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5年後に退職する新卒サラリーマン【第三章】 (11)

第一章 <激動の就活編> は、こちらから
第二章 <戸惑いの新入社員研修編> は、こちらから


翌日、安斎は、「社長室」に呼び出された。

デジャヴ…… 
かと思いきや、そうではない。

二度目の呼び出しなのだから。


当然だ。私は昨日、大阪から招かれた重鎮、「伝説の営業パーソン」と恐れられるお局トレーナーによる営業強化研修の「受講者アンケート」、その「研修満足度」の欄に「★1」を付けたのだから。

新卒1年目で、広島に配属されたばかりの新人の、この私が。



「参加者みんな死んだ目をして、嫌々、研修を受けている印象を受けた。

これでは、あまり建設的な効果につながらないのではないか。

講師から一方的に与えられるカリキュラムではなく、どのような内容の研修にすればより多くのことを全員が学べそうか、参加者で意見を出し合って、新たな研修体制を作っていってはどうかと思う」


なぜ、あんなことを書いてしまったのか。

匿名アンケートだったから油断した。


ここは、日系大手老舗企業。いわゆるJTC。

そう、ジェイ・ティ・シー。


ジェット・エクスタシーではない。
ジェイ・ティ・シーである。


「匿名」と言いつつ、実際には、誰が何を書いたのかはガチガチに監視されていて、少しでも変なことを書けば、後で呼び出される

そんなことは、想像がついたはずなのに。



「安斎君。君のことは、寺島さんから聞きました……!!

あのね、君……!! 君、君ぃぃぃぃぃ!!

寺島さんはねぇ! 偉いんだよ! 西日本の本部から招聘した特別な研修講師なんだ!! わざわざ私たち広島の営業チームの為に時間を割いてくださっているんだ!!

それなのに、君は…!!」


支店長より偉い、株式会社ラブアンドパンティーズ販売中四国・代表取締役である北村社長が、私を鋭く、鋭く、刃物のような目で睨みつけた。


やはり、デジャヴ……
2日前とほとんど同じ会話。

しかし、その声の調子は前回とは違い、もはや落ち着きを失っており、一度ならず二度までも「大阪の重鎮」の逆鱗に触れた、このクソ生意気な新人をどうしてくれようかという「パンパンに膨れ上がった怒り」が、表情に、あからさまにこみ上げていた。

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