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映画『永遠の門』とMET企画展

一昨日の夜、『永遠の門』という映画を10分ほど残して寝てしまっていたので残りを視聴。公開当時はスルーしていたけど、逆にしておいてよかったと思う。今見たからこそ、この作品の空気感、不安定なカメラワークや一人称視点、詩的な旋律や環境音、そして一つ一つのセリフが身に染みたのだろう。個人的に今年鑑賞した映画の中で一、二を争う。特に芸術(古典、現代問わず)が好きな方には是非見てほしいです。

平らな風景を前にすると永遠しか見えない
僕にしか見えないのか
存在には理由がある

僕は悲しみに喜びを見出す
悲しみは笑いにまさる

音楽や風景の描写も相まって、これらのセリフには胸を打たれた。なんならセリフの無い、ゴッホが自然の中にいるいくつかのシーンにも感動した。音楽の効果はすごいなと改めて認識する。セリフがなくとも登場人物の心境であり、もっと言えば魂が直接的に突き刺さる。

いつか見た、現代アートの祭典か何かで上映されていた映像を思い出した。自然と人との関わり合い。共生よりも上の次元。風土的なもの。主客一体とでもいうべきか。そんなことを感じる音楽だった。

映画『At Eternity's Gate』より

狂気は最高の芸術だ

終盤、ゴッホが発した言葉だ。宗教改革以降、社会的に矯正されるべきものとして扱われたこの狂気。それ以前までは理性のその先の次元とされていたそうだ。フーコーは社会の中でしか狂気は生まれないと言った。作中でのゴッホの行動を照らし合わせながら、フーコーの著作を読んでみるのもいいかなと感じた。

ゴッホ『星月夜』MoMA The Museum of Modern Art より

ゴッホに興味を持ったきっかけは映画『ミッドナイト・イン・パリ』のジャケットだ。まるでその作品の主人公が、『星月夜』の世界に迷い込んでしまったかのような。なにかゴッホの精神世界を垣間見たような気がした。俗っぽいと勝手に敬遠していたゴッホの作品に、興味を持ち始めたのはここからだったはず。映画自体も大好きな作品なので是非。


次の日。日付で言ったら12/10。大阪市立博物館で開催されていた『メトロポリタン美術館展』に足を運んだ。国外美術館の企画展に足を運ぶのは『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』以来。やはり大規模な企画展はいいなと改めて実感した。知っている画家の作品は勿論、教科書で見ていたような作品まで生で見れるのだから。

会場の入り口

知っている画家の作品を観るときには、生前の彼らが実際に描いたモノを、現代に生きる私が目にしているというところに、なにか感慨深さを覚える。だからこそ美術史などを好き好んで勉強しているともいえるが。私にとってその一環が常設展へ足を運ぶことであり、来る企画展に備えて目を磨いているといったところか。何か不純な意図を感じるのは気のせいとしておこう。シンプルに芸術作品を観ることは好きです。

毎回一枚だけ買うと決めているポストカード。今回の一枚。

因みにポストカードはゴッホの『花咲く果樹園』を購入。前日にあんな映画を観ちゃったらしょうがないでしょ。ターナーに手が伸びかけたが、前回買ったゆえ我慢。彼の絵が本当に好きだ。個人的にはジェロームの『ピュグマリオンとガラテア』も印象に残っています。

ジャン=レオン・ジェローム『ピュグマリオンとガラテア』The Metropolitan Museum of Art より

来館に備えて本家METのガイドを区民図書館で借りてはいたものの、取り上げられていたもので展示されていたのは一点のみ。一点来てくれるだけでもありがたいのかな。そこのところはまだ私にはわかりません。

借りたガイド本
アントワーヌ・ヴァトー『メズタン』メトロポリタン美術館― アートを楽しむ最適ガイド より

メトロポリタン美術館展の大阪会場は来年1/16まで開催されているので是非足を運んでみてください。その前日にでも『永遠の門 ゴッホの見た未来』、鑑賞していただけると幸いです。


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