは私とは関係ない、関係ない事は承知の上で、高笑いされてるみたい。
いい加減、私は声を大にして言いたい。
「皆さん! 私はあなたたちの淡いもない言葉一つ一つがチクチクして仕方ないの! 自分でも病気なほど神経質なんです! おとなしい人だと思

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「走馬灯」

「走馬灯」


 わたしはいんちき女です。友だちからはおバカさんで、愛嬌を含んだ明るい人だと思われているようです(三者面談で先生にも言われたんだから間違いない)。しかし実際のわたしは、親身になりながらも、周りを見下しているのです。だってクラスの人々を、自分のげびた本性の、隠れ蓑の道具、程にしか認識していません。
 率直にわたしは周りを馬鹿にしているのです。おかしいやら、馬鹿らしいやら、一言一行くだらなく思うの

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「空漠」

 ごめんなさい。どうか、聞いて欲しいのです。それはわたしの空漠な思いです。何をしても影のようにつきまとってくる虚無感が、どうにも居心地良いのです。これは一種の病だと自覚しています。大袈裟でしょうが、このままだと生きて新学期を迎える気すらしません。
 そう思い続けても、輝かしい春の訪れは、来ました。時の流れの強引さは残酷ですね。さしずめ、今頬を流れ行く涙の意味も忘れて、死というものもやはり不確定なま

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